気づけば何時間もテレビやネットを見てしまい大後悔…。そんな経験がある人も多いのでは? 行動科学に詳しい石田淳さんと、心理カウンセラーの袰岩(ほろいわ)奈々さんによると、テレビやネットに接しないと、「情報から取り残されるのでは…」と不安感を抱きやすく、ダラダラと時間を過ごす原因になりやすいそう。識者2人が、テレビ&ネットとの賢い付き合い方を伝授してくれました。
■見る時間や頻度など、自分なりのルールを決めよう
「テレビやネットは簡単に始められて、刺激がすぐに得られます。そのためついクセになってしまうのです」と話すのは、著書に『教える技術』(かんき出版)などがあり、人間の行動を科学的に研究している石田淳さん。
「中毒性が高いので、自分で意識してコントロールする習慣を持たないと、ダラダラと続けてしまうことになります」
また、不登校生徒や家族の教育相談員を経て、「カウンセリングルーム プリメイラ」を開設した、心理カウンセラーの袰岩(ほろいわ)奈々さんによれば、大量の情報があふれる現代社会だからこそ、「自分だけが情報から取り残されているのではないかという不安感」を抱いてしまうという。だからこそ情報に必要以上に依存し、テレビやネットから離れられなくなるケースも多いそう。
「人にはダラダラする時間も必要です。しかし、“今日も、テレビとネットを見ているだけで時間が経ってしまった…”などと罪悪感が残るようであれば、付き合い方を見直したほうがいいでしょう」(袰岩さん)
■テレビやネットに、1日どれくらい触れているか確認
ダラダラ見続けてしまう自分を責めるよりも重要なのはこうしたテレビやネットの中毒性を確認すること。その上で、自分が一日にテレビやネットにどれくらい触れているか、確認してみよう。
「日常の習慣になってしまって、無意識的に触れている人も多いはず。調べてみると、あまりの長さと頻繁さに驚くと思いますよ」(石田さん)
現状を把握したら、触れる時間や回数を決めよう。テレビは見たい番組だけを見る、ネットは1日3回、1回当たり30分まで…など、自分のライフスタイルを考慮しながら“マイルール”を作るといい。
さらに石田さんによるとテレビやネットに触れない日を作る“情報デトックス”も効果的だという。
「あふれる情報を完全に遮断する日をつくると、本当に大切な情報は意外と少ないことに気づきます。自分の人生をより豊かに、実りあるものにしていくためにも、効率的に必要な情報を得るようにしましょう」
~私たちがテレビ&ネットにはまる5つの理由~
◇すぐに始められる…
「自分でも気づかないうちに、テレビのスイッチをつけている」という人も多いはず。テレビやネットは、ボタン一つ、あるいはクリック一つで始めることができる。「始めるのが簡単なので、すぐに行動に移せます。次第に、テレビやネットを見ることが日々の習慣になっていってしまうのです」(石田さん)
◇簡単に刺激が得られる…
テレビやネットは誰でも簡単に膨大な量の情報に接することができ、視覚や聴覚が刺激される。「始めるのも簡単で、次々とたくさんの刺激が得られます。それが次第に快適に感じられるように。制限を設けないと、いつしか刺激を得ること自体が楽しみになり、日常化してしまうのです」(石田さん)
◇情報から取り残される不安がある…
「“情報から取り残されているのではないか”“有益な情報を知らないまま損をしているのでは”などの不安や焦りから、テレビ・ネットに漫然と接してしまう人も多い」(袰岩さん)という。「様々な情報にアクセスしやすくなったからこそ、“ほかの人が知っていることを私も知りたい”という欲求が強い人が増えたように思います」
◇深く考えなくていい…
テレビやネットをしている間は、映像や情報を見ることに夢中になる。「その間は、自分の思考がストップし、そこにある刺激に没頭している状態です。考えるべきこと、するべきことから逃避して、“ただ刺激を受け取るだけ”という受け身の姿勢でいい。非常に楽ですし、快感なのではまってしまうのです」(袰岩さん)
◇反応が返ってくるのがうれしい…
ブログやフェイスブック、ツイッターなどのソーシャルネットワーキングサービスは、適度な反応が返ってくることが、はまる要因の一つになっている。「コメントやリツイートなどの反応は毎回とは限りません。だからこそ、反応が返ってきたときに喜びやうれしさが増し、もっと反応を求めてしまう。中毒性があるのです」(袰岩さん)
■だらだら時間にサヨナラ! テレビ&ネットと上手に付き合う6つの習慣
長時間テレビやネットに触れ罪悪感を抱いたら…まずはテレビとネット時間の現状を把握しよう。自分が一日にどれくらいテレビやネットに時間を費やしているかを記録。現状を把握できたら、下に紹介した6つの習慣の中で、自分にとって実践しやすいものからチャレンジしてみるのがおすすめ。
1.1日当たりのテレビ、ネットの使用合計タイムを決めておく
1日当たりのテレビ、ネットの使用合計時間や、接触回数を決めてみよう。「私の場合は、ネットに触れるのは基本的に朝・昼・夜の一日3回だけ。その際にメールチェックや情報サイト、フェイスブックのメッセージチェックなども併せて済ませてしまいます」(石田さん)。時間の目安は、無理のない範囲で決めてみて
2.テレビ、パソコンの電源を抜いて、使用するまでにワンステップ設ける
「始めやすい」のがダラダラとテレビやネットにはまってしまう理由の一つ。だからこそ、始めるまでに意図的にハードルを設けてみよう。例えば、テレビやパソコンの電源を使用した後に必ずプラグから抜くことを習慣づけて、ワン・アクションでは始められないようにするのも手
3.テレビやネットをやめた後に“ご褒美”を用意する
テレビを消した後やパソコンの電源を落とした後に、情報から離れて自分ひとりの静かな時間に戻ることに対して“寂しい”などと抵抗感を持ってしまう人も少なくない。「テレビやネットを終えた後に“大好きな推理小説を読もう”“温かいココアを飲もう”など、ちょっとしたご褒美を用意しておくのもいいですね」(袰岩さん)
4.テレビの時間を音楽やラジオにチェンジ
「なんとなく寂しいからテレビをつけてしまう」という人は、その時間を音楽やラジオを聴くことに変えてみよう。「音は、寂しさを紛らせてくれます。何よりテレビと違って、音楽やラジオであれば家事などの手を動かすこともできて、“ダラダラと何もしなかった”という罪悪感は抱かずに済みます」(袰岩さん)
5.「本当に必要な情報なのか?」自分に問いかけてみる
「フェイスブックやツイッターは他人の井戸端会議を眺めているような感覚。そこには親密感や楽しい雰囲気があって魅力的なのですが、繰り広げられている話題には、深い意味のない情報も多い」(袰岩さん)。「その情報が本当に自分に必要なのか」を問いかけ、必要な情報とそうではない情報とを精査する意識を持つことも大切だ
6.テレビ&ネットに触れない日をつくってみる
スマートフォンを片手に、電車の待ち時間など、わずかなすきま時間でも、ネットで情報をチェックする人も多いのでは? 「いっそのこと、テレビやネットに触れない日を一日つくってみるといいでしょう。おそらく、それほど困らないはずですよ。自分にとって必要な情報とは何なのかを考えるいいきっかけになります」(石田さん)
この人たちに聞きました
石田 淳さん
行動科学マネジメント研究所所長。アメリカのビジネス界で絶大な効果を上げる「行動科学マネジメント」の手法を学び、帰国。日本企業用にアレンジし、生産性向上などの研修を行う。著書に『教える技術』(かんき出版)など
袰岩奈々さん
心理カウンセラー。不登校生徒や家族の教育相談員を経て、「カウンセリングルーム プリメイラ」を開設。働く女性、学生、カップルのカウンセリングを多く行う。また、企業や教育関係者を対象とした研修も多数実施
(ライター 田中美和)
[日経WOMAN2013年3月号の記事を基に再構成]
本コンテンツの無断転載、配信、共有利用を禁止します。