前回までの説明から明らかなように、GIもGLも個人差が大きいこと、そしてあくまでも個々の食品を単独で食べた場合の値であって、複数を同時に食べた場合に、血糖値がどう変化するかを予測することは難しいということが大きな欠点として挙げられます。そのため、GIは何かの指標としては不完全であって役に立たないものだと主張する研究者も多くいるわけです。

とはいえ、現在でもGIやGLの有効性を検証する試みは継続しており、有効性を立証したと主張する論文もそれなりに発表されていて、素人目にはどちらを信じてよいのかまったくわからない状態が続いています。

特に、GIやGLのダイエット(減量)効果については、もともとの理論からいっても、低GI食や低GL食がそのまま体重減少に結びつくものとは言い難い面があり、よけいに問題を複雑にしています。血糖値の抑制が減量に結びつくというのは、それによってインスリンの分泌が減るので、脂肪の蓄積が抑制され、空腹感も抑えられるというようなものですが、それを直接的にヒトで証明した論文は恐らくないと思います。

ただ、いくつかのコホート研究や介入研究で、高GI食が体重を増加させるとか、低GI食で減量できたというものがあるのも事実です(ただし、否定的なものもたくさんあります)。

というわけで、現時点で結論を出すことは誰にもできないでしょう。個人的には、1回目にも書いたように、GIによる減量はあまりうまくいかないのではないかと考えています。それは以下に紹介する論文を読んだ結果得られた現時点での暫定的な結論です。

前回同様、これは網羅的にすべての関係論文を集めたものではありませんので、重要な論文が全て含まれているとはいえませんが、最近の傾向がある程度はわかると思います。とにかくまずは始めることにいたしましょう。

GIとGLが体重に影響を与えるというコホート研究

米国タフツ大学とハーバード大学の研究チームは、2015年に『米国臨床栄養学雑誌』に、食事に含まれるたんぱく質と炭水化物の量と質の変化が、長期の体重変動に与える影響について、3つ大規模コホート研究のデータ解析した結果を発表しました*1。

一般に食事ガイドラインなどでは、牛肉や豚肉を鶏肉や魚介類に交換することでより健康的な食事を実現することが推奨されていますが、GIの異なる炭水化物に交換した場合については、まだはっきりしたことがわかっていません。

そこで、研究チームは、たんぱく質を種々のGLをもつ炭水化物に交換した場合の、長期的な体重変動を16-24年にわたる米国の大規模疫学研究のデータを用いて解析しました。この疫学研究は、看護師研究、看護師研究IIと医療職追跡研究の3つで総勢12万人の男女が含まれ、ほぼ4年おきに食事が調査されています。そのため、長期にわたる食生活の変化が体重に与えた影響を解析することができるのです。

解析の結果、まずたんぱく質自体が長期的に体重に与える影響には、たんぱく質の種類によって違いがあることが明らかになりました。肉、皮付き鶏肉、チーズの摂取は長期的に体重を増やしましたが、牛乳、豆類、卵の摂取は体重変化と関係が見られず、またヨーグルト、ピーナッツバター、クルミ、ナッツ類、皮なし鶏肉、低脂肪チーズ、魚介類の摂取は長期的な体重減少と関係がみられました。また、GL(グリセミックロード)はそれとは独立に、50増加するごとに長期的に体重を0.42㎏増やすことがわかりました。

さて、たんぱく質が豊富な食品から炭水化物への変化ですが、GLの高い食品への変更は体重を増加させ、逆にGLの低い食品への変更は体重を減少させることがわかったということです。

著者らは、たんぱく質の豊富な食品はしばしば炭水化物に交換されるが、その際の炭水化物のGLが体重の増減に関わるようだ、と結論づけています。

低GI食では体重は減らないというコホート研究

スペイン・ナバーラ大学の研究チームは、2014年に『BMC公衆衛生』誌に、GIとGL、そしてパンの摂取が、地中海地方のコホートにおける肥満率に与える影響についての研究結果を報告しました*2。

こちらは、9,267名のスペインの大学生を対象にした研究で期間も5年と短く、前期の大規模コホートとはかなり規模も対象者も違うのでそのまま比較することはできませんが、こちらの研究では、GIやGLの違いと体重変化の間には、なんの関連も見出すことができなかったということです。ただし、白パン(GIが高い)の摂取が多い者(1日2枚以上)は、少ない者(週1枚以下)に比べて、BMIが25以上になるリスクが、1.40倍に高まることがわかりました。

GIが高い食事をする人は減量後のリバウンド率が高かったという介入研究

デンマーク・コペンハーゲン大学の研究チームは、2010年に『ニューイングランド医学雑誌』に、高たんぱく質あるいは低たんぱく質、そしてGIが減量後の体重維持(減量ではなく)に与える影響についての研究結果を発表しました*3。

研究ではまず、欧州8か国から集めた1,209名(平均年齢41歳、平均BMI34、かなりの肥満です)を対象に、初期体重の最低8%の減量を目標に、1日800kcalの超低カロリーダイエットが実施されました。この段階ではGIやGLは関係していません。

次に減量達成者(773名)が体重維持期に移行した後の26週間の自由摂取期間中に体重のリバウンドを防ぐのがこの研究の目的でした。対象者はランダムに(1)低たんぱく、低GI食群、(2)低たんぱく、高GI食群、(3)高たんぱく、低GI食群、(4)高たんぱく、高GI食群、(5)対照群(参加者の国の食事ガイドラインに則った食事)に分けられて、各々食事指導を受けました。

研究を完了したのは548名(71%)でしたが、高たんぱく群(3)と(4)および低GI群(1)と(3)のドロップアウト(中断)率が、(2)低たんぱく、高GI食群のそれに比べて有意に低かったことが分かりました(26.4%と25.6%。(2)は37.4%)。つまり高たんぱく質および低GI食は、継続しやすいことが示唆されたということです。

体重維持期間中、(2)低たんぱく、高GI食群のみで、平均1.67kgの有意なリバウンドが観察されました。また高たんぱく群(3)と(4)の方が、低たんぱく群(1)と(2)に比べて体重のリバウンドが0.93kg少なく、また低GI群(1)と(3)の方が、高GI群(2)と(4)に比べて体重のリバウンドが0.95kg少なかったのです。つまり、GIの高い食事では大きなリバウンドが起きやすく、GIの低い食事あるいはたんぱく質の豊富な食事は、体重維持期のリバウンドを防ぐ効果が見られたということです。

研究チームは、GIを低めにすることとたんぱく質を多めにすることで減量後の体重維持がより容易にできるようになるだろう、と結論づけています。2011年の続報*4では、GIが低めの、かつ、たんぱく質の豊富な食事は、体内の炎症反応を抑え、より健康的な減量の維持が可能であることが示唆されています。

低GI食でダイエットできるという介入研究

スペイン・ロビライビルジリ大学などの研究チームは、2014年に『米国臨床栄養学雑誌』に、GIが減量、食欲、炎症反応等のリスク因子に与える影響についての、ランダム化対照臨床試験の結果を報告しました*5。

研究チームは122名の肥満成人を対象に、ランダムに3群に分け、(1)中度炭水化物高GI食群、(2)中度炭水化物低GI食群、(3)低脂肪高GI食群とし、6か月にわたって介入を行いました。総摂取カロリーは3群とも同じ(計算された個人ごとの体重を安定して維持するのに必要なカロリー量から500kcal引いた値)に設定されました。

その結果、第16週、第20週、最終週のBMIは各群で開始前に比べて有意な差がみられました。また(3)低脂肪高GI食群に比べて、(2)低GI食群は有意にBMIを減らしましたが、(1)高GI食群も体重は減ったものの有意な低下ではありませんでした。ただ、(1)高GI食群と(2)低GI食群の間にも有意な差はなかったということです。つまり、カロリーを制限したダイエットでは、低脂肪で高GIの食事よりも、ほどほどの炭水化物を摂るのが効果的であり、それが低GI食であれば、さらに効果的であるということです。

低GI食ではダイエットできないという介入研究

米国タフツ大学の研究チーム(上記とは別のグループ)は、2015年に『肥満学』誌に、炭水化物の質とGI値が減量中の安静時代謝と体組成に与える影響についてランダム化臨床試験を実施した結果を発表しました*6。

こちらの研究では91名の肥満成人を対象に、ランダムに4群に分け、17週間にわたって介入が行われました。カロリーやその他の栄養素の組成はできる限り同じにして、ただ、炭水化物比率(55%か70%)と、GI(高いか低い)の組み合わせで比較を行いました。

その結果、体重減少と体脂肪減少に対して、これらの組み合わせによる影響はみられなかったということです。研究チームは、中程度炭水化物で低GIの食事は、高炭水化物で高GIの食事に比べて、体脂肪を減らすのに特に好ましいとはいえないと結論付けており、これは前記の論文の結論とはまったく逆になっています。

まとめ

ここで紹介した論文は、最近の一部のものに過ぎませんし、研究は現在も続いているわけですから、今後より決定的な論文が発表される可能性は否定できません。

とはいえ、これらの報告をみる限り、低GI食が高GI食に比べて、ダイエットに特別優れた効果を発揮するようにはみえない、と思うのは筆者だけではないでしょう。少なくとも、低炭水化物ダイエットや低脂肪ダイエットという現在ではダイエットの定番ともいうべき2大ダイエットの場合、それらの効果が介入研究で対照群と比較してはっきり示されている研究は数多く存在します。GIにはそのような決定的な研究結果が欠けているようにみえます。

低GI食にダイエット効果があるというのであれば、対照群は、炭水化物比率が介入群と同じで、高GIか少なくともGIが不定の食事である必要があります。ところが、上記の研究のうち、低GI食と高GI食の効果を直接比較して、減量効果の違いがみられたのは最初の研究だけで、他の研究は、両者の直接比較では効果が認められないか、あってもリバウンドを穏やかにするというものであって、低GI食の方が高GI食よりもより多く(有意に)体重を減らすというものがありません。

これらの研究結果が示唆しているのは、低GIは高GIに比べると、長期的に体重を低下させる傾向はみられるが、短期の急激な効果は望めないということです。少なくとも、これまでの研究では、ということですが、GIの専門家が考えた方法でも、6か月で体重の1割を減らすような効果的なダイエットは実現できない可能性が高いということです。

ただし、上記の論文は最後のもの以外は、低GIの有効性をまったく否定しているわけではないので、多少の効果はあるのだろうと思います。恐らく、同じ量の炭水化物を摂取するのであれば、低GIの食品は高GIの食品に比べればダイエットに効果的であろう、ということはいえるのではないでしょうか。

GIには個人差が大きいということなので、ダイエットする個人にとっての正確なGI値をもし知ることができるなら、また食品の組み合わせによるGIの変化をより正確に計算することができるようになれば、より正確に低GIダイエットを実行できる可能性はあり、その場合には結果はもちろんかなり違ってくるのではないかと思います。でも、それはまだしばらく先の話になるでしょう。