人間の寿命は人それぞれであり、100歳でもピンピンしている人がいれば、早く亡くなる人もいます。また若い時から病気がちの人もいれば、極めて健康な人もいます。
ではなぜ、このような差が現われてくるのでしょうか。もちろん日頃からの生活習慣が大きく影響していますが、最近、欧米では、寿命や健康の差というものは、生命活動の基ともいうべき「酵素」と深い関係があるという考え方が示され、注目を集めています。以前は低く見られがちだった酵素ですが、最近の栄養学では、酵素を重視するとともに、第7の栄養素と位置づけており、健康を維持する上で欠くことのできない存在としています。海外ではヘルシー志向で日本食がブームとなって久しいですが、その大きな理由の1つとして、日本食が酵素を含んだ発酵食品などをうまく取り入れていることも挙げられます。そこで今回は酵素の働きを中心に特集を組みました。
第7の栄養素“酵素”とは
戦後、欧米からもたらされた栄養学では炭水化物、タンパク質、脂質の3大栄養素が、人間が生きていく上で、最も必要な栄養素とされてきました。その後、炭水化物を摂っても、それだけではうまく代謝しないということから、ビタミン・ミネラルが加わって5大栄養素となりました。最近では体内で消化されないことから、それまで見過ごされてきた食物繊維を6番目の栄養素としています。これらの栄養素はわれわれが生きる上で重要なものですが、これらの栄養素と同様に必要とされているのが酵素で、最近では第7の栄養素ともいわれています。ちなみにビタミンAやB群などのビタミンは、酵素の働きを補うために必要な栄養素であり、「補酵素」とも呼ばれています。
酵素とは「体内で起こる化学反応の触媒作用をする、特定のタンパク質からできている物質」で、これまでの研究から酵素は生命を維持する上で、非常に重要な栄養素であることが明らかになっています。
酵素と聞けば、消化酵素を連想する人が多いことでしょう。しかし酵素は食べたものを消化吸収するばかりでなく、息をしたり、筋肉を動かしたりと、一切の生命活動に関与しています。もし酵素の働きがなければ、私たちは体を動かすことも、考えることも、食べ物を消化・吸収することも、目をまばたきすることもできないのです。
これまでに発見されている酵素の数は約2,500種類とも3,000種類ともいわれています。酵素はさまざまな役割を果たしますが、1種類の酵素がすべての役割を果たすのではなく、数多くの酵素にそれぞれ役割分担が決められているのです。これらはどんな成分でも分解できるわけではなく、それぞれの種類の酵素が対応する成分を分解するような仕組みになっています。消化酵素を例に挙げると、ペプシンはタンパク質を分解して、アミノ酸にしますが、脂肪や炭水化物を分解することはありません。脂肪を分解するのは、リパーゼと呼ばれる酵素で、脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解します。またアミラーゼは炭水化物を分解して、ブドウ糖に変える働きがありますが、他のタンパク質や脂肪を分解することはありません。
寿命と関連する潜在酵素 〜元気・長生きの秘訣は酵素の節約から〜
酵素はこれまでの栄養学では、いつも裏方として登場するだけで、注目されたことは少なく、今まで充分な研究が行われてきませんでした。これは体内で合成できるために、タンパク質の材料が手に入れば、いつでも、いくらでもつくることができると考えられていたためです。無制限につくられると考えられていたために、研究が遅れたのです。
しかし近年になって研究が進み、実は酵素をつくる能力には、限界があるということがわかってきました。
この考えを提唱したのは、アメリカのエドワード・ハウエル博士です。ハウエル博士の学説は徐々に広まり、今では酵素をいかに節約するかが元気で長生きする秘訣ではないか、という考え方がアメリカでは常識になりつつあります。酵素を抜きにして栄養学は語れなくなってきているようです。酵素の量は年を追うごとに減っていくことは、医学的な調査からも明らかになっています。
その人間が固有に持っている、一生のうちでつくることができる一定量のことを潜在酵素といいます。潜在酵素は消化酵素と代謝酵素に大きく分けられますが、消化酵素も代謝酵素も同じ1つの潜在酵素からつくられているので、消化酵素として潜在酵素を使ってしまうと、その分、代謝酵素に回される量が少なくなるので、病気が治りにくくなることになります。
消化酵素は食べ物を分解して、人間が使いやすいようにしますが、その材料となる潜在酵素を使って、体を組み立てたり、悪い部分を修復したりするのが、代謝酵素の働きなのです。つまり自然治癒力の正体は代謝酵素の働きによるものであり、消化酵素に潜在酵素を必要以上に使ってしまうことは、自然治癒力の働きをそれだけ弱めることになります。昔から『健康の秘訣は腹八分』といいますが、この考えからもその意味がわかります。
酵素が不足すると血液がドロドロに
酵素が不足すると体の働きにさまざまな弊害が出てきます。体内の酵素の量と働きのバランスが崩れると血液の流れが滞って、血液中にいろいろな成分がたまって汚れ、ドロドロになり、血栓ができやすくなって、さまざまな病気が引き起こされるのです。血液がドロドロに汚れると、血管の内腔(内側の空間)が狭くなり、動脈硬化を招くことになり、ひいては各種生活習慣病の引き金となるのです。
このように血液のドロドロ状態を招く最大の原因は、何といっても消化酵素の不足です。体内では、潜在酵素は優先的に消化のために利用されます。消化酵素が不足すると、脂肪やコレステロール、糖などは完全に分解されないまま、血液中でだぶつき、血液の粘り気が増して、血液そのものの流れが悪くなり、ドロドロになってくるのです。消化酵素の主な仕事は炭水化物、脂肪、タンパク質の3大栄養素を消化・吸収することです。血液が汚れてドロドロ状態になっている人のほとんどは、3大栄養素を消化する酵素が不足しているとされています。
食べ物に含まれている栄養分は消化酵素の働きによって分子レベルにまで分解され、腸から吸収されます。ところが消化酵素が不足して胃や腸での分解が不充分だと、体はエネルギー源に変えて、利用することはできません。つまり代謝酵素が弱くなってしまうのです。このような状態になると栄養分が血液の中に入ってきても、充分に利用されないので、コレステロールなどが血液中にだぶつき、ドロドロと汚れてしまうことになります。しかしドロドロと汚れた血液でも、消化酵素が充分にあれば、やがて汚れが取り除かれサラサラとした血液に戻ります。
このような酵素不足を引き起こす背景にあるのが、食べ過ぎや加熱調理されたものばかりを食べるようになったということです。加熱調理された食べ物には、酵素がありません。そのため体の方が、全部、自前で消化するために酵素をつくらなければなりません。
ところが、食べ過ぎや病気・加齢で酵素をつくる能力が弱くなっている時には、体は消化酵素をつくるのが追いつかなくなります。このため、食べた物が充分に消化されないまま、体内に入るので、汚れたドロドロ血液の原因となります。
消化酵素も代謝酵素も体内の潜在酵素からつくられますが、優先的に消化酵素に回されます。
おいしそうな食べ物の匂いを嗅いで、思わずヨダレが出そうになった経験は誰でも一度はあることでしょう。人間は食べ物のいい匂いを嗅いだだけで、口の中から唾液が出始めるのです。これは食べ物を口の中に入れる前から、唾液に含まれる消化酵素の助けを借りて、栄養物を分解しようとする準備をしているところなのです。これらの消化酵素は大きな食べ物の分子を、消化管から吸収されるような小さな分子に化学的に分解する手助けをするのです。人間の体はおよそ22種類の消化酵素を分泌します。これらの消化酵素によってタンパク質、炭水化物、脂肪を分解することができるのです。
消化酵素が分泌される部位としては、唾液からアミラーゼやプチアリン、胃液からペプシンやリパーゼ、すい液からアミラーゼやキモトリプシン、腸内からはマルターゼやエレプシンといった具合に分泌され、それぞれの部位に適した効果を発揮する酵素が配置されています。
また代謝酵素は消化酵素によって消化・吸収された栄養素を全身に送り、体内機能を作り出すという働きがあります。つまり食べ物から吸収された栄養素は、体を動かすエネルギー源となったり、皮膚や筋肉・骨などをつくったり、あるいはホルモンや神経伝達のためのいろいろな仕組み、さらに解毒・排泄・免疫といった生命活動を担う材料として組み立てられ、利用されていくことになりますが、これらの働きに深く関与しているのが代謝酵素です。
代謝酵素の主な働きとしては
(1)吸収された栄養を体内の細胞に届けて、有効に働く手助けをする
(2)血液をきれいにして、毒素を汗や尿の中に排出する
(3)新陳代謝を促し、基礎体力づくりに役立つ
(4)自然治癒力・免疫力を高める
(5)血圧を調節する
(6)肝臓や腎臓をはじめとする内臓器官を強化する
(7)活性酸素を除去する
などが挙げられます。
人間の体内では消化酵素によって消化・吸収された栄養素が代謝酵素によって全身の機能をつくり出すという作業が延々と繰り返されているのです。
酵素が効率よく働くためには、バランスの取れた食生活を送ることが大切です。ビタミンやミネラルが不足すると、酵素は力を発揮できずに、体調を崩すことになります。
Copyright(C) HOME MEDICINE NEWS PAPER. All Rights Reserved.