久しぶりのブログで、「いまさら糖質制限か?」と思われる方もいるかも知れないが、まあ、その通りである。

時代に遅れること数年、ようやく低炭水化物食ブームがやってきた!

もともと、健康関連の書籍を読みあさっているときに知った糖質制限だが、日本でも以下の書籍が大ブームとなったので知っている方も多いだろう。

しかし僕が糖質制限について知ったきっかけはこの本ではない。より新しく出版されたこちらの本だ。

この『GO WILD』は、前の記事で取り上げた『脳を鍛えるには運動しかない!』の著者であるレイティ博士が共著者に名を連ねている。

食事(低炭水化物食)、睡眠、運動(ミニマリストシューズやトレイルランの話題を含む)、そして昨今話題のマインドフルネスまで、「野生を取り戻す」というコンセプトにしたがって、幅広く今風なトピックが選ばれている。

僕のようなにわか健康オタクには(あるいはそうでなくても)入門書としてちょうど良い。自由ヶ丘や青山あたりの住人たちにとってはバイブル的な本であるとも言え、そうした地域に住んでいてるフード左翼、もとい健康志向の強い方にはぜひ一読をおすすめしたい。

糖質制限(低炭水化物食)の考え方のあらましを説明してみる

本題の低炭水化物食についてだが、僕自身はもともと痩せている方なので、ダイエットという意味での興味はない。気になるのは、単にそれが健康の増進、生産性の向上に役立つかどうか、という点である。以降は、そうした興味に沿って文章を書くので、ダイエットについて知りたい方は別のブログを探して欲しい。

さて、この糖質制限についてまず第一におさえておくべき事実は、人間は長い間、それほど大量の糖類を摂取せずに暮らしてきたということだ。

そもそも人類が定住生活をはじめてからまだ1万年ちょっとくらいしか経っていないとされる。その歴史の大部分において、人類は狩猟採集生活を営んでいた。そのときの主な食べ物は、木の実や果物、そして何より肉や魚であったと考えられる。

ところが、農業革命の発生により、小麦や稲などが取れるようになると、人類の栄養バランスに大きな変化が生じた。

『GO WILD』を読みながら、僕は当然、「農業革命により、人間の栄養状態は著しく改善した」という話の展開を期待した。だが実際に起こったのは、どうやらその逆に事態であるらしい。

……証拠は歴然としていた。農耕民は、先住者たる狩猟民より食糧事情が悪かったらしく、背が低く、骨は歪んだり変形したりしていたのだ。(第二章)

狩猟採集民が栄養不良に悩まされたという証拠も見つかっているものの、あくまで例外的なものだ。全体を俯瞰すれば、文明化には吉凶両面があり、それには健康上の大きなコストが伴った。そしてはじめのうち、そのコストの大半は栄養不良と結びついていた。農業が栄養不良をもたらしたのだ。(第二章)
まさか、と驚きながらも、改めてじっくり考えてみると、頷ける面もある。

米ばかり食べていた戦前の日本人には脚気が多かった、などということがよく言われるが、しかし人類が生まれたその瞬間から脚気に悩まされていた、というわけではないだろう。人類がもともと腰痛持ちで、アレルギーに悩み、うつ病に苦しんで生きてきた、というのは、一般的には受け入れがたい考え方だ。

もしそうなら、そのような生物が生き残り、ここまで繁栄していることの説明がつかない(文明を築くはるか以前にライオンの餌となっていてもおかしくない)。

そして、本来そのような悩みを持たなかった人間が、そのような悩みを持つようになったとすれば、そのきっかけが文明の発生による定住生活と、それに伴い始まった穀物=炭水化物の過剰摂取にある、と考えるのはそれなりに筋が通った推論であるように思われる。

実際、現在の人々が得るエネルギーの7割から8割は炭水化物によってもたらされる。これが「自然の摂理」でないことは間違いないのだ。

人体の生理学的な面からみても、糖質の過剰摂取が危険である理由を語ることは可能だ。

僕個人が興味を引かれたのは、低血糖を感知するホルモンは複数種類あるのに、高血糖を感知しそれに対処するホルモンがインスリン1種類しかないということだ。

『炭水化物は人類を滅ぼす』のなかには次のように書かれている。

……「血糖低下感知・ブドウ糖補充システム」のうちの感知部門は、グルカゴン、アドレナリン、コルチゾール、成長ホルモンなどのホルモンであり、これらのホルモンが分泌されると、血糖値を上昇させるべくさまざまな反応が起こる。
このように、血糖低下を感知するホルモンが複数あるのは、もちろん、低血糖が直接的に生命の危機をもたらすからだ……(中略)……逆に言えば、血糖を低下させるホルモンはインスリン一つしかなく、セーフティネットが存在しないことになる
(Ⅶ ブドウ糖から見えてくる生命体の進化と諸相 より)

インスリンの機能不全により起こる2型糖尿病は、様々な合併症を伴い得るきわめて重篤な生活習慣病である。糖は人間にとって重要なエネルギー源である一方で、血中濃度が高い場合に毒性を持ち(糖毒性)、それが2型糖尿病の様々な合併症を引き起こすわけだ。

それにもかかわらず、高血糖に対処できるホルモンがインスリン一つしかないということは、そもそも人間は高血糖に適応するような生物ではない、と考えざるを得ない。

人間は低血糖や、外部からの細菌・ウイルスの侵入に対しては複数の抵抗メカニズムを持っている。インスリンは、人間にとって完全な「Single point of failure」であり、遺伝子操作などで人間の性質そのものを変えない限り、この弱点から逃げることはできない。

もっとも、ほどほどの糖分摂取は必要なのだろうし、一切の糖質を取らない生活というのは現代ではほとんど不可能だろう。「低血糖は低血糖で、危険な状態じゃないの?」と思う方もいるだろう。

たしかに低血糖は危険だ。しかし、その原因として多いのは薬の効果や、ホルモン異常などによるものであって、「糖質の摂取量不足」によることはあまりないようだ。飢饉の発生や虐待・拷問など、何らかの理由で極度の絶食状態に置かれたのでない限り、普通にものを食べていて(それがたとえ低炭水化物食であっても)低血糖になってしまうことは、その逆(つまり高血糖)の状態に比べると少ないような印象も受ける。何より、人間には糖新生というメカニズムが備わっているので、糖類を摂取しなくても他の栄養素からそれを作り出すことができる。

ちなみに『GO WILD』には、以下のように、問題は炭水化物の過剰摂取だけでなく、その摂取の仕方にもあるという指摘がある。

ブドウ糖をどんな形で摂取するかは、その量と同じくらい大きな意味がある。人類進化の過程の大半において、炭水化物はさまざまな食べ物の食物繊維に埋め込まれた形で摂取されてきた。その消化には時間がかかったので、一日を通して体にはブドウ糖が少しずつ供給された。だが現在のわたしたちは、炭水化物の大半をブドウ糖として、ときには食べ物でさえない水溶液の形で取り込んでいるのだ。(第3章より)

この観点からいくと、角砂糖が10〜15個も入っていると言われるペットボトル入りの清涼飲料水をぐびぐびと飲み干すというのが、どう考えてもまともなことではないのは明らかだ。同書では、「どんな形であっても砂糖水は飲まない。コカ・コーラもだめ、クヌーセン社の一〇〇㌫天然有機フルーツジュースもだめ」と強調している。

なお、MEDLEYでも、これに関連した記事を書いているので、コーラ大好き、ジュース大好きという方はぜひとも以下の記事を読んで欲しい。

実際に炭水化物を減らしてみた。その食事例。

ところで、理屈はこのくらいにして、ここからは僕自身の低炭水化物生活の体験について書いてみたい。ここ1ヶ月ほどは(旅行で海外にいた時期を除き)、炭水化物の摂取量はかなり減らしていた。

結果としては、「もうあとには戻れない」ほど、低炭水化物食の虜になってしまったわけだが、具体的に一日の食事の例を、低炭水化物食を始める前と後で例示してみる。

低炭水化物食を始める前(例)
  • 朝食
    • コーヒー、グリーンスムージー、マフィン or パン、クッキー
  • おやつ
    • チョコあ〜んパン or カロリーメイト、ジュース
  • 昼食
    • サンドイッチ or ハンバーガー、コーラ、フライドポテト
  • おやつ
    • クッキー類、ジュース
  • 夕食
    • サラダ、肉 or 魚、五穀米
  • その他
    • 運動時にはアミノ酸の入っている清涼飲料水を飲み、運動後、プロテインを牛乳に入れて飲んだりする。
低炭水化物食を始めた後(例)
  • 朝食
    • コーヒー、グリーンスムージー、プレーンヨーグルト、クルミ、チーズ、ベーコン、サニーサイドアップ
  • 昼食
    • シーザーサラダ、サーモンのグリル、紅茶2〜3杯
  • 夕食
    • サラダ(ハムやサーモンが入ったもの)、肉、魚、納豆
  • その他
    • 朝食と夕食の際にはDHA/EPAを含むサプリメント(Amazonで見つけた小林製薬の一番安いやつ。糖質制限とは直接は関係なく、オメガ3脂肪酸を摂取するため)
    • 運動時にも水で済ますが、運動後のプロテイン+牛乳は相変わらず摂取。

重複している部分も多いが、はっきりと炭水化物・糖類を取らなくなっていることが分かるだろう。

まずジュース類は一切摂取をやめた。飲み物は常に水か、砂糖を入れないコーヒー、紅茶、ハーブティーといったあたりになる。

次いで、主食を抜きにしているので、タンパク質を多めに取る。肉や魚のボリュームを増やした。たとえば夕食は、それまで「魚か肉」を食べていたが、いまは「魚と肉」を両方食べるようにしている。

それ以外にも、たまご、ナッツ、砂糖を含まない乳製品(プレーンヨーグルトとチーズ)、そして安価で栄養価の高い納豆や豆腐などをよく食べるようになった。

糖類が比較的多めに入っているものがあるとすれば朝のグリーンスムージーで、これにはバナナか柑橘系の果物が少しだけ入っている。とはいえ、大量の葉野菜(小松菜やサラダほうれん草など)とまぜこぜにして摂取している形だから、糖質の量や血糖値の上昇効果は、清涼飲料水などとは比べるべくもないと思われる。

また、上記は食事の一例であり、日によって変動する。仮に、外食の際にコーンポタージュやポテトスープが出てきて、そこには炭水化物が入っていることが明白だとしても、僕自身はあまり気にせずにおいしくいただく。ステーキに付け合わせでついてくるマッシュドポテトなども、あまりに大量だと食べきれないが、少々ならば気にせず食べる。

あくまで普段の生活のなかで「砂糖入りの飲み物」「大量のご飯やパン」「クッキーやチョコレートなどの甘いお菓子」といった「凝縮された糖質」を避ける習慣を身につけることが重要で、それ以外の細かいところまであまり気にしない。それらの食品にしても、旅行時などには(たとえば機内食などでは)食べることになるし、原理主義的に避けているというほどではない。

なお興味深いことに、低炭水化物食をはじめてから、僕はほとんどおやつを食べなくなったわけだが、これについては次項で詳述する。

糖質制限の2つの明白な効果(for me)

==注意喚起== ここに記される効果は個人的なものであり、すべての人に同等の効果があるとは限りません。

実際に糖質制限をはじめてみると、2つの明白な効果が、はじめた直後からはっきりとあらわれる。

1つは、 「食後に眠くならない」 こと。そしてもう1つは 「空腹を感じくくなること」 である。

この2つの効果はあまりに明白で、ちょっとした驚きである。僕の周りで低炭水化物食をしている数名の知人も揃って同じようなことを口にする。

騙されたと思う人は一度やってみればよい。もともと炭水化物を大量に食べていた人であれば、1日や2日ですぐに効果を実感できるはずだ(たぶん、だけど)。

食後の眠気がないと、仕事が1時間前倒しで終わる。

これまで、昼食後の1〜2時間は眠気との戦いだった。

プログラミングをしようと画面に向かっていると、どこからともなく睡魔が襲ってきて、(多くの人が経験があるであろう)こっくりさん状態に陥る。思い起こせば、小学生・中学生の頃も、よく食後は机に突っ伏して寝ていたし、同じような同級生はたくさんいた。

だから、食後の眠気は、いわば人間にとって避けがたい宿命のようなものだと考えていた。

しかし、である。炭水化物を取らないで、肉や野菜を食べてオフィスに戻ると、これが全然眠くならないのだ。食後に眠いのは当然と思っていたのに、拍子抜けするほどだった。

これについて、知人の医師が説明をしてくれた(その説明は以下の通りだが、細部が間違っているかも知れないのであくまで概説と考えて頂きたい)。

まず、大量の糖質を摂取すると、当然ながら血糖値が急上昇する。そこで、血糖値を下げるためにインスリンが分泌され、血糖値が下がっていく。このときインスリンの働きによって、血糖値は標準時よりも低い状態にまで下がってしまうというのだ。

つまり、

  • 糖質摂取
  • 血糖値の上昇
  • インスリンの分泌
  • 血糖値の低下

という段階を経るわけだが、眠くなるのは、4の血糖値の低下のタイミングである。血糖値が上がった方が脳に糖が行き届き、頭が冴え渡ると考えがちだが、前述の糖毒性への対応のためにインスリンが出てきて、せっせと血糖を血流から取り除く。そのせいで今度は血糖値をが通常よりも下がってしまい、眠くなるのである。

大量の糖を取ればとるほど、インスリンは活発に働いて血糖値が急減する。血糖値の波が底を打ったところで低血糖状態が引き起こされ、眠くなる。低血糖で眠くなるというのは、夜になって眠くなるのとはメカニズムが違うわけで、一種の「軽度意識障害」とも言えるかも知れない(この表現が不適切ならごめんなさい)。

ということは、糖類の大量摂取がなければ、上記のサイクルは回避されることになり、当然、眠くなることはない。

食後、1時間ほど「こっくりさん状態」で仕事をしても、当たり前だが仕事は全然片付かない。裏を返すと、食後の眠気がなくなれば、仕事は1時間前倒しで終わる。

僕の場合、20時過ぎくらいには仕事を終えるようなリズムで生活しているのだが、昼食における糖質摂取を減らしてからは、19時前にはその日予定していた仕事が終わってしまう、ということになった。結果、1時間も生産的に仕事ができる時間が増えたことになる。

残業が多くて大変な人は、低炭水化物食を取り入れて食後の眠い時間をなくせば、早く帰ることができる。普段から定時帰りをしている人でも、食後の眠気をなくせば、生産的に活動できる実質的な時間が増える。

つまり、生産性が向上する。

そして、生産性の向上は常に善だ。

同じ時間でできる仕事量が増えれば、その人の能力が実質的に向上したのと同じことだ。これは待遇の向上や、昇進など、仕事で成果を出す上で確実に役立つ。

またワークライフバランスを重視する人にとっても、残業時間が減り、早く家に帰ることができれば、心身の健康にプラスだし、残業代を支払う会社側にとっても支払額が減ってハッピーである。

投入した資源あたりの効率を改善する……これこそまさに、経済における唯一絶対の万能薬ではないか?

空腹になりにくくなり、イライラが解消される。おやつは不要。

もう1つの効果は、空腹を感じにくくなることで、おやつが不要になり、おやつを買ったり食べたりする時間とお金がかからなくなってきたことだ。

さらに大きな効果は、「空腹を感じにくいために、イライラすることが減った」ことである。

それまで、朝の8時くらいに朝食を取って、11時にはお腹がすいて仕方なかったので、おやつを食べていた。糖が切れてきた、というのが体感的に分かり、そういうときはどうしてもイライラするし、せっかちになる。

しかし、朝食でタンパク質中心に多めの食事を取るようになると、空腹を感じにくくなり、14時〜15時くらいまで何も食べなくても基本的に大丈夫であり、イライラすることもない。当然ながら、昼食においても低炭水化物を実践しているため、夕方から夜にかけてお腹がすいてイライラすることもなくなる。

これは間接的にだが生産的な活動時間を増やし、またイライラをなくすことで生産性もあげていると思われる。

実は、この「空腹を感じにくい」というのは、先に述べた「糖質摂取→高血糖→低血糖」のサイクルと関連しているのではないか、と僕は考えている。

糖質を多く摂取して1時間〜2時間もすれば、人は低血糖状態に陥り、眠くなる。その際、低血糖であることを感知した体は、さらに糖類を取るようにその人を促すのだ。

糖質を多く取ることで結果的に低血糖になってしまい、その低血糖を解消するためにさらに糖質が欲しくなる。そうして糖質を取ると、一時的に血糖値があがるが、またインスリンが出てきて低血糖になる。

「3度の食事と2度のおやつ」というライフスタイルを、僕は子どもの頃から家庭や学校で教わってきた。しかし、1日に5回も食べ物を食べるということは、ほとんど2〜3時間おきに何かを食べていることになる。この2〜3時間というタイムスパンが、糖質摂取〜高血糖〜低血糖〜回復、のサイクルにかかる時間と一致しているように見えるのは偶然だろうか?

僕のかねてからの持論は、イライラしている人の大半は、単に空腹なだけ、というものだ。

さてそこで問題は、イライラの原因の1つとしての空腹が、現実のエネルギー不足によるものなのか、糖質を取ったせいで生み出された低血糖状態によって引き起こされているのか、ということだ。

多くの場合、現代の食生活が「エネルギー不足」をもたらすことはほとんどあり得ないだろう。それこそ、チョコレートバーをひとかじりするだけで、何キロもランニングできるくらいのエネルギーが得られる。それでもなお空腹に苛まれるとしたら、そこには生物学的合理性を越えた何かがある。

アルコールを常飲する人が、酒が切れてイライラする。タバコを吸う人が、ニコチンが切れてイライラする。同じように、糖類を習慣的に摂取する人は、糖が切れてイライラするのではないだろうか。それは、単に生物学的に必要だから、という水準を、越えた、一種の中毒症状といえないだろうか。

……というのは『炭水化物が〜』の受け売りにはなるが、けっこう説得力がある。

炭水化物は安いけど肉は高い問題をどう解決するか。

一度やめるとなかなか戻れないくらい快適な糖質制限なのだが、問題は、炭水化物というのは、それがお菓子であれ、パンであれ、ご飯であれ、安価に満腹感を満たせる食べ物だということだ。

同じカロリーをタンパク質や脂質で摂取しようとすると食費が上がるのではないか、という指摘がありそうだ。この指摘は、ある面では確かに正しい。

日本で牛肉を買うとげんなりするほど高い。東京だと、100gで600円とか700円とかするわけだ(輸入の肉でも円安のせいか結構高い……)。先日ベルリンに旅行したところ、値札に7.99ユーロなどと書いてあるものだから、「やっぱり都会は肉が高いのだな」と思ったら、1kgあたりの値段だった。

どんな事情があるのであれ、日本人は牛肉を買う限り、法外に高い金銭を要求されている。それは仮に自分がどんなにお金持ちだったとしても許しがたいレベルである。

そこで、肉類で安いものを探すと、豚肉か鶏肉になる。なかでも鶏肉は比較的安く、店を選べば100gで100〜200円ということもある。これならまあ許容範囲というか、まずまずの値段である(ちなみに、コンビニで売っているサラダチキンは125gで200円ほど)。

また、安価な青魚に頼るのもよい。イワシなどはかなり値頃だ。

さらに、タンパク質の補給源として手軽で安いのは、ずばり納豆と豆腐だ。この2つは本当に安いので、食事の際には冷や奴や納豆を導入すれば良い。

そして、たまごも栄養価が高い。糖質を取らないということであれば、砂糖を入れるだし巻き玉子などは食べることはないので、普通の目玉焼きでよい。

そのほか、ナッツ類も悪くない。脂肪もタンパク質も含まれているし、なかでもいま流行りのオメガ3脂肪酸が抱負に含まれているクルミは味もいいし食べやすいしおすすめだ。袋買いして、休みの日にまとめてオーブンでローストしておくと、味付けなどしなくてもとても美味しい。

意外と見落とされがちだが、低炭水化物食に慣れるとおやつがいらなくなるので、ケーキやクッキー、スコーンといったお菓子を買うことはなくなり、これがけっこう食費の節約になる。炭水化物は安いのだが、なぜかパンケーキやスコーンなどは、原価に比べてやけに値が張るものだ。

さらに、お酒もあまり飲まなくなる。というのも、糖質制限の理屈で行くと、ビールや日本酒、甘口のワインやカクテルなどは糖質が含まれるのでなるべく飲まないことが推奨されるからだ(もっとも僕の場合、あまり禁欲的にはならず、たまには飲む)。このことも、食費を下げることにつながる(酒税は高い)。

つまり、食費を抑えながら糖質制限をするには「鶏肉、青魚、豆腐、納豆、ナッツ類、卵」などを重視し、「牛肉、お酒、お菓子」を避けると良いだろう。

一方、贅沢なものを食べたくなったときは、ちょっと奮発して生ハムやスモークサーモン、チーズを買うと食卓が楽しくなる。本来、ヨーロッパなどの本場ではこうした食材はきわめて安価(いずれも1パックで1〜2ユーロ程度で、日本より1パックあたりの量も多い)に手に入るのだが、それが日本ではどうしても高級食材になってしまうが、こればかりは仕方がない。

さて、あなたはどうする?

本記事に書いたことは、僕個人の考えと体験に過ぎない。

何かしらの明快な科学的な根拠を明示しているわけでもない。

だから、書かれてあることをそのまま鵜呑みにする方がいると良くないと思うので、あえて強調しておく。

糖質制限=低炭水化物食は、必ずしも医学的エビデンスによって根拠づけられているものではなく、あくまで一種のブーム、ムーブメントのようなものだ。それが快適でいいと思う人はやれば良いし、うさんくさいと思えばやらなければ良い。

糖質制限をはじめたとしても、おそらく人間の健康を根底から蝕むような悪い事態になる可能性はないだろう(狩猟採集生活を送っていたホモ・サピエンスはそれで生き延びてきたのだから)。一方で、糖質の大量摂取が、悪い事態を招きやすいことはほぼ明白だ。

それでも、自らの食生活をどうするのか、その判断は完全に個々人の価値観や考え方による。

食べるという、人間にとって、いや生物にとって欠かせない営みをどうマネージするか。これはどんな人にとっても重要な意味を持つ課題であることだけは間違いない。