色んな意味でピンクのビル〜ミルキィホイップ〜
大阪の歓楽街にそびえるピンクの雑居ビル。
いかがわしい雰囲気ただようこの建物は、淫魔が巣食うブレイズゲートである。
今日もダークネスを倒すため、健全なる青少年たる武蔵坂学園の灼滅者がやってきた。
今日のドアは、白い合成皮革の下になにやらフワフワした詰め物が入っていた。まるで革のソファのようなひし形パターン柄だ。
なんだか愛らしいが、ともかく君たちはドアを開ける。
明るい真っ白な店内は、パステルカラーのマカロンやキャンディなどのお菓子モチーフに溢れていた。
ピンクのビルにしては可愛い店内に、君たちは少々戸惑ってしまう。
だが、やはり淫魔カオリがいる。ここは紛れも無くブレイズゲートだ。
カオリは、フワフワのビキニに身を包み、ピュアなイメージの格好である。でも淫魔だ。
彼女の周りには、とってもふわふわの子羊人形が五体ねそべっている。
「あらぁ? お客さんだわぁ。みんなぁ、起きて〜ん」
カオリは笑いながら君たちへ向き直った。
子羊たちも手にホイップの絞り袋を持って、立ち上がる。
しかしそのホイップの構え方は、どう見てもサブマシンガン。
「ぶっかけちゃうぞっ」
びゅるるるっ!
絞り袋から君たちへ、ホイップが襲い掛かる!!
■リプレイ
●びゅるるるっ
愛らしいこひつじさんの人形が構えた絞り袋から、白いホイップが襲いかかってきたのを見るなり、フェリス・ティンカーベル(万紫千紅・d00189)は、スチャッと何やら円盤状のものを二枚取り出した。
「こんなこともあろうかと、だよ!」
取り出しましたるは、スポンジケーキである。きちんとスライスしたデコレーションケーキ用のスポンジケーキだ。
ケーキの上に盛られていく固く泡立てた白い甘いクリームは、ピンッと元気に角が立っている。
生クリームは固く泡立てる派の山城・大護(変改の鬼憑き・d02852)は、満足気にその様子を見る。
「ん。なかなか良い固さだね」
と彼が取り出したのはパック詰めの真っ赤な苺やら、デコレーション用の板チョコとチョコペンだ。ついでにまたスポンジケーキもアイテムポケットから出てきた。
敵の生クリームでどこの誰のお誕生日会をするつもりなのだろうか。
「……クリーム、勿体無いから……あとで大護とケーキを作るのよ」
と、両月・葵絲(黒紅のファラーシャ・d02549)。しかし彼女、愛らしい部屋と愛らしいこひつじさん、そして美人のカオリに、乙女心を震わせている。カオリが淫魔だとか、クリームが人にぶっかかるとどうだとか、そーゆー不埒な考えは、この黒服のふわふわピンク紙の少女にはありません。眩しい。
「そのまま美味しくめしあがろうかなーと思ったけど、やっぱりホイップクリームならケーキですよね!」
と、山城・竹緒(デイドリームワンダー・d00763)までがスポンジケーキを出す。
もはやウェディングケーキが作れそうな勢いで、スポンジケーキがご登場である。
●ぱしゃぱしゃ
「……むむぅっ。なんかムカツク☆ やっつけちゃえっ」
とのカオリの指示で、次にこひつじさんが絞り出したホイップは、
「ふわあっ、レフ板にかかったらどうするつもりっすか!」
びしゃっとさらさらであった。『流れ跡がすぐ消えるくらい』とレシピ本に書いてありそうな固さだ。いわゆる六分立てである。
フィルムの最終確認をしていた采華・雛罌粟(モノクロム・d03800)は、立てかけていたレフ板に、クリームがひっかかりそうになって、慌てて板を掴んで飛び退く。
「なかおちさん、持っててくださいっす!」
そのまま雛罌粟は、雲母・夢美(夢幻の錬金術師・d00062)のビハインドに、レフ板をもたせた。
クリームだらけになる女子をファインダーに収めるためなら、他人のサーヴァントすらこき使う。雛罌粟の写真への思いは相当なものである。
「撮影班も完備した俺達に死角は無い! しっかり頼んだぞ!」
ドヤ顔で叫びながら、妖の槍をムッキムキの腕でぶん回すジャック・アルバートン(ヒューマノイドヘビータンク・d00663)は、どう見ても高校三年生には見えない。
「むふぅ、野和泉が白くて甘いホイップまみれとは。滾る!!」
ジャックがキラキラした目を向ける先には、白髮赤目の同級生こと野和泉・不律(ホイップクリーマー・d12235)がいた。
「なぁにジャックー、目つき怪しいわよー?」
とか言うが、装備しているのは男子スクール水着。
男子スクール水着。
男子。つまり上は……。だめだ、これ以上のことを書くと、公序良俗違反だ。
まぁ、残念ながら、そのまんまだとおそらくジャックが失血死するだろうので、聖骸布をまとっている。
「わぁいクリームー不律クリーム大好きー♪」
とか言っている不律を、ジャックはマジ天使と思いながらうっとり見つつ、見つつも槍でこひつじさんをぶっ刺す。
「野和泉にかかったホイップは、もったいないから、この野和泉専属メイドの俺が責任をもって処理するぞ!」
そう、筋肉ムッキムキのジャック、本日の防具はメイド服である。ちなみにメイドカフェ仕様の露出高めなやつ。
「雛罌粟、しっかり写真ばっちり頼む!」
「……女子はばっちり撮るっすよ」
ファインダーにかすりもしないようにジャックに背を向け、雛罌粟はカメラを構えていた。フラッシュ不要。なぜならバトルオーラで明るいから!
撮影するは、
「きゃあっ、つめたいです!」
と胸の谷間にもったり七分立てのクリームを押し込まれている夢美だ。
「葵絲さんは守ります……絶対、絶対ぃ……いやぁんっ。あ、でも、何時も素肌晒しっぱなしな分お手入れを欠かさない我が乳力を発揮する時がきたようですね! ひゃあんっ」
と必死にディフェンダーとして仲間をかばいつつ、甘ったるい黄色い声をあげているのを、雛罌粟は。
「あ、ちょっとポーズお願いしまーす、目線はあちらに」
パシャパシャ撮っていた。
「ズーム18-149mm。画素数2416万。Wi-fi内蔵で撮った写真は直ぐにシェア出来るよ!」
「素晴らしい! ぜひ野和泉を!」
「クリームかかったらっすねー」
ジャックの大興奮な声を軽く流す雛罌粟、そして当の天使は。
「個人的にはーメディックでもしようかと思ってー…………ジャック、血の涙流すことないのよー」
「何かの間違いで野和泉がホイップしなかったら悲しみに包まれて、俺は闇堕ち……」
「大丈夫よーディフェンダーやるからねぇ」
目の幅の血の涙を流す同級生に、さすがの野和泉もポジション変更を宣言せざるを得ない。
「やっぱり、ふぁんしーめるへんな展開は無理だったね……」
フェリスはスポンジが真っ白になるほどクリームをもらい、ついでに自分の髪も七分立てクリームでどろどろにしつつ、ため息を吐いた。
「ひつじさんかわいいのにー……」
●ぺろぺろぺたぺた
ふしぎな力でどれだけ絞ってもホイップが尽きない。これが不思議なことも当然のようにありえるブレイズゲートという場所なのか。
「ちょっとぉ、これもう『クリーミーな泡でリッチなバスタイム』状態じゃないー」
野和泉は真っ白すぎる己を見下ろして、愕然とする。
そこまで痛くはない攻撃だが、もはや装備が男子スクール水着なのか女子スクール水着なのか判別できないレベルで真っ白だ。
「野和泉~ぃい!」
大興奮のジャックは、もはやたぎってたぎってどうしようもないらしく、誰がどう見ても顔に『天使のクリームぺろぺろ!!!!!!』と書きなぐってある状態である。
「たいへん! このままじゃ、ジャックくんが別の方向に堕ちちゃうよ! っていうか催眠されなくても襲ってきそうっ」
竹緒は、せっせとヘラで野和泉のクリームをすくっては、スポンジケーキへと移している。ケーキはもはやクリームだらけで、むしろクリームによる前衛芸術状態。
これが対策だというならば、ちょっとズレているとしか言えない。実際ズレている。
「ど、どうしても世間様に見せられない状況になったら、まぐろーんアタックでボグシャーしようと思ったけど、ジャックくん相手じゃ勝ち目がなさそう……」
「クリーム……服についたら、洗濯が大変、ね」
影を巧みに操り、こひつじさんをがんじがらめにしながら、葵絲は呟く。
彼女の後ろでは、雛罌粟がバッシャンバッシャン夢美を撮影していた。
「いいよー! はい、いいっすねー、そこで目線! ハイ! 素晴らしいっすよー」
ここはグラビア撮影スタジオではないのだが。
夢美ももはやノリノリで、食い気でクリームを舐めとるフェリスだけでなく、カオリにまでぺろぺろされているというのに笑顔で、きゃぁんなどと叫んでいる。
むしろグラビアではなく、イメージビデオ撮影会状態である。
なお、そんな撮影会の隣では大護が霊犬しめさばくんと、倒した羊から強奪した九分立てホイップで、黙々と真剣な表情で己のスポンジケーキを飾っていた。
ここはパティシエ選手権会場ではないのだが。
もはや角を小さく切った小袋にクリームを詰め替え、細かい装飾まで施しているレベル。
なお、その合間に風の刃や影で戦ったり、癒しの光を送ったりと、スレイヤーとしての仕事もしているので大目に見てやって欲しい。
「あっ、すごい。負けてられないっ」
竹緒が大護の大作を見て、より一層クリーム盛り上げに励む。
もはやロココ時代の貴婦人もかくやという高さ。今どきで言えばペガサス昇天盛り。
●ずるっぼごぉっ
なお、こんなことしつつも、一応は戦っていて、こひつじさんは次々倒れている。
倒れる度に、大護が、
「しめさば、とってこーい!」
とホイップ袋を己のものにしているのである。
「ん。これは……! すこしクリームゆるすぎますね」
強奪物なのに勝手なことを言うわがままパティシエ。
「いいな……。わたしも、やる……」
とうとう羨ましくなったのか、葵絲が中衛だが後衛へと歩き出してしまい……ずるっ。
落ちていた生クリームに滑って、べしゃんと床に転んだ。
「ふあ……っ……クリーム、ついちゃった……」
「あーっ、絶対にクリームつけさせないって思ってたのにぃっ。きゃふうっ。あ、でもぉ、攻撃じゃないからいいか、あ、あんっ」
カオリに集中的に絡まれ、夢美はヒンヒン鳴きつつ己を納得させている。
「なぜ野和泉じゃないー!」
ジャックが理不尽な怒りを閃光の拳にこめ、カオリに襲いかかった。
「なぜっ! 天使が! クリームまみれで扇情的ではない!!」
「ぐげえっ」
ジャックの渾身の怒りをぶち当てられ、カオリ、一巻の終わり。
「む……しかし、野和泉がクリームまみれは正義だが、淫魔などという俺ではない人間に絡まれるのは、正義ではないな……。むしろあれでよかったような気も」
ぶつぶつ。
「みんなー、帰るわよー」
ジャックがぶつぶつ言っている間に、繰爛堂部長の野和泉は部員を呼び集めてさっさと撤収する。
「わわわ、落ちる、おちる!」
とケーキというよりは生クリームの山を慎重に運び出す竹緒や、
「かわいいの、できた……」
と繊細なるケーキを大護に運んでもらって、クールな中にも子供らしい喜びを秘めている葵絲に、じゃれつくしめさば。
「クリームおいしー」
と、夢美の首まで舐めているフェリスをくっつけ、夢美が退室するのを、レフ板を持った彼女のサーヴァントや、カメラから顔を離さない雛罌粟が追う。
「はっ、こんなことで苦悩している場合ではないー! ホイップまみれという羨まけしからん状態の野和泉を鑑賞して愛でなければ!!」
とジャックがようやく向き直ったが、周囲には、フェリスが忘れていったスポンジケーキ以外、なーんにもなかった。
| 重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし | ||
| 種類: 公開:2013年11月28日 難度:普通 参加:8人 結果:成功! | ||
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