ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 【実況末松】第五回カラ松のここ空いてますよ争奪戦【判定母】2015年11月4日 22:38 飛び石連休の前日の松野家。毎日が休日の松野家兄弟には大よそ関係のない情報ではあるが、世の中的には重要な情報だ。丁度紅葉狩りのシーズンも近づき、スーパーではさあさあ買ってくださいよとばかりにアルコールがたたき売りされている。そこに酒があれば当たり前に飲む6つ子からすればありがたやありがたやな大セールだ(どうやらスポンサーになっている球団が勝ったらしい)。 戦利品を持ち帰り、午後9時に乾杯。1時間ほど経ったあたりでロング缶を1/3程残して、カラ松が無言で畳に沈んだ。 完全に酔いがまわり、目の端は化粧でもしたように赤い。床にねっ転がっても格好いいと思っているのか、眼光鋭く、不敵に笑う。「兄弟たち(ブラザーズ)よ・・・」 「あ、やべ」。と6つ子の誰かが呟いたがもう遅い。 カラ松はちゃぶ台の脇にごろんと寝転がると、片腕を突き出したポーズのままキメ顔でこう言い放った。「カラ松のここ・・・空いてますよ」[chapter:第五回カラ松のここ空いてますよ争奪戦]「さー、○月×日。午後10時5分!松野家居間で今、高らかに次男カラ松兄さんから開戦が告げられ、始まりました『第五回カラ松のここ空いてますよ争奪戦』!実況は6つ子のアイドル・松野トド松と、解説は『下ネタこそ大きな声ではっきりと!』でおなじみの松野家五男、松野十四松でお送りしますー!!」「よろしくお願いしまーす!」「いやちょっと待て何を始めようとしてるんだお前ら!?」 チョロ松の突っ込みも虚しい。すでにちゃぶ台を部屋の端に寄せて「実況」、「解説」という三角コーナーまで用意した末っ子共は意気揚々とした感じで話を進める。「初見のチョロ松兄さんに説明するよ!『カラ松のここ空いてますよ争奪戦』とは酒に酔って、某芸人の「ここ空いてますよ」ネタを本気で格好いいと思っちゃってる残念な据え膳状態のカラ松兄さんを、カラ松兄さんの事が大好きなんだけど普段の虐げぶりとか、他兄弟の手前とか、世間体とか気にして速攻お持ち帰りしたくてもできない兄弟がガチンコの争いを繰り広げる酒池肉林のバトルだよ!」「ババーン!」「何その腐女子しか喜ばない不毛な争い!?そんなこと今まで4回もやってたの!?いろいろ知りたくない事知って吐きそうなんですけど!!」 「チョロ松兄さん参加初めてだもんねー」、「ビギナーズラック期待してますぜ!」というまるで嬉しくない末っ子たちのエールが飛ぶ。勘弁してほしい。許されるものなら何も知らずにキメ顔で添い寝にやってくる兄弟を待っているカラ松の顔を蹴飛ばしたいくらいだった。そもそもの元凶はお前だ。 チョロ松はヒートアップした場の空気を押さえようと、わざとらしく馬鹿にする口調で弟たちをなだることを試みた。「いやいやいやいや。十四松、トド松。僕を含め、お前たちの兄がそんな馬鹿な内容でガチバルトになるわけ・・・。・・・。・・・」 皆まで言えなかった。 チョロ松は気付いてしまったのだ。(なんだ・・・) 背筋に冷や汗が流れていく。 首筋に鳥肌が立つ。(な、何だこの殺意に似た強い気配は・・・!?) 恐る恐る振り返ると、おそ松も一松も、カラ松が「さあ、誰が来るんだ?ん?」というすがすがしい程にイタイ発言をガン無視して酒を飲んでいる。 一見すれば、いつも通りの次男スルーだ。 だが、二人の目つきはいつもと明らかに違っていた。じり、とどちらかが動けばそれに呼応するようにもう片方が動くのだ。 チョロ松は息をのんだ。(けん制・・・だ・・と!?)「既に緊迫した空気が流れていますねぇ、解説十四松兄さん!あれ、十四松兄さん?」 とトド松が隣の解説に話を振るがその姿はない。どこ行ったんだろ?とトド松が小首をかしげていると、ふすまの向こうから元気のいい十四松の声が飛んできた。「判定の人連れて来たよー!」「いんの!?いる勝負なのコレ!?」 突っ込みたくないと思いつつも理不尽な展開についつい口からキレのいい言葉が出ていしまう。 その脇でおそ松が舐めまわすような目でカラ松のスキニーパンツを眺め、一松を挑発しているのが視界に入る。当然、一松のマジギレな舌打ちが飛び、お願い流血沙汰になるから本当やめてとチョロ松は内心悲鳴を上げた。(判定・・・いや、むしろいてくれた方がいいかもしれない。一松もおそ松兄さんも縄張り争いする猫みたいにメンチ斬り合いすぎて滅茶苦茶怖い。二人の間で戦ってくれるならまだしもこっちにまとめてあの殺意向けられたらたまったもんじゃないっ。ここは第三者の公平なジャッジで決めて・・・) ふすまが空いた。十四松の隣に確かに人がいる。「判定の松野松代です」「ま さ か の 母 ! ! !」 近所迷惑も顧みず、チョロ松絶叫。「世紀末すぎるわ!何とち狂ったことしてるの母さん!?」 完全に顔芸状態になっているチョロ松に、松代は酷く冷静なトーンで返した。「チョロ松・・・母さんね、あんた達の母親やる前から腐ってるの。生粋の貴腐人なの」「聞きたくなかったわそんな告白!!昔お父さんと抜かずの6連発したらあんた達を授かったのよって言われた時の方がまだマシだわ!!!」「今回は優勝賞品つきよ。判定である私が一番萌えたカップルには客間と客用布団を解放するわ」「ホモ公認の上にヤリ部屋つきってどこまでお膳立てする気だよ!世も末だわ!止めろよ母親!!」「あらいいのチョロ松?あんたこの前一世一代の告白してカラ松争奪戦に名乗りを上げたばかりじゃない?」「っ!!」 気付かれてた・・・!とチョロ松はのけぞった。相手は数十年来腐女子をやっている筋金入りの貴腐人である。その洞察力にかなうはずがない。 母・松代の言うとおりだ。世間体を気にして何度も何度も否定してきた気持ちを、チョロ松は持っている。なけなしの勇気と扶養面接という異常事態の後押しを得て、やっと言えたのがあの「養ってやる」発言だ。 あれ以来、確かにカラ松の態度が柔らかくなった。一松立ち向かいと違い、チョロ松には何が何でもお兄ちゃんぶるというのがなくなったのだ。その確かな手ごたえにチョロ松が一人でニヤケそうになるのを堪えたのは一回や二回ではない。「そりゃ・・・僕だって・・・でも!おかしいでしょ!おんなじ顔の、しかもあのカラ松兄さんだよ!」「でもじゃない!」 松代の鋭い声が飛んだ。びくっとチョロ松の身体が震えるほどだった。「恥ずかしがっては駄目よチョロ松。何であっても、あんたの中から沸き起こった気持ちは、間違いなくあんたの本当の気持ちなんだから。それがホモだろうが兄弟だろうが、母さん、引いたりしないわ・・・」「腐女子だもんね!」という十四松のコメントをスルーして松代は続ける。「ああいうシチュエーションの力を借りないとあんたが一歩進めないのも母さん、よく知ってる。今日だって、あんたにとっては絶好のチャンスなんじゃないの?」「母さん・・・」「確かに相手は強敵よ。あんたなんかよりも、もっと強引に乱暴なやり方でカラ松を奪いに行くでしょう・・・」 ――――カッ!!! 某アトラス社製ゲームのようなアイカットインを見せ、松代はチョロ松の背中を強く押した。「――――守りなさい!狼2匹からあの馬鹿兄を!!」 それがチョロカラの使命なのよーーーーーっっ!!!!「と言っている間にまさかの十四松兄さんだーーー!!」 実況のトド松が叫ぶ。チョロ松と松代の寸劇に完全に気を取られている間に戦場は、静かに動き出していた。「カラ松兄さーん!!!」 部屋の箪笥をプロレスのコーナーのように使い、ばっと十四松はカラ松に向けてとんだ。これにはおそ松も一松も指一本出せず、解説役だったはずの十四松の先制攻撃を許すことになる。「おー!十四松じゃないかぁー?」 酔っぱらってて周りのやり取りはまるで耳に入っていないカラ松は素直に自分の二の腕を枕にして一緒に寝転んでくれる十四松を猫なで声で出迎えた。かいぐりかいぐりと十四松の頭を抱え込むように撫でまわす。「お前は本当素直で可愛いなぁー!!」 若干他の弟たちへのあてつけが含まれるような発言だ。「ま、僕もその気になればあれは出来るけどね」とトド松がさらに煽れば、一松とチョロ松の視線が若干剣呑なものになる。「カラ松兄さーん。おっぱい見せてー?」「なっ!?」「っ!」「ははは、見るかー?俺の鍛え上げられた胸板を・・・」 畜生こう言うことか!?とチョロ松は今になってこの戦いの肝を理解し、頭を抱えた。酔っぱらったカラ松は普段の5割増しで馬鹿だ。人の発言の意図なんてまるで考えないし、前に手酷く手篭めにされたとしてもその記憶自体が吹っ飛んでしまっている。脱げと言われればホイホイ脱ぐ。 「狼2匹」。「守りなさい」という松代の発言の意図もここにあるということだろう。 「おわー!!カラ松兄さんちょっと谷間できるね!」「見惚れたか・・・?筋肉だ」「当然とばかりに嘘こくな!!立派な脂肪だよ!!横向きに寝てるから若干流れてるんだろーが!!」 息も絶え絶えにチョロ松が突っ込んでいる横で、「AAはあるなあれ。育てた甲斐があったぜ」、「自前だからあれ。ま、・・・揉みごたえあるよ」と歴代K(カラ松の)K(ここ空いてますよ)S(争奪戦)王者の酷い感想が飛び交う。まるで聞きたくなかった。「乳首まだふにゃにゃだ!立たせてあげる!」「ぎゃあああーっ!!」 色気のない悲鳴を上げたのはチョロ松だ。誰が嬉しくて自分と同じ顔がちちくりあう様を見なくてはならないのか。その裏でカラ松は十四松を引きはがそうと奮闘しながら、「ちょ・・・十四、松。待て・・・」と艶っぽい声をあげる。ずり、と畳をする足の音が虚しい。当然、力で十四松に敵うわけもなく、黄色いホールドは外れるわけがないからだ。 「どうですか判定」とトド松が松代に振れば、松代は眼鏡を押し上げて応じた。「無邪気さを隠れ蓑に相手の懐深くに入る技能・・・見事の一言よ」「何カッコよく評価してんだよ!!中身最低だろうが!!」 十四松、馬鹿やってないで離れろ!!「おおーっと、ここで初参戦のチョロ松兄さんが動いたぁー!」「んな実況いいから!僕は普通にカラ松寝かせるだけだから!!」 きりっと言ったがここには常識人はいない。 「うわ、チョロ松兄さんヘタレすぎ」「ヘタレだなー、チョロ松」「ヘタレ松・・・」「そんなヘタレに生んだ覚えはないわよ!!チョロ松!」 と罵声の嵐である。うるさいな!とやけっぱちのチョロ松は吠えた。 「というわけだ。十四松。ハウス」「えー?いいのー?」 能天気な声と裏腹に十四松の目はぎょろんと、気味の悪い動きをする。「・・・こんなに仕上がってるのに?」「んぐ・・むぅー・・・」 卑猥な水音が松野家の居間に響く。文字にすればじゅっぼすっぼずるるじゅるるぐりっぐりゅっずっずっずっといった感じか。性感帯を弟に(それも口で)弄繰り回され、カラ松は声を出すまいと必死に堪えている。その痛々しい姿を十四松は時折確かめるように顔をあげて、カラ松の表情を盗み見ている。カラ松がうっかり目をあわせてしまえば、じわ、と涙が込み上がった。「これは卑猥!童貞のチョロ松兄さんの股関にクリティカルヒットだー!」「いい加減黙れトド松!十四松はぺーしなさいぺー!全く、一体どこで覚えたんだそんなこと!?」「加●鷹?」「人名出すなごらあああああああっ!!!どうしてお前はいつもそうギリギリを攻めるんだぁぁぁ!!!」 ハウスったらハウス!と何とか十四松を解説席に連れ戻すことに成功したチョロ松は問答無用でカラ松のはだけたパーカーを戻した。「あー!」という残念そうな馬鹿長男の声が聞こえたようだが無視する。「おい!おい、カラ松!!」 乱暴にビンタすればカラ松は「こ、今度はチョロ松か?」と懲りずに腕枕を作ろうとする。ぎろっと、チョロ松なりに怖い顔をすれば、罪悪感はあるのかカラ松の顔に一瞬怯えの色が混ざった。「何やってんだよ・・・」「スマン」「謝るなら最初から馬鹿な真似するなよ!!」「・・・スマン」 少女マンガのようないい雰囲気にトド松はひそひそ声で「おー、これはどうでしょう、解説・十四松さん」と話題を振る。ぶれない十四松は腹から声を出して「いけんじゃね!?セクロス!!」と応じる。さらに隣の松代も「今日なら・・・いけるんじゃないですか?」と意味深な追い打ちをかけるではないか。「まさかまさかのビギナーズウィナーでしょうか!?」 そう、実況のトド松が煽る中、チョロ松がカラ松を引っ張り起こそうとした――――瞬間だった。「なあ、・・・カラ松よー」 部屋の隅で体操座りのまま殺気を放つ四男と静かな火花を散らせていた長男が、ゆらり、と立ちあがったのだ。ごぽごぽとあり得ない量のパック酒をグラスに注ぎ、にたりと笑う。「酒・・・足りないんじゃねぇか?」チョロ松の視界に最後に入ったのは、そんなゲス顔でこちらに話しかけてくる兄の姿だったという。「ふべぶっ!!!」「で、でた~!松野家の赤い彗星!こう言う時だけ三倍速で動ける男!!松野家長男松野おそ松だああああー!」「おそ松兄さんはやいはやーい!」「じゅ、十四松、あんた何が起きたか見えたの?」「えー?おそ松兄さんがチョロ松兄さんにボディーブロー浴びせてふっ飛ばしがてらカラ松兄さんに鬼殺しを飲ませたんだよー!!」 松代の「あの一瞬で!?」素直な驚きの声に、おそ松は「ザクとは違うのだよ、ザクとは」と応じた。ガン●ムは20代男子の嗜みである。 手っ取り早く酔うためだけの悪酒を一気飲みさせられたのだ、カラ松は目の端どころか顔全体を赤くしてきょろきょろとあたりを見回した。「???あ、あれ?おそ松兄さん。チョロ松は?」「便所」「そうか」 疑うことを知らないカラ松は酷くあっさりと状況を飲み込んでしまう。丁度マウントポジションを取るように自分を見下げて来ているおそ松の、その不吉な笑みにも気づいていないようだ。 おそ松は酷く大根役者な声色を使った。「ちぇー、いーなー、いーなー弟たちばっか構ってもらえて」 トド松の「ここで相変わらず兄のプライドなんてドブに捨ててるおそ松兄さんの甘える攻撃がさく裂ー!さすがわがまま長男僕たちにできない事をいとも簡単にやってのけるぅ!」という実況が飛ぶ。 カラ松は何をされそうになっているのか全く気付いていない感じで、からから笑った。「ハハハ、甘えん坊な兄貴だな。いいだろう!今からカラ松のここはあんたのもんだぜ、子猫ちゃん!!」「駄目押しのカラ松兄さんのイタ発言アシスト!まだこの状況で自分が攻め発言出来てると思ってる残念な勘違いぶりに乗じておそ松兄さんが一気に距離を縮めてきたーっ!!」 一松が思わず片膝ついたが、それをおそ松は一睨みで押さえつける。そのまま返す刀でころっとカラ松には笑顔を見せると、「うわーい!おそ松マンモスうれぴー!」ともはや何キャラか分からない感じでその隣にねっ転がった。「今は兄弟のためにあるこの腕も、いつかはカラ松girlのためにだな・・・」「あーはいはいうんうん。好きに喋ってていいから、カラ松くんちょっと右手貸してくれるー?」 ぶわっと一松の殺意が烈風のようにあたりに吹き抜ける。 その寒気に鳥肌立った十四松は、後ろの物音に振り向いた。「あ!チョロ松兄さん!」 見れば、「ふっざけんなよクソ兄貴・・・」と、チョロ松にしては汚い言葉遣いで廊下から張ってくる。綺麗に玄関向こうまで吹っ飛ばされたらしい。執念だけでここまで帰ってきたという感じがした。 満身創痍のチョロ松には、居間の様子がよく見えない。「おい、十四松。あの馬鹿、カラ松兄さんに変なことしてないよな・・・?」と迎えてくれた五男に聞けば、このききまつがいキングは「うん!いやらしいことしかしてないよ!!!」と元気よく答える。 ほっと、チョロ松は安堵のため息をついた。「そうか。よかった・・・」 コンマ5秒で眉を吊り上げ、口をくわっと開く。「――――ってそれ全っっ然よくねぇよ!!!!」 伝家の宝刀ノリ突っ込みさく裂。痛むアバラを押さえてチョロ松が十四松を抑え込む。 目の前に飛び込んできた居間の光景にチョロ松は卒倒しかけた。 「なあ、カラ松、久しぶりにお兄ちゃんって言ってみろよ・・・?」 カラ松の身体を足で抑えつけながら、おそ松はカラ松の耳元に囁いている。よくよく見ればカラ松の右手はおそ松の股関に誘われており、賞品の客間布団一式なんてほったらかしてもうここでおっぱじめようとする勢いだ。 まだ記憶の片隅に皆がいることを憶えているのか、カラ松の拒否は本気の体を見せてくる。おそ松はニタニタと笑いながら、「いいじゃねぇーかー?興奮するっしょ?」とクズ極まりない発言でそれを流す。「まって、おそ松兄さん。これ、・・・変だって・・・」 アダルティー極まりない雰囲気にチョロ松の腰が抜けた。童貞には毒すぎたし、何より嫌がるカラ松の顔がこんなにもそそるものだったなんて知らなかったことがショックすぎたのだ。「チョロ松兄さん勝利には一歩届かず、雪辱のNTR展開だ!!これはポイント高いんじゃないでしょうか判定!?おーっと萌えすぎてコメントも出せないか、無言のグッジョブポーズを頂きましたー!!」 唯一の良心(?)だったチョロ松が完全再起不能になった頃、仕舞には幼児帰りのような口ぶりで、カラ松はさめざめと泣き始めてしまった。「おそ松兄さん、おそ松兄さん!お、おれ、やだあ・・・こんなのっ・・・」「こんなのって何?ちゃんと言わないとわかんねーよ?」「だって、・・・みんな見て・・・っ!!」「んー?そうだなー。カラ松のいやらしいとこ、ちゃーんと見てもらわなきゃなー」「や、だぁ・・・っ!」 「Sですねー。ドSここに極まったって感じですねー」、「すごいおそ松兄さん!佐●克哉みたい!!」、「・・・十四松兄さん守備範囲広いね」なんて末松が下ネタをAV男優からBLゲーに移していると、――――のっそりと、最後まで沈黙を保っていた男が立ちあがった。「あ!」「ああっと!!」「とうとうね・・・!」 松代が息をのむのも仕方がない。 ゆら、と立ちあがった一松の顔は、態度はまるでいつも通りなのだ。ただ、そのけだるそうな顔の二つの瞳は、ぐらぐらと静かに燃えている。「動かざること猫の如し!松野家のバイオレンスクズ枠!無駄にあたりが強いせいでついた通り名はカラ松兄さんの撲殺天使!!!俺のおもちゃに手を出す奴は、たとえ長男でも許さねえ!てめぇの血で居間染めてやる!松野家四男、松野一松!ここに見参だあああああああ!!!」 呼応するようにトド松のコールもプロレス調になって行く。調子に乗っていたおそ松がぎくっと大きく身体を震わせた。「え!?一松兄さんパイルドライバー!?パイルドライバーいっちゃう!?」「馬鹿、十四松!?あんなん喰らったら室内犬神家になるだろーが!!いらん知恵吹き込むなって!!」「・・・おそ松兄さん」 地獄の一丁目から聞こえたような、酷い声だった。当事者じゃないはずのトド松の顔が強張り、十四松が笑顔のまま震えだす勢いである。「どいて」「は、はい・・・」 少しでも逆らうそぶりを見せたら殺される。おそ松でなくてもすぐに理解できることだった。 長男のロックから解放され、もう格好つける余裕もないのか、カラ松は一松に縋ろうと手を伸ばす。「い、いちまづ~・・・」 はたから聞いても滅茶苦茶痛い音がして、カラ松の手は一松に拒まれた。 眉一つ動かさずに一松が尋ねる。「・・・何、感じた声だしてんの?」 カラ松は乱暴に顔の涙をぬぐって「出して、ねぇ」と強がるが全く逆効果。それにカラ松本人だけが気づいていない。「あちゃー」、「うわー」という声がそこら中から漏れた。「・・・母さん」「はひっ!」「客間、借りるから」「はいぃい!!」 たとえ親とはいえ人様の判定になんて従う気は、一松にはさらさらない。米俵か何かのようにカラ松を抱える(正確には抱えきれてない。カラ松の頭が畳と擦れる度、おそ松はあいつ最初にハゲるんじゃねぇかなとぼんやり思った)と、「いやだ!」、「助けて!」というカラ松の声もガン無視して廊下に消えていく。「しょ、勝者、一松兄さん~・・・」 実況の締りのない声がぽつん、と居間に浮かんで消えた。◆ 客間の電気をつけることもなく、一松は乱暴にカラ松を布団の上に放り投げた。「い゛っ!」 カラ松は大げさに声をあげ、恐る恐ると言った感じでこちらに迫ってくる同じ顔の肉食動物を見上げる。「・・・」「・・・」 もはや、ドヤ顔してたカラ松の姿は微塵もない。他の兄弟よりも少しだけ凛々しい眉は情けなく下がり、一松の指が蹂躙するのを無意識に待つかのように、口は僅かにあいている。 一松が無言、無表情に徹すれば徹するほど、それは顕著な変化として現れた。まるで花が開くのを早送りで見ているかのようだった。 す、と一松がカラ松に向けて手を伸ばす。カラ松はぶたれると思いとっさに目をかばった。 瞼を閉じた暗闇の中で、一松の声はよく聞こえた。「・・・すっげえ、ムカつく」 猫が唸るような声だった。本当に、機嫌が悪い時にしかでない、一松の声だ。 カラ松は驚いたように目を見開く。すかさずビンタされた。「すまん」「・・・何に謝ってんの?」「・・・」「分かんないなら謝んないでよ」「・・・すまん」 酷く嫌な沈黙が流れる。カラ松はどうしようと目を泳がせた。 灯りが漏れているのに気付いて見れば、なんとおそ松が出歯亀している。なんだかんだで既に半裸まで脱がされているカラ松は客用の布団をひっつかんで声を荒げた。「おおおおそ松兄さん!!?」 にやにやと弟たちの甘酸っぱい雰囲気を堪能していたおそ松は、まじでパイルドライバーを繰り出してきそうな一松に向かう。「なー、一松ー。今日3人でやろうぜー?ちょっとこの半勃ちのままじゃ辛いっつーかー?」 もうここまで来るとすがすがしいクズ発言だ。 「失せて」と一松は一蹴した。 要領のいいおそ松は引き際を心得ている。「へーい」とふすまが締まれば、これで今度こそ月しかカラ松と一松を見ていない。 最後の救助船(と見せかけた海賊船だったのだが)を逃したカラ松は、また恐る恐ると言った感じで一松を見上げた。 不機嫌な顔した弟は、なぜかいつものような強引さが欠けている。「・・・・」 カラ松はない頭で必死に考える。もしかしたら先ほどよりもひどいビンタが待ってるかもと思いながらも、「なあ、一松」と声をかけた。「何」「もうちょっと、こっち来ないか?」「『ここ空いてますよ』はいいの?」 どうやらあたりだったようだ。カラ松は一松の機嫌を損ねないように精一杯ニヤけるのを堪える。 カラ松は十四松がぐねぐねと身をくねらせながらカラ松の隣に飛び込んできた時から、一松の冷めた視線に何となく気づいていた。どうしても自分のいつものやり方では、この寂しそうな一松の視線を慰めることが出来ないということも、だ。 だから、決めた。 今日は、格好いい兄を封印する。「?」 すると、どうだろう。 ぶわぁっと身体を駆け巡るのは、同性とか弟とかそんなもん引っこ抜いて、どうしようもなく一松が好きだと言う気持ちだった。 酒どころじゃなく、身体を熱くする。「~~~~~~!」 言えるだろうか。 尾崎のように格好つけずに、ただ一松に「来て、ほしい」と強請れるだろうか。「なんで・・・さっきよりも顔赤いの?」 不思議そうに首をかしげる一松の下で、カラ松は手で顔を覆って硬直していた。-------OSOMATSU^ワ^!ちょっと最後らへん急ぎ足になってしまいましたすんません!!一←意識しちゃってるカラって可愛いくないすか駄目っすか!?一松がときめきをバイオレンスで隠すならカラ松はときめきをイタ発言で隠してるような気がしてならない。この二人、真面目に向き合おうとするとどっちも自分の殻を破らなきゃいけないのがツボですたまらん「ここ空いてますよ」ネタはマジでやりたかった。というか、カラ松に「ここ空いてますよ」されてルパンのように飛び込んだ揚句、十四松にジャストミートで打ち返されたい人生だった・・・( ˘ω˘ )