様々な観方ができるスターウォーズですが、僕個人としては、スターウォーズは「ダース・ベイダー / アナキン・スカイウォーカーの悲劇的な生涯」を描いた作品として鑑賞するのが、最も魅力的だと思います。
ダース・ベイダーは、ただの「悪いヤツ」じゃないの?と疑問を感じたあなた…世界中のファンも、かつてそう考えていました。しかし、ベイダーにはベイダーなりの「正義と悲劇」の物語があったのです。
この物語を知って初めて捉えられる、スターウォーズのもう一つの一面…それは、「ダース・ベイダーこそが主役であり、スターウォーズはほとんど悲劇である」という観点です。
『エピソード7 / フォースの覚醒』では焼けただれたマスクのみが登場していたダース・ベイダー。彼が辿った運命について、お伝えします。
スターウォーズは、ダースベイダーの悲劇の物語
誰もが”絶対的悪”だと思っていた
過去6作をあまりしっかり観ていない方に簡単に説明しますと、1977年〜1983年に公開されたエピソード4〜6は、宇宙を舞台としたシンプルな勧善懲悪の物語でした。
ダース・ベイダーという悪いやつが牛耳る帝国軍というのが銀河を支配していて(正確には、ベイダーの上にもう一人、ダース・シディアスという黒幕がいますが)、自由を求める反乱軍はそこと戦争をしている。ひょんな事からその戦争に参加する事となったルーク・スカイウォーカー少年は、仲間とともに奮闘しながら、ひとりジェダイの騎士として修行を積む。ところが実はダース・ベイダーは自分の実の父親であるという事実を知らされ、戸惑いながらもついに父と対峙する…というストーリーです。
この時のダース・ベイダーは無慈悲な悪役として描かれます。ガスマスクのような不気味なマスクからは呼吸音が聞こえ、サムライの兜のようなヘルメットも被っていいます。体もデカくて、漆黒のマントに身を包み艦内を闊歩する姿に観客は恐怖心を覚えました。おまけにライトセーバーの戦いにもむちゃくちゃ強く、使えない部下は容赦なく締め殺してしまう。
「強い、怖い、カッコいい」悪の三拍子が揃ったベイダー卿は、あらゆる雑誌やWebサイトの『映画史上最も魅力的なキャラクター』『映画史上最も魅力的な悪役』などのランキングにはたいていトップ3くらいのポジションには常連です。
ところが、ダース・ベイダーに対する『絶対悪』としての観方は、1999年〜2005年のエピソード1〜3を鑑賞すると180°変わることになります。
ダース・ベイダーは悲劇の犠牲者だった
エピソード1〜3では、いかにして共和国が帝国軍へと変貌していったのか、そして、なぜ善良なアナキン・スカイウォーカー少年がダース・ベイダーと化してしまったのかがじっくりと描かれています。
アナキン・スカイウォーカー少年は砂漠の惑星タトゥイーンで暮らす、奴隷の子でした。
母親のシミ・スカイウォーカーは、アナキンを自然に身ごもり、一人で育て上げます。(キリストのように父親は存在しません。)
アナキン少年に流れるフォースは人一倍強く、ジェダイ・マスターのヨーダやクワイ=ガン・ジンに、予言にある『フォースにバランスをもたらす者』であると見出され、クワイ=ガンと彼のパダワン(弟子)のオビ=ワン・ケノービと共に旅立ちます。
この時、大好きな母親シミを奴隷という身分のまま故郷に残しており、「母を自由にさせてあげられなかった」という心残りが、後々まで彼を苦しめることになります。
我が子の旅立ちを見守るシミ・スカイウォーカー
パドメとの禁断の恋
クワイ=ガン・ジンがダース・モールとの戦いで命を落とした後、アナキンはオビ=ワン・ケノービの元でジェダイとしての修行を重ねる事になります。
アナキンはそこで、ナブーの王女パドメ・アミダラと再会を果たします。アナキンは『エピソード1 / ファントム・メナス』の時にパドメとの出会いを果たしており、その時には真っ直ぐな瞳で「お姉さん、天使?」とつぶやいています。
成長したアナキンはパドメと恋に落ちますが、実はジェダイにとって恋愛はご法度です。
規律の厳しいジェダイにとって恋愛が禁止されている理由はいくつかあるのですが、一番の理由は“恐れや憎しみ”を生むからです。
ジェダイの掟では、”持つ”ことへの執着を捨てよと教えます。何故なら、”持つ”とは”失う”の前段階であり、”失う”事への“恐れ”は”怒り”に、”怒り”は”憎しみ”に、”憎しみ”は苦痛に繋がると考えられています。これらは全て、ダークサイドに通ずる感情です。
恋愛によって愛する人を持つのは素晴らしいのですが、相手を失う事が結果としてダークサイドへ堕ちるきっかけとなるため、ジェダイは恋愛禁止の一律ルールが敷かれています。
この掟を破り、アナキンとパドメは恋愛関係に発展します。
母を救えなかったアナキンの”執着心”
恋人パドメとの関係を深めていくアナキンは、ある夜、母であるシミ・スカイウォーカーの死を予見するような悪夢を見ます。
幼いころに母を奴隷のまま故郷に残してきた事を長く悔やんでいるアナキンは、この悪夢に”恐れ”を感じ、すぐに母のいる故郷タトゥイーンに戻ります。が、あと一歩の事で間に合わず、腕の中で母を失ってしまいます。
アナキンはここで初めて、明確な形で”怒り”の感情を抱きます。怒りに身を任せ、母を虐待し死に至らしめた原住民サンドピープルを、女子供構わず皆殺しにしてしまうのです。
はじめて怒りが芽生えてしまったアナキン
母を失う事の”恐れ”が”怒り”に…。アナキンは、ダークサイドへと転落する暗黒の道の第一歩を、この時知らずに歩み始めてしまうのです。
ただ、愛するパドメを救いたかった
その後アナキンとパドメは秘密裏に結婚し、パドメのお腹に二人の子が宿ります。
そんな頃、アナキンはもう一度悪夢を見てしまいます。それは、パドメが泣きながら命を落とす夢。
二度と母のように大切な人を失いたくないと不安がり焦るアナキンは、ジェダイマスターのヨーダに悪夢の内容を打ち明け、どうすればパドメを死から救えるかの教えを請います。
しかしヨーダの答えは、「失うことを恐れるな。恐れはダークサイドへ繋がる。」というやや的を外れたもので、「パドメの死に備えよ」という、アナキンの気持ちを沈めてくれるものではありませんでした。
続いて彼は、共和国を率いるパルパティーン最高議長へも相談を持ちかけます。実はこのパルパティーンという人物は共和国転覆を図るシスの暗黒卿“ダース・シディアス”で、フォースのダークサイドに通ずる人物です。
フォースの強いアナキンを自らの手下として迎え入れたかったパルパティーンは、「ダークサイドでは、人を死から救う術も学ぶことが出来る」と誘惑します。ついにアナキンはダークサイドへ足を踏み入れ、”ダース・ベイダー”という名を授かるのです。
妻を救いたい一心のアナキンを、まんまと暗黒面へと導き入れる計算高きパルパティーン
パルパティーンの策略により、シスの暗黒卿”ダース・ベイダー”へと仕立てあげられたアナキンは、ここからパルパティーンの手先となり「ジェダイ抹殺」を命じられます。
全てはパドメを死から救うため…アナキン、いや、ダース・ベイダーは武器を持たない弱者のみならず、ジェダイ寺院の小さな子どもたちまでを無慈悲にも皆殺しにしてしまいます。…まるで母の死を目の当たりにした、あの夜のように。
ただ、オビ=ワンに認めて欲しかった
暗黒面に支配され、目つきまで変わってしまったアナキン…もとい、ダース・ベイダー
あのアナキンが暗黒面に…事実を受け入れられない妻のパドメは、アナキンの制止に向かいます。同じく愛弟子を失い動揺するオビ=ワンを連れて。
パルパティーンの操り人形と成り果てたアナキンは、「ジェダイが共和国を裏切った」「一緒に帝国を築き、銀河に秩序をもたらそう」とパドメに迫ります。いよいよ別人になってしまった夫と向かいながらも、それでも必死に絞り出した最後の「愛してる」の言葉が、アナキンの心に届く事はありませんでした。彼女の背後に、オビ=ワン・ケノービの姿が見えたからです。
アナキンはジェダイ史上最高クラスの実力を持ちながらも、マスターであるオビ=ワンはじめ周りの大人たちからはいつも「お前はまだ早い」とたしなめられており、次第にフラストレーションを溜めていくこととなりました。
なぜ、いつまでたっても自分は子供扱いされ、認められないのか…。
精神を暗黒面に支配され、そのフラストレーションが誇大化し、もはや正常な判断ができないアナキンは、オビ=ワンが自分を殺すため、パドメを”おとり”として連れてきたのだと勘違いし、「騙したな!」と怒り叫びながらパドメを締め上げます。
相手の手を操って首を締めさせる”フォースチョーク”…彼が初めて使った相手は皮肉にも、愛していたはずのパドメ
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