脂肪とは

脂肪はタンパク質・炭水化物と並ぶ人間のエネルギー源。三大栄養素とも呼ばれ、大きく分けて①中性脂肪 ②コレステロール ③リン脂質 ④遊離脂肪酸の4種類に分けられます。

  • ①中性脂肪(トリグリセライド)は貯蔵用のエネルギーとして貯蓄される。皮下脂肪のほとんどがトリグリセライドです。
  • ②コレステロールは細胞膜の成分の一つで、ステロイドホルモンの原料にもなる。
  • ③リン脂質は細胞膜の構成成分。
  • ④遊離脂肪酸はすぐに利用可能な状態のエネルギーで不足の場合に無くてはならない。

ヒトの構成成分のどれくらいが脂質?

標準的な体型の人で体重の18~25%が脂質。そして人間の脳は水分以外の構成物では脂質が60%を占めます。

中性脂肪とは

脂質は豚の脂でも、さんまの油でも植物油でも小さな脂肪の粒がたくさん集まって作られていて、その小さな脂肪の粒が中性脂肪(トリグリセライド)という分子で、脂肪を構成する基本的なユニットとなります。食品からとる脂質も、体内の脂質も90%が中性脂肪(トリグリセライド)です。

脂肪酸とは

脂肪を作る主体で、基本的なブロックのようなもの。例えば、中性脂肪(トリグリセライド)は脂肪酸とグリセロールから成っています。脂肪酸の種類によって脂肪の性質や栄養的価値が大きく左右されます。食べ物からとった脂質(脂肪)の脂肪酸はゴールである細胞膜に向かって転換されずにそのままいくことになり、リノール酸の多い食事をすると細胞膜はリノール酸だらけになるし、飽和脂肪酸が多い食事をとると細胞膜は飽和脂肪酸だらけになるので、バランスよく食べることが健康に直結することになります。

脂肪の分解吸収について

食べ物から摂取した脂肪は消化酵素や胃酸と混ざり、十二指腸に達し、胆汁とリパーゼによって中性脂肪と脂肪酸に小腸で消化・吸収されます。小腸から血中に10%、リンパ管に90%入った後、肝臓に運ばれ、肝臓でリポタンパクとなり全身に運ばれます。脂肪の消化はグリセロールと脂肪酸を切り離したところで終了するので、脂肪酸がそれ以上細かく切り離されることはありません。霜降りステーキを食べれば飽和脂肪酸が、サフラワー油のドレッシングを食べればリノール酸が、青魚からはEPAがそのままの形で体内に吸収されます。

飽和脂肪酸について

炭素は前後左右に4本の手を持ち、全部ふさがらないと安定しない性質を持つので、前後の炭素と手をつないだ他に左右の手の為に2つの水素が必要となります。炭素の4本の手がふさがった形の脂肪酸を飽和脂肪酸といいます。飽和脂肪酸は常温で個体で、融点が高い性質を持つので、体温が36~37度の人間の体の中に入ると凝固しやすく、血流が悪くなり、動脈硬化を起こしたり、酸素運搬や栄養運搬が悪くなるということが起こります。しかし飽和しているため酸化されにくいという利点もあるため、揚げ物には最適な油と言えます。飽和脂肪酸は悪者扱いされますが、がっちりした細胞膜形成に欠かせない脂肪酸です。余剰に摂取する事が問題なのです。

不飽和脂肪酸について

必要な水素が一つしかない脂肪酸。4本の手を全てつながないと安定しない炭素は1本余ってしまった手を2本まとめて隣の炭素と結合することとなり、これを二重結合といいます。二重結合した炭素との結び付きはかなり強くそれだけ水素との結びつきは弱くなり、酸化されやすい性質をもつということになります。

多価不飽和脂肪酸について

二重結合が何ヵ所以上あるものを「多価不飽和脂肪酸」といいます。多価不飽和脂肪酸は二重結合がたくさんあるので酸化されやすい性質を持ち、n-6系列(オメガ6)やn-3系列(オメガ3)がここに分類され、体内で合成できない「必須脂肪酸」です。

一価不飽和脂肪酸について

二重結合が一つしかない脂肪酸。その代表がオレイン酸で、二重結合の位置が脂肪酸のアミノ基から9番目に存在する。オメガ9とかn-9系列と呼ばれる。多価不飽和脂肪酸と比較して酸化されにくいため、長期保存に耐えます。オレイン酸の多い油はオリーブ油、なたね油、キャノーラ油、グレープシード油などですが、オリーブオイルは他の植物油と違い、「実」から油を抽出するため、非常に酸化されやすい事がわかり、使用には注意が必要であることがわかってきました。

必須脂肪酸とは

ヒトが体内で他の脂肪酸から合成できないために、食べ物からなど何らかの方法で摂取する必要がある脂肪酸。食物からの供給源は植物オイル・種子類・ナッツ・魚からとなる。また、オメガ6からオメガ3への転換も出来ないので、それぞれの脂肪酸をバランスよく摂取することが重要となります。

理想的な脂肪酸の比率は?

厚生省は1999年に「第6次改定日本人の栄養所要量」で、次の様に示しています。脂肪酸摂取比率を 飽和脂肪酸:一価飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸=3:4:3
(理想的には1:1.5:1?)
多価不飽和脂肪酸の比率を n-6:n-3=4:1としていましたが、
2005年にはn-6:n-3=2:1に修正しました。(理想的なバランスは1:1か1:2?)現代は15:1でリノール酸(n-6)過剰となっている。

大切なのはオメガ3とオメガ6のバランス

身体に重要な脂肪酸の多くは体内で作られますが、オメガ3とオメガ6は体内で作られず、相互作用することもないので「必須脂肪酸」となります。この2系列の脂肪酸は細胞膜の原料となり、細胞の調節機能をし、その働きは相反するので、バランスが保たれることが重要です。オメガ6系列のリノール酸は普通の食生活をしていると、過剰に摂取している場合がほとんどなので、オメガ3系列のα-リノレン酸を意識的に摂取する必要があります。
オメガ6もオメガ3それぞれに利点があり、収縮と拡張という相反作用を持つので、バランスを保つことで健康は促進されますが、摂取のバランスが崩れることにより、あらゆる病気が出現します。オメガ6の脂肪酸を過剰に摂取すると炎症反応の抑制がきかなくなり体の組織がダメージを受けやすくなります。生活習慣病と呼ばれる心疾患、ガン、糖尿病などは全て炎症によるダメージが深くかかわっている病気で、肉料理と高いリノール酸の油を摂り続けてきた現代人にこうした炎症の生活習慣病が蔓延するのは当然といえます。意識してオメガ3の摂取量を増やせば細胞膜のほとんどは2週間から1ヶ月でよい細胞膜にチェンジすると考えられます。

悪玉コレステロールとは

コレステロールは細胞膜の原料であり、神経伝達に関与し、副腎皮質ホルモンや性ホルモンを合成したり、胆汁酸の原料になったりするなど人間の身体を維持するうえで必要不可欠です。悪玉コレステロールと言われるLDLが多いと問題はありますが、現在ではLDLが悪いのではなく『酸化LDL』が悪いと判明していて。LDLは実は悪玉ではなく、悪玉となるのは活性酸素の攻撃を受けて酸化された「酸化コレステロール」です。LDLを酸化させる条件として、高GI食、高タンパク質、腸内腐敗、抗酸化食品(生野菜、フルーツ)不足、過食、高脂肪、悪しき脂肪過多にあると言われています。

α-リノレン酸(n-3系列)

n-3系列(オメガ3)で必須脂肪酸。炭素の二重結合の位置が脂肪酸のアミノ基から3番目に存在する油。体内に摂り入れるとEPA・DHAへと代謝されるためその機能も期待できます。α-リノレン酸はリノール酸に拮抗する作用をもつのでアトピー、喘息、生理不順、生理痛、鼻炎、ガン、神経疾患、リウマチ性関節炎、肝障害、アルコール依存症、抗うつ神経症状など多くの症状の改善に効果が期待できます。α-リノレン酸が多い油として亜麻仁油(フラックス油)・しそ油・えごま油がありますが、非常に酸化されやすいため、遮光瓶に入れ、冷蔵庫で保存し、生で摂取しなければいけません。加熱調理は厳禁です。フラックス油は始めからかなり酸化されたメーカーのものもあるらしいのでコールドプレス製法の信用のおけるメーカーのものを使う必要があります。α-リノレン酸の効用として①視力を良く保つ。(特に目にはDHAが多いため絶対に必要)②がん、特に乳がん③脳の疾患④心臓病⑤高血圧⑥糖尿病⑦認知症などに有効な油といえます。

EPA(エイコサペンタエン酸)(n-3系列脂肪酸)

α-リノレン酸を摂るとEPAに代謝されます。主な供給源は青魚・鮭・ウナギ・真鯛・マグロなどとなりますが、養殖魚は餌の関係でリノール酸を含むことになるので、α-リノレン酸を摂取するには天然魚に限られます。しかしタンパク質を過剰に摂取するリスクを考えると、サプリメントからの補給が効率的です。EPAの作用として血小板凝集抑制・血栓溶解・血管拡張・血液内の中性脂肪を減らす、抗がん効果の他、アラキドン酸の作用を抑制するということも知られています。

DHA(ドコサヘキサエン酸)(n-3系列脂肪酸)

α-リノレン酸を摂るとEPAを経てDHAとなります。EPAと同様、魚の脂肪に多く、EPAと同様の作用の他、血圧を下げる、脳神経細胞の機能に関わる、炎症を抑制するなどの作用があります。

一日にどれくらいDHA・EPAを摂ればよいのか

「心臓突然死を防ぐためには一日800㎎前後のEPAとDHAを摂るのが有効」と言われえていますが、これは最悪の事態を防ぐのに最低限これだけは摂っておいたほうがよいということで、心筋梗塞の発作を防ぐために細胞が円滑に機能するのに必要なオメガ3の量はEPAとDHAの合計で1日2000㎎前後必要といわれています。これは例えば魚から1700mgのオメガ3脂肪酸を摂るとするとマグロのトロなら刺身3切だが、ヒラメの刺身なら50切必要で、もちろん生食に限ります。
また、脂質生化学の権威ウィリアムズ・ラン博士は1日のEPAの必要用は3.6~8g/日ではないかと述べられています。オメガ6を減らした上で、EPAをサプリメントから摂取する適正量は4~6g/日ではないかと考えられます。

リノール酸(n-6系列)

n-6系の代表的な多価不飽和脂肪酸。食品から摂取する必要がある必須脂肪酸で、コレステロールや血圧を下げると言われ、注目を集めましたが、過剰摂取で弊害が起こることが判り、n-3とのバランスによって長所が発揮されることが判明しました。体内ではリノール酸→ジホモ-γリノレン酸→アラキドン酸を合成し、また、α-リノレン酸のEPA・DHAへの変換を阻止することもわかっていて、過剰摂取でガンの発症、アレルギー症の発症、心疾患の発症、老化促進、免疫力抑制で病気に対する抵抗力を弱めることが判っています。必要量は60㎏の人の場合1~2g/日で、普通の食生活なら十分に摂っている量です。現代人の食生活では10倍以上のリノール酸を摂っていると考えられ、過剰摂取となっています。

リノール酸のとりすぎが疾患を起こす理由

リノール酸を摂ると体内でアラキドン酸に変化します。アラキドン酸からはいろいろなホルモン様物質のエイコサイノドが合成され、これから炎症メディエーターという炎症を起こす物質が出現します。これは血のめぐりが大変悪くなり(炎症、血小板凝集、血管収縮、血液粘度上昇、虚血)その結果あらゆる生活習慣病の要因になります。ガン、アレルギー、関節炎、乾燥肌、認知症、自己免疫疾患、梗塞、リウマチ心臓病などあらゆる疾患につながっていくといわれています。

リノール酸神話の崩壊

コレステロールや血圧を下げると言えわれ注目を集めていましたが1980年代に過剰摂取で弊害が起こることが判明しました。1週間動物性脂肪とリノール酸を摂らせた場合は動物性脂肪を摂った群はリノール酸を摂った群よりコレステロールは2倍増加。ところが長期(1か月以上)に摂らせ続けると「動物性脂肪」に対し、血中コレステロールは少なくならず、むしろリノール酸過剰とα-リノレン酸不足から欧米型のガン、冠動脈疾患、動脈硬化疾患、アレルギー性疾患が起こりやすくなることがわかりました。

トランス脂肪酸

融点の低い不飽和脂肪酸を多く含む油脂に水素を付加することにより飽和脂肪酸に変換し、常温で固体にする過程での副産物としてトランス脂肪酸が生成されます。トランス脂肪酸は自然界に存在するのとは違う形で、この違いは体内での機能や活動に影響を与え、細胞膜に入り込み、働きを狂わせ、体内でビタミンなどの栄養物質を食い荒らし、特に循環器系においてマイナスの影響を与える悪玉人工脂肪酸といわれています。こうしたトランス脂肪酸の害について、日本ではほとんど認知されておらず、日本人は「欧米と食生活の違いがあり、国際的な目標値である1%を下回っている」とし、トランス脂肪酸含有量の表示義務もないため、野放し状態ですが、諸外国では表示を義務付けるなどの規制が進んでいます。

リノール酸やトランス脂肪酸が存在する食品

マーガリン・コーヒーフレッシュ・インスタントラーメン・マヨネーズ・ドレッシング・クッキー・インスタントカレー・菓子パン・ドーナツ・アイスクリーム・チョコレート・洋菓子・揚げ物・一部の冷凍食品・市販の調理がなされたもの・お惣菜・スナック菓子の大半・ファストフード・ショートニングの多く入ったパンは極めてトランス脂肪酸が多い。