糖質制限ダイエットで低血糖症が起こらない理由:糖新生のメカニズム
健康的にダイエットするためには、糖質の摂取量を制限することが欠かせません。過剰な糖質は体に脂肪を蓄積しやすくするだけではなく、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞など、さまざまな疾病につながる可能性があるためです。
ただ糖質制限を行うに当たって、多くの人が心配することの一つとして「低血糖症」が挙げられます。「食事からの糖質摂取を制限するため、血糖値が下がりすぎるのではないか?」と考えるのです。
しかし実際には、食事からの糖質摂取量を制限しても低血糖症になることはありません。体には、最低限必要な血糖値を維持するような「糖新生」と呼ばれる体内でブドウ糖を作り出す仕組みが備わっているためです。糖新生が適切に働いていれば、食事からの糖質を制限しても血糖値はコントロールされます。
もちろん、糖新生によるブドウ糖産生が上手くいかない人も存在します。そのため、糖質制限ダイエットで成功するためには、糖新生のメカニズムについて理解した上で、あなた自身の体にあった糖質制限を実施することが重要です。
そこで今回は、「糖質制限ダイエットで低血糖症が起こらない理由:糖新生のメカニズム」について解説します。
今回のまとめ
・糖質制限をしても、糖新生によって低血糖は起こらない
・タンパク質、脂肪酸、乳酸を原料として糖新生が起こる
・脂肪(脂質代謝)からは糖(糖代謝)とは比べ物にならない数のエネルギーが生み出される
・脳と赤血球のエネルギー供給のために糖代謝は必要不可欠である
・「脂質代謝が悪い」「成長ホルモンの分泌が少ない」「体脂肪率が低い(4%以下)」という状態で糖質制限やファスティングを実施すると筋肉が痩せる可能性が高い
・糖質制限やファスティング時は、糖新生による糖代謝と脂質代謝の両方が欠かせない
・肝臓トラブルや副腎疲労症候群がある人は、糖質制限やファスティング時の低血糖に注意しなければいけない
低血糖症とは
低血糖症とは、字の通り「血液中の糖質量を示す血糖値が低下した状態」をいいます。
血液中の糖分は、筋肉や内臓、脳など体の細胞を活動させるために欠かせないエネルギー源です。体のエネルギー源としては、糖質(ブドウ糖)以外にも脂肪(脂肪酸)を利用できます。そのため、基本的には糖質がなくても体がエネルギー不足を引き起こすことはありません。
ただ、細胞の中でも「赤血球」「脳」はブドウ糖にエネルギー源を依存しているため、低血糖症になると問題が生じるのです。
低血糖症で影響を受ける組織
赤血球は、エネルギー供給の100パーセントをブドウ糖に依存しています。
また脳もブドウ糖からのエネルギー供給が必要不可欠な組織として知られています。しかし、脳は赤血球と違ってブドウ糖以外にも、脂肪酸から合成される「ケトン体」と呼ばれる物質をエネルギー源として利用できるのです。
通常では、脳のエネルギー源としてはブドウ糖の方が優位に使われています。その一方で糖質制限ダイエットなどによって糖質の摂取量を制限した場合には、ブドウ糖よりもケトン体が脳のエネルギー源として利用されるようになるのです。
ただ、脳におけるエネルギー源の一部がブドウ糖に依存していることには変わりありません。
低血糖症になると出現する症状
赤血球細胞には、全身に酸素を運ぶという重要な役割があります。全身の細胞は、酸素が存在して初めてエネルギーを作り出すことができます。そのため、低血糖症によって赤血球細胞が正常に活動しなくなると、全身の細胞にエネルギー不足が生じて、さまざまなトラブルが出現することになるのです。
例えば、低血糖症で赤血球の働きが悪くなると、手足が冷えやフラつきいった、いわゆる貧血の症状が出現します。
また既に述べたように、脳はエネルギー源の一部をブドウ糖に依存しているため、脳もエネルギー不足の状態となり問題が起こります。具体的には、眠気が襲ってきたり、頭がボーっとしたりするのです。
さらに低血糖状態になると、下がり過ぎた血糖値を元に戻すために血糖値を上昇させる作用がある「アドレナリン」「ノルアドレナリン」と呼ばれるホルモン(カテコールアミン)が分泌されます。
これらのホルモンには、脳内にある感情的興奮を引き起こす「大脳辺縁系」を刺激しする作用があります。そのため、低血糖症でカテコールアミンが分泌されると、感情コントロールが障害されてしまい、精神的な不安定性を引き起こすことになるのです。
また、カテコールアミンには「自律神経」のバランスを崩す作用があります。自律神経に問題が生じると、高血圧や胃潰瘍、便秘など、さまざまな病気を引き起こしやすくなるのです。
このように低血糖症になると、さまざまな身体的・精神的トラブルが起こる可能性があることを理解しておきましょう。
糖質制限をしても低血糖にならない理由
糖質制限に対する批判の一つとして「低血糖」が挙げられます。「食品から糖分を摂らないため、血糖値(血液中の糖分量)が下がってしまう」と考えられるのです。
確かに、血液中の糖分量が食事で維持されているのであれば、糖質制限をすると低血糖状態になります。しかし実際には、血糖値は食事から摂る糖分ではなく、体内の「糖新生」と呼ばれる仕組みによって維持されています。
つまり、血糖値の維持は食事に依存していないのです。
糖新生とは
糖新生とは、簡単にいうと「タンパク質や脂質、乳酸といった物質からブドウ糖(血糖)を作り出す仕組み」です。人間の体には、食事で糖分を摂らなくても、タンパク質や脂質といった栄養素から糖を産出するメカニズムが備わっています。
糖質制限やファスティング(断食)を実施しているときには、こうした糖新生によって血糖値が維持されるのです。
糖新生には、先に述べたような主に「タンパク質」「脂質」「乳酸」という3つの物質から糖を作り出すメカニズムがあります。
タンパク質から糖を作るメカニズム
糖質制限時には、タンパク質(筋肉)を分解して糖を作る糖新生が主となって血糖値が維持されます。
筋肉内では、ブドウ糖(もしくはグリコーゲン)からエネルギーを作り出す過程で「ピルビン酸」という物質が作られます。このピルビン酸と筋肉を分解して産出された「アミノ基(NH2)」が反応することで、「アラニン」という物質が生み出されます。
筋肉内で作られたアラニンは、血液を介して肝臓に送られます。
そして、肝臓内でアラニンは筋肉内で起こった反応と逆の反応によってピルビン酸を算出し、ピルビン酸からブドウ糖を作り出すのです。
こうした「ピルビン酸 + アミノ基 ⇔ アラニン」の反応を「アミノ基転移反応」といいます。
ちなみに、アミノ基転移反応には「ALT(GPT)」「AST(GOT)」が欠かせません。ALTとASTが合成されて適切に働くためには、「ビタミンB6」が必要です。そしてビタミンB6不足は、血液検査において特にALTの低値として現れます。
そのため、血液検査でALTの低値が認められた人は、ビタミンB不足でタンパク質から糖を作り出すメカニズム(グルコース‐アラニン回路)が上手く働かない可能性が高いといえます。
また先に述べたように、グルコース-アラニン回路による糖新生は、血糖値を維持するためのメインシステムです。
そのため、ビタミンB群不足になると低血糖状態に陥りやすくなります。
このように、糖質制限時には主にグルコースアラニン回路によって血糖値が維持されていることを理解しておきましょう。
脂肪から糖を作るメカニズム
タンパク質と同じように、脂肪を原料とした糖新生システムも存在しています。
体に蓄積されている脂肪(中性脂肪)は、分解されると「脂肪酸」「グリセロール」に分けられます。
このうち、脂肪酸は全身の細胞でブドウ糖と同じようにエネルギー源となります。その一方で、グリセロールは肝臓に送られてブドウ糖を作る材料として使われます。つまり、中性脂肪を分解して生み出されたグリセロールを元に糖新生が行われるのです。
また既に述べたように、脳は脂肪酸からエネルギーを作り出すことができません。
ただ、脂肪酸から合成されるケトン体はエネルギー源として利用できます。そのため、脂肪酸の一部は肝臓に送られて、脳のエネルギー源となり得るケトン体に変換されるのです
このように、体に蓄積された脂肪(中性脂肪)を利用した糖新生も存在します。
乳酸から糖を作るメカニズム
先に述べたように、ブドウ糖(グリコーゲン)を原料として筋肉内でエネルギーを産生するとピルビン酸が産出されます。ピルビン酸は、グルコース-アラニン回路に利用されたり、そのまま血液を介して肝臓に送られたりして、糖新生に利用されます。
ただ激しい筋トレや短距離走など、いわゆる「無酸素運動」を実施しているときには、ピルビン酸の多くは「乳酸」と呼ばれる代謝産物に変換されるのです。
一般的に知られているように、乳酸は筋肉に蓄積されると筋肉疲労などの悪影響を及ぼします。
そのため体内には、乳酸が溜まらないように、乳酸を肝臓に送って再利用することでブドウ糖を作り出すメカニズムが存在しているのです。こうした糖新生の回路を「コリ回路」といいます。
コリ回路が正常であれば、筋肉内に乳酸が蓄積されることはありません。ただ、コリ回路における「ピルビン酸 ⇔ 乳酸」という反応には、「LDH(乳酸脱水素酵素)」と呼ばれる物質が必要不可欠です。
そのため、体内でLDHが不足してしまうと、コリ回路が上手く働かなくなって、乳酸が再利用されにくくなります。
LDHは血液検査によって調べることができます。つまり、血液検査によってLDHの低値が認められる場合、乳酸が筋肉内に蓄積されやすくなるのです。
このように、激しい運動や長時間の運動によって乳酸の産出が多くなると、コリ回路による糖新生が活発に起こるようになります。
糖質制限に糖新生と脂質代謝が欠かせない理由
ここまで述べたように、ブドウ糖(血糖)はタンパク質や脂肪を元にして体内で産生されるため、食事からの糖質摂取量を制限しても基本的に低血糖状態にはなりません。
ただ逆にいうと、糖新生が上手く起こっていない人は、厳格な糖質制限(もしくはファスティング)を実施すると低血糖に陥る可能性があるのです。
また、糖質制限を行うためには、糖新生だけでなく「脂質代謝」も重要になります。結論からいうと、糖質制限やファスティングを成功させるためには、糖新生と脂質代謝が適切に働いていることが必要不可欠なのです。
脂質代謝とは
脂質代謝とは、簡単にいうと「脂肪を元にエネルギーを作り出す過程」のことです。エネルギーは、主に「糖」「脂肪酸」「ケトン体」の3つから作られます。脂質代謝とは、このうちの脂肪酸とケトン体からエネルギーを生み出すメカニズムです。
脂質代謝は、いわゆる「好気的代謝」と呼ばれる細胞内の「ミトコンドリア」という器官内でのみ起こるエネルギー産生過程になります。その一方で、糖を使ったエネルギー産生(糖代謝)はミトコンドリア外における「嫌気性代謝」とミトコンドリア内における「好気的代謝」の両方が関与しているのです。
通常、これらの3つのエネルギー産生経路がバランスを取ることで、各細胞にエネルギーを供給しています。
そして、条件によってどのエネルギー産生回路が優位に働くかは異なります。
例えば、糖質が多い食事をすれば、以下のように糖代謝が優位になって脂質代謝は悪くなります。
その他にも、糖質やタンパク質の摂取によって「インスリン」と呼ばれるホルモンが体内で分泌されると、脂肪酸がミトコンドリア内に入るのが妨げられます。その結果、脂質代謝が起こりにくくなるため、糖代謝が優位になります。
その一方で、糖質制限やファスティングなどを行い食事から摂取する糖が少なくなって血液中の脂肪(遊離脂肪酸)が増えると、以下のように脂質代謝が促されるのです。
以上のように人間の体内では、複数のエネルギー産生システムによって臨機応変にエネルギーが供給されています。
糖代謝と脂質代謝によるエネルギー産出量の違い
ここまで述べたように、私たちが体を動かすためのエネルギーは主に「糖代謝」「脂質代謝」の2つ(エネルギー源は3つ)によって生み出されています。ただ、糖代謝と脂質代謝では算出されるエネルギー量が大きく異なるのです。
例えば、仮に糖代謝だけからエネルギーを作ったとすると、ブドウ糖1つから38つの「ATP」と呼ばれるエネルギー物質が算出されます。
しかも、これはエネルギー産生経路である「ブドウ糖 → ピルビン酸 → アセチルCoA → TCA回路 → 呼吸鎖(電子伝達系)」という反応が滞りなく起こった場合に作られるエネルギー量です。
実際には、「ピルビン酸 → アセチルCoA」という反応が起こらないときもありますし、TCA回路におけるエネルギー産生量が少ない場合もあります。
こうした条件によるエネルギー産生量の違いを考慮しても、脂質代謝は糖代謝とは比べ物にならないくらいのエネルギー(ATP)を生み出すのです。
例えば、脂肪の一種である「パルチミン酸」であれば、1つのパルチミン酸から129個のATPが算出されます。もちろん、これも全て滞りなく脂質代謝が起こったと仮定した場合ですが、それでも糖代謝とは生み出されるATPの数に雲泥の差があることは理解できるはずです。
糖代謝と脂質代謝では生み出すことができるエネルギー量には、これほど違いがあることを認識しておきましょう。
脂質代謝だけでは不十分である組織
脂質代謝におけるエネルギー産生量を知ると、「脂質代謝が良くて脂肪からエネルギーを作り出せれば、糖によるエネルギー産生は必要ないのでは?」という疑問をもつかもしれません。
確かに、最大で38ATPしか産出できない糖よりも、その何倍ものATPを生み出せる脂肪からエネルギーを十分に作り出すことができれば、エネルギー源として糖は必要ないように思えます。
しかし実際には、どれだけ脂質の代謝が良くて脂肪から大量のエネルギーを作り出せても、生命を維持するためには糖代謝が欠かせないのです。
先に述べたように、脳と赤血球には糖からのエネルギー供給が必要不可欠であるためです。
脳と赤血球は、筋肉などとは違って脂肪からエネルギーを産出できません。脳内には脂肪が入れませんし、赤血球には脂質代謝の場であるミトコンドリアが存在しないため、脂肪酸を元にエネルギーを生み出せないのです。
ただ、脳は脂肪酸から作られるケトン体であればエネルギー源として利用できます。
具体的には、脳のエネルギー産生は全体の70パーセント程度はケトン体に頼ることが可能です。そうはいっても、全体の30パーセント程度は、糖からエネルギーを作り出す必要があります。
つまり、「赤血球は100パーセント、脳は30パーセントのエネルギー産生をブドウ糖に依存している」ということです。
このように体内には、赤血球と脳という脂質代謝だけではエネルギーを得られない組織が存在します。そのため、生命を維持するためには、脂質代謝だけでは不十分なのです。
糖質制限時におけるエネルギー供給システムの変化
糖質制限やファスティングなどを実施すると、食事から糖を摂取しなくなります。このときに、赤血球と脳に必要なブドウ糖を作り出す仕組みが、先に述べた糖新生です。
いってしまえば、糖新生は「食べ物が得られないときでも赤血球と脳がエネルギー不足にならないために備わっているメカニズム」だといえます。
それでは、糖質制限を始めた後、エネルギー代謝はどのように変移していくのでしょうか。
ここからは、糖質摂取量を減らした後における、エネルギー産生システムの変化について解説します。
既に述べたように、ご飯やパンといった主食を食べるといった通常の食事をしていると、寝ているとき以外は糖代謝によって主にエネルギーが作られることになります。
ここから糖質制限やファスティングを実施すると、食事からの糖分摂取がなくなります。そうなると、初めは肝臓に蓄積されていた「グリコーゲン」を分解することでブドウ糖を作り出して血糖値を維持します。
ただ、グリコーゲンは数時間で枯渇してしまうため、長くても数日でブドウ糖の供給が途絶えてしまいます。ここで、糖新生によってブドウ糖が作られるようになるのです。
糖新生によって、脳と赤血球には十分なブドウ糖が供給されます。しかし、このときに筋肉といった他の組織もブドウ糖からエネルギーを作り出そうとすると大変です。
既に述べたように、糖新生は主に脳と赤血球に必要なブドウ糖を供給するための仕組みになります。いってしまえば、筋肉など他の組織が使えるほど余分な糖分を作り出す余裕はないのです。
もし仮に、糖質制限やファスティング時に、筋肉などもブドウ糖からエネルギーを産出しようとした場合、糖新生によってさらにブドウ糖を産生しなければいけなくなります。
既に述べたように、糖新生のメインはタンパク質の分解によるグルコース-アラニン回路です。
通常、グルコース-アラニン回路のために起こる筋肉の分解程度で筋肉量が減ることはありません。筋肉が分解されると、同じ量だけ体内で筋肉が合成されるためです。
ただ、糖質制限やファスティングなどで必要以上に糖新生によるブドウ糖産生が求められた場合、筋肉の分解量が合成量を超えてしまいます。つまり、糖質制限やファスティング時に筋肉などの組織までブドウ糖を利用しないといけない状況になると、糖新生のために筋肉が痩せてしまうのです。
そうしたことを避けるために、糖質制限やファスティング時には、筋肉などの組織はブドウ糖ではなく脂肪酸からエネルギーを作り出すようになります。
こうして脂質代謝によって脂肪酸やケトン体からエネルギーが供給されるようになると、赤血球や脳以外の組織(筋肉など)におけるブドウ糖の需要量が減少します。その結果、糖新生によるブドウ糖供給が最小限で済むようになるのです。
また糖質制限時やファスティング時などは、筋肉の分解を抑える「成長ホルモン」の分泌が促されることでも、筋肉が痩せることは防がれます。
糖質制限やファスティング時には、以上のようにエネルギー供給システムが変化しています。こうしたメカニズムのおかげで、糖質制限やファスティング時で食事からブドウ糖の摂取が制限された状況でも、筋肉が痩せることなくエネルギーが供給され続けているのです。
糖質制限時に筋肉が痩せる原因
ただ、脂肪からのエネルギー合成が滞っていたり、成長ホルモンの分泌が上手くいかなかったりすると、筋肉の分解によって糖新生を起こす必要が出てきます。つまり、グルコースアラニン回路を過剰に働かせなければいけないということです。
例えば、以下のようにTCA回路(脂質代謝)が滞っている場合には、筋肉などがブドウ糖からエネルギーを作り出そうとします。
必要以上に糖新生によるエネルギー産生が求められるため、筋肉が過剰に分解されるのです。
また当然ながら、エネルギー代謝が滞っていなくても、エネルギーとして使える脂肪酸が少なければ筋肉の分解は促されます。具体的には、体脂肪率が4パーセントを下回ると、筋肉が分解されてエネルギーが産生されるようになります。
以下に、糖質制限中に筋肉が過剰に分解されて痩せるパターンをまとめます。
・脂質代謝が悪い(脂肪からのエネルギー産生が上手くできていない)
・成長ホルモンの分泌が悪い
・脂肪酸の供給が不足している(体脂肪率が4パーセント以下)
糖質制限やファスティングによって筋肉量が減ってしまっている場合は、以上の要因を考えるようにしましょう。
糖質制限(ファスティング)には「糖新生 + 脂質代謝」が必要
ここまでのことを考慮すると、糖質制限(もしくはファスティング)には糖新生による赤血球と脳へのエネルギー供給、脂質代謝による赤血球・脳以外の組織へのエネルギー供給が必要不可欠であるといえます。
このどちらが欠けていても、糖質制限に失敗する可能性があるのです。
例えば、先に述べたように、適切に糖新生が行われていても、脂質代謝が悪いと筋肉が痩せてしまいます。
また逆に、脂質代謝が活発であっても糖新生に問題があると、赤血球や脳が活動するために必要なブドウ糖が供給されなくなるのです。つまり、低血糖状態になる可能性が高いといえます。
このように、「糖質制限(もしくはファスティング)を成功させるためには、糖新生と脂質代謝のどちらも適切に起こっていることが必要不可欠である」ということを理解しておきましょう。
糖新生を妨げる原因
糖新生が妨げられていると、糖質制限やファスティング時に低血糖状態となる可能性が高いです。そのため、糖質制限が糖質制限やファスティングを実施する上で、糖新生を妨げる要因を理解しておくことは大切です。
糖新生が上手く行われない原因としては、主に「肝機能異常」「副腎疲労症候群」の2つが挙げられます。
肝機能異常
既に述べたように、糖新生は主に肝臓で行われます。そのため、当然ながら肝臓の機能が悪くなると糖新生は妨げられることになるのです。
例えば、肝臓に脂肪が蓄積される「脂肪肝」や「肝硬変」といった肝臓の機能が悪くなる病気を患っている場合には、糖新生が上手く行われない可能性が高いといえます。また病院で診断されていなくても、アルコールや薬剤など、肝臓に負担がかかる物質を日常的に摂取している人も糖新生が妨げられやすいです。
このように、肝機能に異常が認められる人は糖新生による血糖コントロールが障害されやすいといえます。
副腎疲労症候群(アドレナルファティーグ)
糖新生が妨げられる要因として「副腎疲労症候群(アドレナルファティーグ)」は有名です。副腎疲労症候群とは、腎臓の上に存在する「副腎」と呼ばれる器官が疲労して適切に働かなくなってしまっている状態になります。
副腎からは、糖新生を促す「コルチゾール」と呼ばれるホルモンが分泌されます。
例えば、糖質制限をすると食事で糖質を摂取しているときよりも、糖新生による血糖コントロールが重要になります。食事から糖分を摂らないため、糖新生でブドウ糖を作らなければ、血糖値を維持できないためです。
糖質制限時に糖新生を促しているメカニズムの一つが、コルチゾールの分泌になります。
そのため、副腎疲労症候群でコルチゾールが十分に作られない状態で糖質制限やファスティングを実施すると、低血糖状態となる可能性があるのです。
こうしたことから、副腎疲労症候群の人が糖質制限やファスティングを行うときには、十分な注意が必要になるといえます。
今回述べたように、糖質制限やファスティング中には糖新生によって血糖値が維持されています。ただ中には、糖新生が過剰に起こって筋肉が痩せてしまったり、糖新生が上手く行われないために低血糖に陥ってしまうケースもあるのです。
そうしたことを避けるためにも、糖質制限やファスティングを実施する際には、糖新生のメカニズムについて理解しておくようにしましょう。