ロック万歳

  • リトル・フィート: アメイジング!('74)

    当作品の冒頭、コンプレッサーとフェイザーがかかったギターの音が鳴った瞬間から、ぼくは自分がギターを弾けることなんかどうでもよくなって、ただのリスナーになってしまう。間の効いた心地よいリズムに耳をゆだねていると、あっという間にアルバムは終わってしまう。中学生当時、日本広しといえどもリトル・フィートに心底感動している中学生はそういまいと思いながら聴いていたのだから、ませた中学生だったと今さらながらに思う。本物(のロック)を聴きわけるには本物だけを聴き倒すこと。これ大事。

  • TOTO: ターン・バック('81)

    ポップス黄金期の八十年代の音は今も脈々と引き継がれている。その手の中で、TOTOはテクニック系ポップスの音の典型の一つを作り上げたバンド。大ヒットした「アフリカ」を含む次作『Ⅳ』まではロックバンドとしての勢いも十分に感じられて、ぼくにとってはエバーグリーンな音、青春の音だ。ドラムというのは個性がわかりにくいものだけど、独特のハネ感を持つジェフ・ポーカロのドラムをTOTO以外のセッションでも彼のものだと一聴してわかるようになった頃から、ぼくは自分の耳に変に自信を持つようになってしまった。ませた中学生だったと今さらながらに思う。

  • ブルース・スプリングスティーン: マジック('07)

    宣伝文句に「ロック史に残る名盤になること間違いなし」なんてあったけど、そう興奮したくなるのも十分うなずける。スプリングスティーン風ポップさとソリッドな音との融合加減が『ボーン・トゥ・ラン』の音の質感を思い出させる。ロック史に残るのは『ボーン・トゥ・ラン』だろうけど、今後氏の代表作の一枚になることは保証してもよい。自分の音を持っているミュージシャンが、再びその鉄板の音を奏でるこういう復活の仕方は素直にうれしい。

  • レッド・ホット・チリ・ペッパーズ: バイ・ザ・ウェイ('02)

    レッチリはロックとファンクとのミクスチャみたいな言われかたをするけれども、それは、いろんな要素を食らい込んで生き永らえているロックというジャンルがいかに欲張りかという証。ロックはどういう方向に進もうとも、ジャズのような死に方はしない。良くも悪くもロックは「若者」の音楽。レッチリを聴いているとそう思う。全部を聴いているわけじゃないけど、これは彼らのアルバムの中でもロック度が特に高いと見た。

  • ロイ・ブキャナン: ローディング・ゾーン('77)
    彼のギターを聴くとぼくは演歌歌手を思いだす。演歌は嫌いだけど、あのノドを自由にあやつってコブシをきかすさまは、楽器を弾く一人としてうらやましいの一言だ。テレキャスターの音色をここまで使いこなし、歌わせる人はなかなかいない。エリック・クラプトンやジェフ・ベックが尊敬するギタリストに彼の名前をあげたことで、「最も有名な無名ギタリスト」と呼ばれたけども、彼らがほれるのもムベなるかな。ぼくもソロに熱中すると、情念だけはロイ・ブキャナンなんてことがしばしば。かげの心の師。
  • エアロ・スミス: ドロー・ザ・ライン('77)
    見た目が「こいつら絶対に不良」。兄が中学生の時、このアルバムをレコード屋で買うのを後ろで見て、「お兄ちゃん、不良になった」と小学生だったぼくは小さな胸を痛めたものだ。前作の『ロックス』のほうがエアロの代表作に上げられるのが普通だけど(異議なし)、荒削りに仕上げたモノラル録音の当アルバムタイトル曲が、「理由なき反抗」なロック気分を盛り上げてくれて最高。ツェッペリンの流れで聴くのではなく、ストーンズの流れで聴くと彼らのカッコよさがなお一層よくわかる。
  • オールマン・ブラザーズ・バンド : フィルモア・イースト・ライブ('71)
    当バンドの看板ギタリスト、デュアン・オールマン。そんな彼がバイク事故で死んだのは24才の時。めちゃめちゃフケ顔なのに24才…。「不良な音」のほうでなく、「男気な音」のほうのロック・ギターの雄である。ライブ盤である当アルバムでの長尺の演奏は、単にカッコイイというだけでなく、「音楽は自由なんだ」ということを感じさせてくれる。彼がもし70年代を生きていたら、クラプトンと作ったに違いない、もう何枚かの『レイラ』級作品をここで紹介していただろうに。
  • レッド・ツェペリン: プレゼンス ('76)
    当コーナー「ロック万歳」の真打ち登場! これを聴かずしてこのコーナーを読むなかれ、と今さらながら言ってしまおう。もちろんツェッペリンは他のアルバムでもいいんだけど、「ハードロック」を完成させ、いまだに超えられることのない、そして今後ともまず超えられることのない当アルバムをいち押しとしたい。わずか三週間で録音されたという鬼気迫る音でロックを味わっていただきたい。
  • イーグルス: ホテル・カリフォルニア ('76)
    有無を言わせぬ大名盤。けど僕は、一曲目に収められた超有名なタイトル曲は、アルバムから浮いているのではないかとひそかに思っている。要は、曲ができすぎていて、一曲聴いただけでアルバム一枚分の疲労感があるのだ。だから、あえて二曲目から聴くなんてことも時々ある。で、一曲目に戻って、そのまま結局もう一回。彼らの代表作というだけでなく、アメリカン・ロックの代表作の一枚でもある。
  • 古謝美佐子: 天架ける橋 ('01)
    沖縄音楽に特別の思い入れがあるわけではないけれど、彼女の声はなぜだか僕の心の琴線に直接触れる。音楽を聴いて涙を流すことのほとんどない僕だが、当アルバム収録の「童神(ワラビガミ)」を聴いて、知らぬうちに涙が出てきたことが何度もある。人間国宝に指定したい。
  • ダイアー・ストレイツ: ブラザーズ・イン・アームス ('85)
    ボブ・ディランの歌とクラプトンのギターを足して三で割ったようなマーク・ノップラーが率いる当バンド(三で割ったのは割る相手が偉大すぎるからですよ)。当アルバムは、大ヒットした「マネー・フォー・ナッシング」以外も秀曲ぞろいで、かつ録音もしっかりしている。再生機器の音質チェック用にもぜひ!
  • ポール・マッカートニー: カオス・アンド・クリエイション・イン・ザ・バックヤード ('05)
    このコーナーは「一ミュージシャン一枚」と勝手にシバリをかけていたんで、どうしようかと思っていたけど、これだけはもう我慢ならぬ。まだ「新譜」のうちに紹介しときます。これ、いいです。『レット・イット・ビー・ネイキッド』を作って、自分で自分に触発されたのか、とてもシンプルな音作りで、彼の歌の良さが素で伝わってくる。ものすごくいい年のとりかたをしている。長生きしてね、ポールさん。
  • ブラインドメロン: ブラインドメロン ('92)
    ガンズ・アンド・ローゼスのアクセル・ローズの肝いりでデビュー。ガンズよりはアコースティックな感じで、ちょっと英国風味が入っている。歪みすぎていない二本のギターは役割分担があいまいな感じで、その絡み合いかたはなんともいえずロック度が高い。音の持つ質感から、90年代のハンブル・パイになることを期待していたのだが、ボーカルが95年に急死してバンドはあえなく解散。しゅんっ…。
  • 矢野顕子: スーパー・フォーク・ソング ('92)
    他人の曲をピアノで弾き語り。ピアノのキーを叩く音や息遣いまで聴こえてくる録音は、音のむこうの静寂さまでをも感じさせる。原曲を知らない曲も多いが、知っている曲から思うに、ここに収められた曲は完全に「矢野顕子の曲」に生まれ変わっている。すべてを「名曲」にした彼女の才能に脱帽だ。「サムデイ」は何度聴いてもせつなくなる。
  • U2: ヨシュアン・ツリー ('87)
    ロック不毛の80年代、革新的な音作りでその分野を引っ張り続けた数少ないバンド、U2。当アルバムでその地位を完全に確立した。ディレイを駆使したギターサウンドも彼らだけが今もって古くならない。それは彼らがオリジナルだというだけでなく、かっこいいボーカルと素直なメロディーというのが、「最新の音」を「当時の音」にしてしまうことなく、いつまでも普遍的なものとして響かせる秘密なんだろうと思う。
  • 真島昌利: ロウ・ライフ ('92)
    僕はこれを聴いて、それまでの「なんとなくあやふやに生きてきたこと」に別れを告げて、決意をもってあやふやに生きることにしました。僕にとって、「生き方としてのロック」を決定づけられた罪作りな一枚。発売当時のインタビューで「気分は学生運動だ」みたいなことを言っていたように記憶するが、バブル経済を経験した者の虚無感に裏打ちされた切れっぷりがすごい。それを表現するには「ロック」という方法が必要だったのだ。
  • ブルーハーツ: スティック・アウト/ダグ・アウト ('93)
    僕はブルーハーツのファンになってから、「ロックがまだ洋楽だった頃…」という言い回しをするようになった。フォークのメロディを歪んだギターで表現することに日本で初めて成功させた彼らを見て、フォークがいかに日本に根付いたものだったかを僕はあらためて認識したものだ。事実上の二枚組だけど半年の間を置いて出されたこの二枚、こんなリリースの仕方が本当に似合うのは日本ではまだブルーハーツだけだよね。
  • オアシス: ビー・ヒア・ナウ ('97)
    今のところロックでは最後の大物バンドか。このバンドの成功を見るにつけ、ロックといえども結局はメロディーと声のよさがそのバンドの評価を決定づけるということなんだろう。「ロックに難しいテクニックはいらない、俺たちみたいに才能さえあればいいんだ」とでも言いかねないボーカルの生意気さもカッコイイ。当作品は鼻歌でメロディーが歌える曲が特に多くていい。
  • ボブ・ディラン: 追憶のハイウェイ61 ('65)
    ロック好きなら「ボブ・ディランしか聴いてない時期」というのをきっと一度は通るものだ。いわゆる「うまい歌」からは遠く離れた歌い方なのに、なんだこの磁力は! 曲自体も、他人がカバーするのを聴くとめちゃめちゃいい曲だということを改めて思い知り、ほとほと感心する。このアルバムだけで三週間は過ごせる。フォークの神様をロックが包摂していく瞬間をこのアルバムで感じとろう。
  • ロバート・ナイトホーク: ライブ・オン・マックスウェル・ストリート 1964 ('80)
    道端での演奏を録音した当アルバム。通りすがりに聴きいる人たちのざわめきまで聞こえてきて、あたかも当時のシカゴにいるかのようだ。彼のスライドギターは文字通り歌っている。その情念の音は、ブルース界で三本の指に入ると断言しよう。けどそんな彼も道端で演奏して小遣い稼ぎをしていたというんだから、いやはやなんとも…。
  • XTC: オレンジズ・アンド・レモンズ ('89)
    ポップソングオタクの至極のポップアルバム。ブライアンウィルソンにも通じるポップスへの偏愛がにじみ出る。当アルバムは、XTCとしては売れに売れたけども、一般的にはそんなにめちゃめちゃ売れたわけでないのが、またオタク的でよろしい。いい作品にはそんなこと全然関係ないもんね。
  • ブルース・スプリングスティーン: ボーン・イン・ザ・USA ('84)
    この人は詩も書けるしロックもできるからミュージシャンをしているけど、普通の労働者ならきっと労働運動の先頭に立って頑張っていたことでしょう。「ボーン・イン・ザ・USA」を題名から単なる愛国曲に誤解する人もいるようだけど、どうしようもない国だけどそこに生まれ落ちたからには仕方ないだろう、みたいなスタンス、僕にはとても共感できるところがある。
  • シンディ・ローパー: ザ・ボディ・アコースティック ('05)
    彼女のヒット曲のセルフカバー集。タイトル通り、アコースティックな感じに仕上げてあって、オリジナルのようにポップポップしているわけではないが、それによってかえって彼女の歌唱力や表現力が第一線級だということを再認識させられる。本人はセルフカバーを作る気はあんまりなかったらしいけど、それでもこんなアルバムが作れるのは「実力」というべきか。
  • エリック・クラプトン: 安息の地を求めて ('75)
    60年代にはレスポールとマーシャルというギター/アンプの黄金の組み合わせを提示し、70年代初頭にはレゲエをポップチャートに初めて送りこみ、90年代前後からはアンプラグドブームからブルースブームへの流れを作り上げてきたエリック・クラプトン。「ギターの神様」というだけでなく、ロックへの息の長い貢献を見ればそんじょそこらのミュージシャンとは格が違うというもんだ。70年代のクラプトンはアル中がひどくてステージの記憶とかがあんまりないらしいが、個人的には、レイドバックしているそんな70年代のクラ様が、一番好き。
  • フー: フーズ・ネクスト ('71)
    ザ・フーは、日本ではもうひとつの人気だけど、当地英国では絶大な影響力を持つ。メンバー4人の才能が「×4」ではない、それ以上の力になった、バンドがバンドたるゆえんを持ったバンドだ。このアルバムを通して存在する「緊張感」は、当時の英国の若者の緊張感の表れなんではないかと思う。映画『さらば青春の光』を見るとさらにそれを確信する。時代を音で表現したバンドであればこその評価なんだろう。
  • 佐野元春: タイム・アウト! ('90)
    えもいわれぬ疾走感が持ち味の彼だが、このアルバムは、一曲目が象徴するように、そんないつもの彼とは違ったしっとりした生っぽさがいい感じ。彼の「カッコつけしい」には賛否がありましょうが、プロレスの武藤敬司と同様の日本人離れしたかっこよさがある、よね。
  • マドンナ: トゥルー・ブルー ('86)
    マドンナを買うなら素直にベストアルバムを買えばいいんだけど、いいアルバムは何?と聞かれるならこれだろう。単なるポップスターというだけでなくアルバム作りもしっかりやるミュージシャンなんだ、と思える。まあ、「そう思わせるところまで含めてセルフプロデュースがうまい」と言われれば返す言葉もございませんが…。
  • ザ・バンド: 南十字星 ('75)
    耳に心地よく響く音楽というのは簡単そうにみえても、その実、突き抜けたところまで行ける人は少ない。ボブ・ディランのバックを一時期つとめたりして、「米国音楽の良心」のように言われることもあるけど、メンバー5人中4人がカナダ人というのはなんだかいい話。ホントの真実にそんなことは関係ない。「ザ・バンド」などというある意味傲慢なバンド名も、こんなアルバムを作ってしまえば文句もなかろう。
  • カルト: エレクトリック ('87)
    「いかにもハードロック!」な曲が目白押しの当アルバム。70年代がめちゃくちゃ好きなあんちゃん達が十年遅れてハードロックのアルバムを作りました、という感じがして、70年代を後追いで聴いてきた僕にはとても共感が持てる。学校に「ハードロック」という時間割があれば、有名アルバムなんかよりもかえってこれを教科書に推薦してもよかろうかと。
  • フレッド・マクダウェル: ファースト・レコーディングス ('59)
    この録音までこの人は「発見」されなかったんで、戦前ブルースがそのまま残されていたかのようなおもむき。スライドギター一本でここまで躍らせるリズムは強力の一言。自宅での簡易なフィールド録音なのに、ギターが強調された録音も秀逸。ホームパーティーでこんなギターを弾かれたら集まった友達そっちのけでかぶりついて聴いてしまうよなあ。
  • ライ・クーダー: パラダイス・ランチ ('74)
    彼自身が趣味で発掘してきた色んなマイナーな音楽も彼の手にかかると「ライ・クーダー節」になってよみがえる(あまり作曲をしないというのも演奏家としていさぎよい)。当アルバムはそんな彼の作品の中でも、特に「アコースティックギターが似合う米国音楽の探求」という味わい(彼の場合、基本的にそうなんだけど)。
  • レニー・クラビッツ: レット・ラブ・ルール ('89)
    いろんな楽器をこなすマルチプレーヤーにして、アナログ機材オタクにして、ロックオタクにして・・な彼の魅力は、ロック不毛の80年代を打ち破るように出てきたこのデビューアルバムにもっとも出ていると思われる。彼の声ってエルビス・コステロに似てないか?
  • フェイセズ: ウーララ ('73)
    バンド内の不和が表面化してきた頃だからなのか、少し散漫とした印象があるが、かえって力の抜け方がうまく作用して、メンバーの「ゆるいもの好き」な側面の魅力をヨリ引き出している。代表作によくあがる『馬の耳に念仏』と比べて、繰り返し聴いても変な疲れ方をしない。
  • クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル: コスモズ・ファクトリー ('70)
    往年の米国の白人労働者のスター(だったらしい)、CCR。確かに「男くさい」。CCRを聴くときは二枚組のベストアルバムを聴くことが多いけど、ベストには入ってない当CDの一曲目七分の長曲「ランブル・タンブル」を聴くためにこれもよく聴く。そのまま最後まで聴いても「ベスト」みたいなものだし。
  • ピンク・フロイド: あなたがここにいて欲しい ('75)
    ピンク・フロイドはプログレッシブロックの中で一番のギターバンドだ。これの前後作『狂気』『アニマルズ』とともに三部作的評価をされているが、その中でも一番ギターアルバムといえるのが当作品。ストラトキャスターの使い手、デビッド・ギルモアのギターに酔いしれよう。
  • 桑田佳祐: 孤独の太陽 ('94)
    サザンの『世に万葉の花が咲くなり』内の今風ボブディランを気取った「ニッポンのヒール」。その曲を延長・拡大したような曲でかためた当アルバム。「音楽は歌詞が大切なんじゃない、音なんだ」と頑固に思う洋楽育ちの僕でも、「日本語の歌ってやっぱり歌詞も大切なんだなあ」とつくづく思わされた。ここで歌われていることは当時より一層深刻化しつつある。
  • ウイングス: バック・トゥ・ジ・エッグ ('79)
    ポール・マッカートニーが「ロックな音作り」をしたアルバムとしては(今のところ)最後のアルバム。ポールは、70年代のアルバム作りで『サージェントペパーズ』や『アビーロード』を常に意識したに違いないが、このアルバムもまた両者をかなり意識したと思う。ポールの新作が出るたびにいつも「『バック・トゥ~』をもう一度!」と期待してしまう。
  • ハンブル・パイ: スモーキン ('72)
    相談があるんです。それは、ギターを弾くとロックになってしまうんです、どんな曲をやってもロックになってしまうんです、声までもが何を歌ってもロックになってしまうんです・・・。って、ハンブル・パイとはそんなバンド。男惚れするようなかっこよさがこのバンドにはある。
  • ジャクソン・ブラウン: 孤独なランナー ('77)
    当作品は前二作とともに三部作的な音のまとまりがある。即ちどれもがお薦めということになるが、擬似ツアー風の構成の当作品が一番バラエティに富んでいる。米国西海岸ロックの美しいハーモニーを聴きたければ彼とイーグルスをどうぞ。
  • ブルース・ブラザーズ: オリジナル・サウンド・トラック ('80)
    とても芸達者な二人、その歌唱力はとても映画俳優とは思えない。バックの面々も半端でない。さすが米国。映画の面白さはいうまでもないけど、当アルバムは、単なるサントラとは違って単体としても十分に素晴らしい出来だ。観てから聴くもよし、聴いてから観るもよし。
  • ピーター・ガブリエル: ソー ('86)
    圧倒的な音圧感と文句なしの楽曲。穴が見当たらない。発表当時はビデオも評判になったが、80年代音楽の金字塔の一つといっても過言じゃない。音がいいので音楽機材のチェックによく使うけど、「音」より「音楽」を聴いてしまって、チェックになってないことがしばしばある。
  • エルビス・コステロ: ゲット・ハッピー ('79)
    彼のポップセンスがギュウギュウに押し詰められたアルバム。バックバンド、アトラクションズのベーシスト、ブルース・トーマスの過剰なべースラインもかなり偏執的で病みつきになるかも。でもコステロって、メロディーがいいとかなんだかんだといっても、トドノツマリは声がいいのね、声が。
  • ジョニー・ウインター: 狂乱のライブ ('76)
    ギター一本で舞台をこなせるブルース馬鹿が、スタイルはそのままに大音量でバンドをやるとどうなるか? その質問に満点以上の答えを出したような当作品。フレーズの隙間を埋め尽くす怒涛のギター、ギター、ギター。おかげで、ブルースを弾いてもまごうかたないロックに生まれ変わってしまった。こんなライブを目の前で見たら、わたくし、きっとその日をもってギターをやめます(三日間ほど)。
  • はっぴいえんど: 風街ろまん ('71)
    日本のロックって楽曲はいいとしても、どうしても音質がショボくてずーっと聴けなかった。ところが「勉強」のつもりでこれを初めて聴いた時には、そのちゃんとした70年代の音に「やればできるんだね、やっぱり」と思ったものだ。のちのち日本の音楽シーンを支えていく人達の集まりとはいえ、そういうことも才能のうちなんだと実感。
  • セックス・ピストルズ: 勝手にしやがれ ('77)
    発表当時現役で聴いた人の話によれば、当時は「雑音」にしか聞こえなかったそうだけど、僕が聴いた80年代にはもう「めちゃくちゃかっこいいロック」だった。「歪んだギターをデカイ音で弾きたい」という衝動の受け皿になり続ける限りロックは不滅だ。そのことをロックに思い出させたパンクの功績は大きい。
  • フリー: ライブ! ('71)
    「モタる一歩手前」のドラムから一生懸命逃れようとベースは前へ前へと走ろうとするものの、またドラムに引きずり戻される。そんな暗闘ともいえるリズム体の駆け引きの上に、黒くなりきれない情念のギターと天才ボーカルが乗っかる。二十歳そこそこでこの円熟さにしてこの重さ、70年代英国ロックは異常だ。
  • マディ・ウォーターズ: ハードアゲイン ('77)
    ブルースは、なじみのない人にとっては、音楽そのものよりも、古すぎたりするショボい音質になじめないかもしれない。その点、ジョニー・ウインターがプロデューサの当アルバムは、「70年代の音」で本物のシカゴブルースがこれでもかこれでもかと堪能できる。
  • ナック: ゲット・ザ・ナック ('79)
    「マイシャローナ」でしか知られてないけど、当曲を含むこのデビューアルバムは確かな演奏力に裏打ちされた楽曲揃いで、キャッチーなロックンロールのある種の完成形といってもいいだろう。このバンド、英国のバンドだったらステータス・クオーみたいな息の長い国民バンドになれたかもしれんなあ。
  • ローリングストーンズ: レット・イット・ブリード ('69)
    一番「不良っぽい」ストーンズの音はこれだと思う。歪んだ音のギターを弾けばロックになった時代、「ロックは不良」「エレキは不良」と感づいた世の大人たちの感性は正しかったのだ。
  • ビートルズ: レット・イット・ビー・・・ネイキッド ('03)
    これまでビートルズを聴き倒してきた耳にはオリジナルの「レットイットビー」のほうにどうしても愛着をもってしまうけど、これからビートルズを聴く人にはホントの意味での「オリジナル」のこっちを聴き倒すほうがいいと思う。というか、それって少しうらやましい。
  • アーロン・ネヴィル: ウォーム・ユア・ハート ('91)
    顔はヤクザでも声は天界から届いたかのよう。特別なあのコと特別な夜を過ごしたい時には、このCDと、別に発表しているクリスマスソング集とで一気に落とそう。
  • ジョン・ハイアット: ブリング・ザ・ファミリー ('87)
    ライ・クーダー、ジム・ケルトナー、ニック・ロウとたったの四日間で録音。奇跡の四日間だ。のちにこの四人で「リトル・ビレッジ」を結成するけど、こっちのほうが心に染み入る出来あがり。
  • リトルフィート: ディキシー・チキン ('73)
    楽器がうまくないとこの心地よさは無理だろうなあ。楽器のうまい人たちが、技術でなく、心地いい音楽を追求するとこうなる。サザンロック万歳。
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