- 2011年12月29日 14:07
32歳。
お肌の曲がり角を、ロッシばりにハングオンで直角に曲がったころ、どんどん体重が増えていった。
ズボンがどれも入らない。
Yシャツを着ると、ボタンとボタンのあいだが「無理っす」と言わんばかりのはちきれん状態になっている。そしてボタン飛ぶ飛ぶ。
仕方がないので、洋服屋さんでワンサイズ上を買おうとするのだが、試着するとき、鏡を見るとあまりの醜さに、死にたい気分になる。お前どんだけスソ上げるんだと。
165cm、65kg。
5年で10kg増えた。
5年前は、「中村さんってファイナルファンタジーみたいな顔してますよね」などと言われていた私が、若干、彦摩呂入ってきた。
これは非常にまずいのではないか。
彦摩呂は、まずい。味の宝石箱は、まずいのである。
そもそも私、それまで広告代理店から独立し「PARTY」などという会社をはじめ、小さな業界ではございますが、ニュースや雑誌などに出していただいたり、世界でもっともこまっしゃくれた街、代官山にオフィス構えちゃったりしている。
イノベーティブですごく面白いことをたくさんしたい、ハングリーな会社なのだ。
そもそも、弊社の設立者5人は、川村くんと私以外、みんなガッシリしている。
ハングリーどころか「いいもん食ってますね」感すらある。
このタイミングで、私の彦摩呂化は、社としても由々しき問題なのである。
で、まず、走ってみた。
20km走ったが、これがまたぜんぜん痩せない。
というか、ビールがうまい。
ビールがうますぎて、翌朝体重増えている、という負の連鎖に陥った。
若い頃は、これでグングン痩せたのになー。
そこで、ダイエットサプリを徹底的に濫用してみた。
毎食後、「扁鵲」(へんせき)と「カロリミット」と「パーフェクトスリム」をヘルシアまたは黒烏龍茶で流しこむ、という斬新な手法を取った。
しかし、これも効果はなかった。
代わりに、おなかが緩くなった。
もともとおなかが弱いのが、さらに弱くなり、しばばうんこをもらすハメになった。(代官山で)
今だからはっきり言える。
ダイエットサプリが効果あるのは、20代だけです。
というか、20代は、なにやったって痩せるんですねこれ。
そんな中、電通のエースCMプランナー、岡野くん(31)がCMの編集現場に訪れた。
岡野くんはもともとふっくらしている方だったが、なんと、ガリガリに痩せているではないか。
「岡野くん、どうしたの?すごい痩せてるじゃん!」
「んふふ、最近、トータルワークアウトに通いはじめてね」
「何それ?」
「芸能人では、清原、秋山、神田うの、高橋克典、ホリエモンとかやってるんだ」
「それはまた、全員イヤな顔ぶれだね」
「まあ、本当にすっごい痩せるから、興味あるなら試してみなよ。たった3週間だよ」
さっそくWebサイトから資料を取り寄せてみた。
まず目に入ったのが、料金表だ。
==============================
入会金 31,500円
月会費 21,000円
一回のトレーニングで3,150円〜
==============================
高っ。
しかし、パンフを取り寄せたら、入会金は免除だそうだ。
トータルワークアウトは、基本3週間のプログラム。一週間2〜3回のトレーニング。
3150 x 2回 x 3週 + 21000 = 39900円......
ぼくは、ポジティブに考えた。
まあ、ダイエットサプリにも、それくらい使っている。そして効果が出ていない。もし本当に効果が出るなら、安いものではないか。
コナミスポーツクラブは、18000円ほど。それにトレーナーがつくとすれば、まあ適正な値段ではないのか。
こういうものは、都合よく考えないと、ラチがあかないのだ。
見るまえに跳べ。
もしくは、よく見ないで跳ぶ。
迂闊。
それが私の信条である。
3日後、渋谷某所。
ぼくは、重いトータルワークアウトの門を開けた......。
ガカァーッ! (扉の向こうから光が差し込む音)
そこには......
ドォォーン!
?!
た、大勝軒の山岸店長、コンバットバージョン?
否。
創始者のケビン山崎さんである。
トータルワークアウトには、必ずケビンの像が置いてあるのだ。
ちなみに、ご本人は、もうすこしピカデリー梅田に似ている。
小学生のころ、自由作文で「二宮金次郎やクラークケントのように、像を作られて、後世に語り継がれるような人間になりたいです」と書き、金賞をもらったことを思い出した。
ケビンは、私の夢をすでに叶えていることになる。
......で、3週間トータルワークアウトを続けた結果。
メッチャ痩せました。
体重は、65→60の、5kg減程度。
若いころは55kgだったので、まだまだ。だが、見た目が決定的に違う。
引き締まりまくりである。
ズボン、はけまくりである。んもうスッポスポ。
あまりに感動し、隣席のQantaさんにも勧めたところ、
なんと彼はいま17kg痩せている。
ダイエットに悩み、サプリメントを買い漁る悩める子羊たちの、ソリューションである。
トータルワークアウトは、「引き締めて痩せる」ということについては、出色に効果があるようだ。
トータルワークアウト(以下TW)の痩せるメカニズムとは。
(1) 筋トレ
(2) 食事制限
こんだけ。
TWの筋トレは、普段ジムではあまりやらないような機器を中心にやる。
腕の付け根、足の付け根、背中等、体幹のでかい筋肉を中心に。
ダンベルとか腹筋より、代謝の面では効率がいい。
「もう限界」と感じる重さを、13回、10回、8回とやる。
「ふんぬーーーーーーーー!!!!!」とかいいながらやる。
そんなにきつくない。むしろ楽しい。
ときどき芸能人がいるのも、楽しい。
ぼくはベンチプレスが苦手で、5kgくらいしか上がらない。となりで、V6の三宅くんが、「ふんっ」とか言って、ぼくの4倍ほどのバーベルを上げたりする。
その場で、三宅くんに「生まれてすいません」「私はあなたの爪の垢ほどの人間的価値もございません」と土下座したい。
TWではトレーナーが必ずつく。
このトレーナーがまた全員変態である。
筋肉好きな男と、筋肉好きな女だ。
つい、「あなたはプライベートでも筋肉モリモリの異性が好きですよね?」と聞いてしまう。
「愚問ですね」と返される。
そして、翌日、バッキバキの筋肉痛になる。(ぼくはおっさんなので、翌々日)
これがまた楽しい。
ここで、グイっとプロテインをやっとくと、全部筋肉になってくれるというわけだ。
トレーナーの効果は、けっこうすごいものがある。
まず、筋肉を追い込むと必ずフォームが崩れる。すると、大事なところに負荷がかからないので、それを矯正する役割。
また、「ギリギリ上がらない重さ」に追い込むので、最後の数回サポートしてもらうことが必要になる。
一生やるものではないとしても、トレーナーについて正しい筋トレをする、という体験はしておくとトクである。
そして、食事制限。
TWは、「食事制限で痩せる」といっても過言ではない。
はじめに、トレーナーから詳しい説明がある。
「中村さんは、どんなカラダになりたいんですか?」
「グラップラー刃牙みたいになりたいです」
「そうですか〜」
と、普通に受け答えられた。
要するに、目標は前向きならなんでもいいらしい。
「中村さん、ちょっとこの本を見てください」
なんぞこれ?
「トータルワークアウト式3週間ダイエットバイブル」
「人は、活動すると、まず糖質を使う。で、糖質がなければ脂質を使う。
両方ともなくなると、蓄えた脂肪を使います。
そこで、筋トレをして、たんぱく質をとると、代わりに筋肉になります」
なるほど。つまり......
「糖質と脂質を一切とらないでください。かわりにたんぱく質を取ってください。」
「何を食べればいいんですか?」
「まず、炭水化物はすなわち糖質。なので、全部ダメです。お米、パン、うどん、全部NG」
「肉は?」
「ささみ食ってください」
「さ、ささみだけ?」
「鳥の胸肉と、ヒレ肉はOK。脂をはずして食べてください。あと卵の白身」
「し、白身だけ......お豆腐や納豆は、たんぱく質だよね?」
「ああ、あれはけっこう糖質あるんで、NGです」
「キャベツは?」
「ああ、あれはけっこう糖質あるんで、NGです」
「ニンジンは?」
「ああ、あれはけっこう糖質あるんで、NGです」
「大根は?」
「ああ、あれはけっこう糖質あるんで、NGです」
「タマネギは?」
「ああ、あれはメチャクチャ糖質あるんで、NGです」
ちょっ......
ゲエエーーッ!
食えるもの、ないじゃん!
Yahoo!バナー広告のレギュレーション並に厳しい!
おまえはレギュレーションか!
【食べられるもの】
鳥のささみ、鳥の胸肉(皮はずす)、卵の白身、白身魚。
コンビニで食べられるのは、腿ハム、あたりめ、砂肝、水、コークゼロ、ビタミンカルピスゼロ。百歩譲ってビーフジャーキー。おでんのしらたき、昆布。生野菜。(後ろの4つは、TWの公式見解ではダメ)
「ぜ、ぜんぜん食えるものないじゃないですか!」
「いや、ありますよ。ウチにトータルワークアウトカフェってのがあって、そこで食べればいいんです」
出た。
抱き合わせ商法である。
「あと、この本に食えるもの書いてあります」
「ちょっと見せて」
「いや、買ってください」
抱き合わせ商法である。
「また、もうひとつコツがあります。1日5食、食べてください。」
「そ、そんなに?」
「満腹にせず、空腹にもしない。ちょっとだけ食べるんです。
それが、カラダの燃費を悪くするコツなんです」
「でも、ぱっと食べられるものがないよ......」
「そんなときのために、お持ち帰り用トータルワークアウト特製ささみスモークがあります!」
抱き合わせ商法である。
こうして、カフェでパッサパサのデリプレートを食べ、ささみスモーク350円(!)を買いこむ。
それが、また新たなケビン山崎の銅像をつくるためのインフラになるのである。
はじめの1週間は、めちゃくちゃきつい。
ところが、2週間目になると、なんだか慣れてくる。
おや? 気持ちお腹がひっこんだような。
感覚が鋭敏になり、普段おいしいと思わなかったものがおいしく感じるようになる。
「ささみうまいよ」とか思う。
絶食とは異なり、空腹感を感じないので、それほど苦痛ではない。
卵の黄身を捨てて、白身だけを食べてみたが、これはよくなかった。
黄身を流しに捨てている状態が、なんだか命に申し訳ない。
捨てられた黄身のほうも「え、そっち?」と戸惑っているはずだ。
「これじゃ死ぬよりももっとひどい」とか「これが、まどかの望んだ結末だって言うの?」とか思ったはずだ。
これは、2度とやらなかった。
そして3週間目。
このへんになると、確実に効果が出る。
おなかがグンとひっこむ。ズボンスッポスポ。
顔つきもぜんぜんちがう。彦摩呂が遠のく。
これは、かなり確実に効くダイエット法だ。
ホリエモンが勧めるのもわかる。
本気になったら、ぜひおためしあれ。