ボイス逆引き体臭辞典(加齢臭・世代臭・腋臭臭の真実)

ボイスシステムのスタッフは、個人の体臭を嗅げば、「この成分が入っているな」「こいつが主犯だ」「隠れているのはこの成分かもしれない」と、おおよその目安がつきます。

反対に、例えば体臭原因物質の試薬が入った瓶を見ると、そのとてつもない悪臭が鼻の中によみがえってきます。

 

あまり難しい話は抜きにして「こんなニオイがしたら、これが原因かもしれない」という観点から、ほんの一例ですが辞典を作ってみました。

青臭くて油臭い体臭(加齢臭)

青臭くて油臭い。 イヤなニオイです。それに鼻すじ辺りが痛くなる感じ。

 

疑いたくなる原因物質として筆頭に挙げられるのは「2‐ノネナール」

いわゆる「加齢臭」ですね。

 

ノネナールの閾値(低ければ低いほど、低濃度でもその存在が分かる、という指標。通常ppmで示されますが、値が小さければ小さいほど、ほんの少量でもクサイ、と思ってください)は、かなり低くて0.0008ppmです。ちょっと発生しただけでもクサイ。

 

ノネナールの濃い目の希釈液を嗅いだボイススタッフの、他の表現としては、カメムシのニオイ、スイカの皮のニオイ、キュウリのニオイ。そう言えば、ノネナールって「キュウリのニオイ」って意味だったような…何語か忘れましたが。

希釈液を指さしながら「ちっさいおっさんが大量にいる!」と大騒ぎしたスタッフもいて、やっぱり「おっさんのニオイ」というのが、おおかたの意見です。

私には「カメムシ」のニオイというのが一番似合っているような…特に鼻すじの内側が痛くなるような感じが一緒に思えます。

 

またアセトアルデヒドという物質は、アルコールの代謝や喫煙によって体内で発生しますが、これも青臭いニオイです。ノネナールと違って鼻の手前側が刺激される感じ。クシャミをしたくなるような…これと、カルボン酸系の物質が混ざると、青臭くて油臭く感じますが、ノネナールとはちょっと違います。

なかなか口では言い表せないですが。ただ、処方はずいぶん変わってきます。(企業秘密ですので、詳しくは書けません。悪しからず)

脂臭い体臭(世代臭)

同じ「あぶらクサイ」でも「脂臭い」

 

これは原因物質の特定が難しい。基本的にニオイのある脂肪酸系の物質は「脂」なのだから、「脂臭い」ものが多いに決まってます。

 

例えば、酪酸、イソ酪酸、ぺラルゴン酸など。 酪酸、イソ酪酸辺りは、脂臭さの中にモワーっとした銀杏臭さというか靴下臭さがあります。銀杏の臭さの元なのだから、当たり前ですが。

 

ぺラルゴン酸は同じ脂臭さでも、厨房のニオイとか、肉屋の前掛けのようなニオイというか…これは同じ飽和脂肪酸の中でも吉草酸、酪酸、酢酸などと違って、殆ど水に溶けないのが特徴。だから、洗濯の際にはそれなりの処方が必要です。しかもワキガ臭の原因でもあるし、いわゆるミドル臭(マンダムさんが名付けた30代男性特有の臭気)の一因でもある。けっこう厄介です。

 

ボイスシステムでは、厨房のようなニオイがしたら、まずはぺラルゴン酸を疑います。

酸っぱい!!(汗臭)

老弱男女、割と誰でも汗をかいたとき、自分の体臭を「酸っぱいっ!」と感じたことはあるのではないでしょうか?

 

酢酸は、普通に体内で作られるし、特にアルコールを分解するときに作られます。

皮膚の常在菌が作り出す脂肪酸のうちでも比較的簡単に作られるので、馴染み深いニオイです。

閾値も、他の体臭物質に比べ1桁2桁大きいので臭った時には、かなり発生、付着しています。けれど、酢酸だけが酸っぱさの原因ではありません。

 

例えばカプリン酸。これは酸っぱさの中に腐敗臭が混じります。例えばプロピオン酸。これは多少甘酸っぱい感じの腐敗臭。私はゾンビ臭と呼んでます。

ケトン臭も最近話題になっていますが、体外に分泌するケトンであるアセトンも甘酸っぱいニオイです。

それに乳酸。乳酸は筋肉疲労の原因物質と言われ(どうやらそれは間違った情報らしいのですが)色々な飽和脂肪酸の前駆物質ですが、やはり酸っぱいニオイがします。

 

それから酸っぱさの中に焦げ臭さのある刺激臭の場合、プロピオンアルデヒドとか、バレリルアルデヒドと言った原因物質が体内で作り出されている可能性もあります。私たちでさえ、試薬以外ではそうそう出会う事もありませんが。

 

酸っぱい=酢酸という単純なことなら楽で良いですし、処方も固定出来るのですが、そうはいかないのが実情です。

アンモニア臭

アンモニア臭ければ、当然アンモニアが発生しています。体内でも生成されますし、乳酸、汗と一緒に体表にも排出されます。

 

アンモニアの閾値は、他と比べて格段に高くて0.1ppmですから、臭ったら相当発生してます。

 

トリメチルアミンという物質は、濃度が低い時は磯臭いというか、魚の腐ったようなニオイ(私はインスマス臭と呼びます。分かる人だけ分かって頂ければ)ですが、濃度が高い時にはアンモニアに似た臭気(と言うより、刺激感と言う方があっているかも知れません)があります。

 

アンモニアは割と当たり前に検出されるのですが、色々な物質と混ざると隠れてしまったり、刺激感だけが表に出てくるような厄介な物質です。

 

ある時、猫のオシッコのような体臭と巡り合ったとき、私は3‐メルカプト‐3‐メチルブタノールという猫のオシッコのニオイ成分だと疑ったのですが、実は「アンモニア」と「カプリン酸」と「硫黄系物質(そこまでしか突き止められませんでした)」がメインの混合臭でした。

 

また、或るタイプのワキガ臭処理時でのこと。最初に飽和脂肪酸処理をしてみると、アンモニア臭と金属臭だけが残留していたケースがありました。(どんなタイプのワキガ臭かということも、企業秘密です)

 

閾値の高さが関係しているのですが、単一での存在している時や、ニオイの表面に出てくるほどの濃度で存在している時とは違った表情も持っているのがアンモニアです。・・・恐るべし。

チーズ臭い(世代臭)

なんとなくモワっとしたニオイから始まって徐々にチーズのような、古い脂のようなニオイになっていって、そしてあなたが30代男性なら、きっと原因は「ジアセチル」なのでしょう。

というのは、有名な話。

 

ジアセチルは閾値が低くて、ノネナールより1桁下。つまりほんの少しで、ものすごくクサイ。

けれど、チーズ臭さやバター臭さの原因はジアセチルだけではありません。

 

例えば、カプロン酸。まさにバターのニオイ成分ですが、濃くなるとヤギ臭くなる。「カプロン」はヤギという意味です。また、酪酸もチーズのような乳製品のようなニオイにも感じます。

 

私事ですが、私は子供のころパンにバターをタップリ塗って食べると、食後30分後から2時間ほど、胸の辺りからバターのニオイが漂ってきて往生してました。

 

体臭が乳製品臭いという話をよく聞きますが、若い女性や子供も大勢います。これらの人のチーズ臭いとかバター臭い体臭の原因は、ジアセチルではない場合の方が多いです。間違いありません。

雑巾臭い?!ドブのようなニオイ?!(複合臭)

カルボン酸系の飽和脂肪酸のうち、特にカプリル酸、カプリン酸、プロピオン酸は腐敗臭とグルーピングされます。

 

カプリル酸はもろに腐敗臭。カプリン酸はいわゆる部屋干し臭のようなゆるい雑巾臭。プロピオン酸は前述どおり。

 

もちろん腐敗臭と大雑把に分けた場合、様々な物質が混在している可能性が高くて、例えば、口臭の原因物質とされるカダベリン(死体!のニオイと言われている)とか、プトレシン(腐肉!のニオイと言われている)等、窒素系化合物がヒドイニオイを醸し出している場合もあります。

 

基本的に分子式で最後に「N」がつく揮発性化合物は、とりわけ臭いものが多いのですが、これらの臭気に人間が敏感なのは「腐ったものは毒だ」という、生物学的な反応を促すためだと言われています。

 

脂肪酸系のニオイと窒素系のニオイは同じような腐敗臭を感じる場合でも、処方は違ってきます。

Other body odors

スペースも無くなってきましたので、その他のニオイの特徴と、疑われる原因物質をチラッと綴り書きで…

獣臭

先ほどでてきた「ヤギ臭い」に連なるニオイの感じ方。動物園のニオイとか、生理のニオイとか、

血生臭いとかも、同類の原因かも知れません。カプロン酸、酪酸等のカルボン酸系。

 

また、ワキガで同様にヤギ臭かったり、生臭い場合は、3‐メチル‐2‐へキセン酸という飽和脂肪酸

が疑われます。この物質も水に溶けにくい物なので厄介です。

硫黄臭

タマゴの腐ったようなニオイ、温泉クサイ、タケノコ臭い等、いわゆる硫黄臭い体臭は、化学式の

最後に「S」のつく、硫黄系化合物です。

例えば硫化水素。体内で発生して普通は口臭の原因となりますが、汗などと共に、表皮に現れる

場合もあります。

 

ワキガ特有の原因物質でも硫黄臭のものがあります。3‐メチル‐3‐スルファニルヘキサン‐1‐オール、

3‐メルカプト‐3‐メチルへキセン酸等。どちらも化学式の最後に「S」がつきます。

タマネギ臭い

タマネギ臭い、ネギクサイ、腐ったタマネギのニオイ、腐ったキャベツのニオイ。

これらも、最後が「S」の化学式を持つ、硫黄化合物が原因です。

 

ネギ系のニオイは、メチルメルカプタンというチオール類のニオイ。これは特定悪臭物質で、普通は

口臭やおならの成分ですが、体表から漂うこともあります。

メチルメルカプタンの閾値は0.02ppbという、ppmの下の位。。有るか無いかの微量でもクサイ。

 

また、腐ったキャベツ臭は、ジメチルスルフィド。これも口臭原因ですが、あまりお目にかからない

ので、ボイスシステムの通常分析には入りません。

便臭

うんこ臭い、大便臭い、トイレ臭い、蕎麦の花臭い。どのように表現しても、思い浮かぶニオイは皆さん共通だと思います。

 

割と有名ですが、スカトール、インドールという窒素化合物が主な原因。どちらも化学式で言えば炭素数が大きいものなので殆ど水に溶けません。

イソメルカプタンというチオール系硫黄化合物も便臭の原因。

 

そういった臭気成分が体表に現れる場合、内臓の不良が主な原因になります。あまり溜め過ぎると

良からぬ体臭が現れますよ。

靴下がクサイ

足クサイ、蒸れた靴下のニオイ、納豆臭い。

これも皆さん共通で思い浮かぶニオイがあるはずです。

 吉草酸、イソ吉草酸、酪酸、イソ酪酸が原因です。

 

でも皆さん、靴の中だけ、足の指だけしかこのニオイが発生しないと思っいませんか?

 

大間違いです。背中や脇の下、おへそ等からも当たり前のように検出されます。