アライメント調整、その後。 ~プロって何だ~

ショップ B での話です。



私の F10 がピットに入り、リフトに載せられ、ホイールにセンサーを取り付けられて、測定が始まりました。

ちなみにこのピットは大きな整備工場の一角に別棟として建てられており、建屋からリフト、もちろんアライメントテスターまで大変ピカピカで新しいものです。


応対してくれたのは二人。
一人は去年調整をお願いした時の作業者さんであり、もう一人の若い方は去年の作業の終盤に少しだけ加勢をされていたのを覚えています。 今回の作業はこの若い方が行うようであり、私は年配の方 (と言っても私とほぼ同じくらい) と談笑しながらその測定作業を見ていました。



そして一連の手順が終わり、測定結果が出る。 その結果は前に書いたとおりです。

リアの左右キャンバー差については敢えて説明しなくてもよかったかも、ですが … 「去年の調整時に、キャンバーを弄った (合わせようとした) 形跡が無い」 ということから … 何も言わないとまたそのままで置かれるかも、ということを懸念し、モニターを眺めながら一応 「このリアキャンバーを左右共2°にして下さい、お願いします」 と念を押す。

少し引っ掛かったように曖昧に頷く若い作業者。
思うに … なるべく避けて通っているのか、やはりキャンバー調整に不慣れなのだろう。



下から作業出来るように F10 をリフトアップし、テスターのカメラも上昇させ、作業開始。
店のHPに登場していた社長? らしき方から声をかけられた年配の方は、一緒にどこかへ立ち去った。



 


まず、左リアから手を付けるようだ。

先ほどの曖昧さに不安を覚えた私は … 作業者と一緒に下から足回りを見上げながら 「キャンバーはアッパーアーム、トーはロアアームで主に調整するようですよ。 ココ (左リア) は (キャンバーが) 寝てるから、アッパーアームを外に振って … (後はわかりますよね)」 と控えめに述べ、後方に下がって遠巻きに作業とモニターを眺めることに。


アッパーアームのナットを緩め、カムボルト側に工具を掛け、グッと回す素振りが見える。
モニターに映しだされたキャンバーは、なぜかいきなり 2°40′超に増大。


(はっ? … )


その後も細かく回しているようですが … なぜかじわり、じわりとキャンバーが増大し、みるみるうちにリアタイヤが倒れていく。
モニターに出ている数値が 3°を超えたところでリフトに近寄り、質問してみる。

「今、このボルトを右に回していきました?」
「はい、そうです」
「いや、右に回すと引き込んじゃうから、左に回さないといかんのじゃないですかねぇ」
「… (無言)」


どうやら、左に回し始めたようです。 再び下がり、遠巻きにモニターを見る私。


しかし今度は、10′ほど起きる … 戻る、起きる … 戻る、を繰り返している。
これを、マジで … 本当に20分程延々と繰り返している。 まったくキャンバーが起きる気配が無い。
遠巻きに眺め続ける私には夕日がモロに当たり、あまりの暑さのため頭痛がしてきた。




 右下がロアアームのカムボルト、中央右奥に見えるのがアッパーアームのカムボルト。
 (これ以下の画像、本当は全部右リアの写真なのだが、イメージが掴みやすいようにすべて左右反転しています)
 



いったい何やってんだ。



再び近寄って見ると … スパナをボルトに掛けて回そうとしているが、ボルトのすぐ両脇に出っ張りがあるためにスパナが浅くしか掛からないらしい。 なのでスパナがすぐ外れてしまい、一回で僅か10度くらいしかボルトを回せていない。

しかもその10度はブッシュの捻れに吸収されてしまい、スパナが弾かれて外れると 「グニュッ」 とすぐに元に戻ってしまう。
行って戻って … の正体はこれだ。
しかも力を込めてるのに掛かりが浅くて弾かれるため、勢い余って周囲のパーツにスパナをガキンガキンとぶつけまくっている。


これを延々と20分繰り返してるとか何考えてんだ。 20分やってダメなんなら1日やってもダメだろうが。
だいたいなんで、突起が邪魔だと分かっててアタマのデカいスパナ使うんだ? メガネが無いほどの特殊なサイズなのか?

「このボルト、何ミリです?」
「21mmです」

(マジかよ。 普通サイズじゃん)

「ブッシュの捻れで元に戻されているから、ある程度一気に回さないとダメだよ。 メガネは無いの?」
「あるけど、(他のアーム類が邪魔で) 掛けられないんですよ」

作業者が下から拾い上げて見せてくれたのは、一般的なS字型をしたオフセットメガネ。

「ストレート(メガネ)は、無いの?」
「無いんっすよ」

と言いながら、少し離れた工具チェストに何かを取りに行く作業者。




ソケットと、エクステンションバー、そしてスピンナハンドルを持って戻ってくる。
しかしソケットが被さらない。 周囲のアーム類やスタビが邪魔で、正面からボルトを捉えることが出来ない。

「ユニバーサルジョイントは無いの?」
「 … 」

どう考えてもこれじゃ無理なのに、無視して半ばやけくそ気味にガチャガチャとやり続ける作業者。 あきらかにムスッとしとる。


まぁいい、プライドがあるのだろう。 再び下がって見守る私。






その後しばらくガキゴキやっていたが、何を思ったか突如ロアアームを緩め始めた。
アッパーアームが動かないから、ロアアームでキャンバーを合わせようとするつもりなのか。

アッパーの目処が立たないうちにロアまで触ったら、ドツボにはまるぞ。
つうかそんなことしたら、例え無理やり合わせても、それこそ左右トラック幅が違ってきたりするんじゃないのか?


当然、ロアアームをいじくり回してもキャンバーは思うようには動かない。 再び工具チェストに向かう作業者。
すると … なんと全長が60cmはあろうかという巨大な太々しいマイナスドライバーを持ってきた!!
そしてあろうことか、それをロアアームとアクスルキャリアの隙間に差し込み、グイグイとコジリ始めた!!

あのな、仮にそれでアームが外側に出たとしても。それはカムが回ったんじゃ無くてどこかが曲がったんだろ。



真剣に、「このままでは車を壊される」 と感じた私は … 静かに作業を制止。 「それはダメでしょ」 と。

ムスッとして、再びどこかに消える作業者。



その隙に私は … 愛機パネライを手首から外してポケットに突っ込み、下に散乱している工具の中から30度くらいの浅いオフセットのコンビネーションレンチを引っつかんで裏返しにボルトに掛けてアタマを左手で押さえ、一気に左回転させて一発でキャンバーを 2°以下まで戻したのでした。

そして手ぶらで戻ってきた作業者に、「だいたい合わせたから、後はお願いします」 と。


声にならないような唸り声を上げ、私をはねのけるような仕草をする作業者。

ここでブチ切れても … 私の気は済んでも決して 「自分の車には」 良い結果を生まない、と思って何とか抑える。
しかしすごいイライラする(笑)



これで再び数値がメチャクチャに逆戻りなら、事務所に大音声で乗り込んで (ちょうど社長さんらしき人もいるので) 「アンタのとこの作業者はなんだ」 と厳重に抗議するつもりでしたが … 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる的に弄くり回しているうちに … 何とか合う気配が見えてくる。


一時間近くの時間を掛けて … ようやく一輪だけ終了。




 アッパーアーム部分のアップ。ボルト頭両サイドが出っ張っているのがわかるだろうか。 (これが無いとカムが効かないから) 右に回せばアームが引き込まれ、よりネガキャンになることくらい誰でもわかる気がするが …




さすがに反対側はそこまで時間は掛からなかったけど … 後で見たらアッパーアームのカムの向きが左右で上下逆になっとるし。
その機構上、実際の軸位置に悪影響は無さそうだけど … 普通揃えるでしょ。 何も考えないで回した証拠だよこれ。


前の記事に貼ったのを見てもらうと分かりますが、調整後は2°08′になっています。 冒頭に書いたとおり、私は 「2°にして」 と言ったのですが … この作業を見てると、「あと10′起こして」 とか言う気力は私にはありませんでした。




ちなみに前輪のトー。

ここで調整してもらうとセンターずれが起こり得る可能性があることは分かっていましたので … その豪快にズレた 「調整前」 の数値を見てそれを確信した私は、「トータルトーだけ合わせてくれればいいですから、(すごいトーインになっていると出ていたので) 左右等分にタイロッドを伸ばしてくれませんか」 とお願いしました。

これには 「わかりました」 とハッキリ返事をもらったのですが … まったく伝わっていなかったようです。
結果またしてもセンターずれが起こったのは、前に書いたとおり。

まぁこれは … こんな変態的な注文を付ける私がおかしいと思うから、仕方無いかも、とは思いますが。




 ロアアーム。 ちなみに奥側 (前側) はカムボルトでは無く、調整は出来ない。
 したがってロアアームの調整はキャンバーを動かすためでなく、トーが主だ。





キャンバーとトー。 あちらを動かせばこちらも動く、だから面倒くさいってのはわかりますよ。

でもね、見てたら一定の関連、法則がすぐわかるんですよ。例えばロアアームをいじってトーを何分動かせば、つられてキャンバーは何分動くのね、とか。 だからその分を見越して、あらかじめアッパーアームでキャンバーを多めとか少なめにしときゃいいのに。
でもこの作業を見てて、そういう予測をして動かしている気配はまったく無かった。 本当に行き当たりばったりで。

そもそも最初にカムの回転方向を間違うのが信じられない。 仮に一発目で勘違いしたとしても、逆だってすぐに気付けよっていう。


冒頭に、何度も 「中でお待ちください」 と言われましたが … あれは自信の無さの現れか。
本当に見えないところで待っていたら、いったいどうなっていたのか。

こういうプロの作業に手を出したのは初めてだし、こっちだって好きでやったんじゃ無いの。
プロが素人から手ぇ出されて嫌なことくらいはわかってんだから。




いつもただ漫然と作業しないでさ。 それでお金取ってんだから、もう少し研究して … それこそ 「3D」 的な想像力を養わないと。
不慣れなのかも、と言っても、少なくとも去年の10月には居たんだしさ。 もうそれなりにこなしてるはずでしょ。

そもそも経験とか以前に、空間認識能力の問題だけど。 サイコロの展開図でも想像して鍛えろと言いたいよ。


その点、ショップAのほうが圧倒的にパフォーマンスは上でした。
そして工具も、ショップAは見事に取り揃えてた。

つうかせめて21mmあたりのありがちなサイズは、オフセットとストレート両方揃えておくべきでしょう。
そういえば前もモンキー使ってたの見た気がするが … トルクが必要なところに適切な工具が無いとか、論外だ。




帰り際には、「外車はあまりやったことないのですいません。 また宜しくお願いします」 と作業者。
至らない部分があったのは自覚しているのでしょう。 その後、缶ジュースをおごりながら、少しおはなしさせて頂きましたけど。


ええ、また必要があれば行きますよ。 きっと次は良くなっているはずと信じています。








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