黒ずみが…


ビルケンを所有したことのある方なら一度は思うこと…

そう、インソールの足形、黒ずみです。


ビルケンサンダルの大半に採用されるスエードライナー。さらさらとした足触り、汗を吸収して快適な状態を維持する機能性。実に素晴らしいインソールなのですが、それも新しいうちの話。ワンシーズンヘビーに使うと、くっきりと足形の黒ずみが生じてしまい、テカテカの状態に…あの心地良いさらさら感はどこへやら、何とも汚らしく変貌してしまいます。場合によってはアウトソールの減りに問題ないうちに汚れ、黒ずみが気になって履かなくなる方もいるでしょう。履いて歩く頻度、場所、汗のかきかた等の個人差はあるにしろ、誰しもがぶつかる壁かと思います。黒ずみもひとつの味と一蹴出来なくもないですが、やはり綺麗であることに越したことはないですよね。仮に自分は良くても人目が…ですよね…

対処法としてはスエードライナーの張替えをビルケンシュトックの直営店や、靴の修理を行うショップなどに依頼するのが手堅い方法でしょう。しかし、その費用は馬鹿になりません。その費用を考えると、比較的安価なビルコフローのモデルでは新品に買い替える方向にもなろうかと。


自力で何とかならんのか?!


自力で何とかならんのか?!多くの方は思ったのではないでしょうか。

さてさて、私もそう感じ、色々とネットから情報を拾ったりしながら策を練っておりました。検索してまず出てくるのはスエード用の消しゴム(砂消しのような)で汚れを落とす方法と、スエードシャンプーでの洗浄。これらの方法は以前、私も試してみました。消しゴムでは確かに汚れは薄れるのですが劇的な変化は生まれません。いまいち…次にスエードシャンプー。これは中性洗剤を代用として使い、硬いナイロンブラシでゴシゴシと…乾かすと、う~ん…これもいまいち…おまけにロゴはすっかりと消えてしまった…


他に良い方法はないのか?更に情報を漁る。ワイヤーブラシを掛けると汚れが落ちる!?なるほど、それは良さそうだ!でもワイヤーブラシなど掛けて本当に大丈夫なのか?ライナー自体、ガチャガチャにならないのか?不安にも思えたのだが…しかし、スエードの元々の製法を鑑みれば、ある程度のラフな手法も問題ないであろうと、真鍮製のワイヤーブラシで実行に移した。おぉ、確かにこれは綺麗になるな!ペタリと寝た起毛も復活し、さらさら、モフモフとしている。ロゴは確実に潰れてしまうが、これまで試した方法の中では一番、効果的だった。最初からこうしていれば…綺麗になったスエードライナーにニヤニヤしながら履いて、意気揚々と出掛けてみたのだが…

ふと気付くと再び黒ずみが浮いてきている。うむ、何故だ…?どうやら綺麗になったのではなく、綺麗に見えていたというのが現実だったようだ。ワイヤーブラシを掛けたことにより起毛され、表向きは綺麗に見える。しかし、実際には奥に沈んでいる汚れはしっかり残っていたのだ。これでは解決したとは言えない。何もしないよりはマシだが…


抜本的な解決法はないものか。色々と考えた末に導き出したのが、様々な方法の良いとこ取りとスエードの製法の原点回帰だった。その後、試行錯誤の結果、辿り着いたスエードライナーのメンテナンス法を以下にご紹介します。なお、我流でもあり乱暴な手法も含むので参考までに…



今回、着手するのはパピリオのタボラ、アッパーはビルコフローです。



丁度、焼き過ぎた食パンの如し良い汚れ具合です。こんな感じに黒ずんでいるビルケンをお持ちの方は多々おられることでしょう。それを理由にお蔵入りとなっているケースも。このように汚れてくると起毛感も失われ、汗の吸い込みも確実に低下するでしょう。試行錯誤の結果、やはり洗う工程なしには綺麗にはならないということ。今回も当然、洗浄するわけですが、洗う前にまず下準備をします。全面をワイヤーブラシとサンドペーパーを用いて起毛させていきます。とりあえず全面を起毛させることで洗浄する際に洗剤が奥まで浸透しやすい状態にします。全面的に傷を付けるイメージです。初めに手を付けるのは難関のロゴ周辺。ここにワイヤーブラシを掛けてしまうとロゴは完全に消失してしまいます。そこで使用するのがサンドペーパーです。200番前後の荒めを使います。ロゴの印刷は若干、沈み込んでいます。ペーパーを優しく掛けてやればロゴを削ることなく、周辺を削ることが出来るのです。出来ればロゴは残したいですからね。そして…



こんな感じになりました。ロゴはほとんどそのままです。そして全面的にステンレス製のワイヤーブラシを掛けていきます。真鍮製よりステンレス製の方が硬いので効率が良いです。汚れの度合いによって両者を使い分けています。



全面的なブラッシングを終えた状態です。あくまで下準備なので、この程度で十分です。これから洗浄作業に移行します。



アッパーを含めて割と大胆に洗います。洗剤については中性洗剤、ボディソープ、シャンプーetc…色々と試してみましたが、どれも大差ないというのがこれまでの感想です。特に仕上がりに問題を感じたものもありませんでした。現在は弱酸性のボディソープと重曹を使っています。ポイントは汚れ落ちを優先してお湯を使うのは避けるということです。接着箇所が剥がれてしまう可能性があるからです。なお、コルク層へのダメージを考慮し、ドブ付けしての洗い方も避けた方が良さそうに思います。ちなみにアッパーのバックルに触れる部分の汚れは洗剤の力だけではなかなか落ちません。そのようなしつこい汚れ箇所にはメラミンスポンジが有効です。軽く擦るだけで落とせます。なお、バックルに浮いた錆も軽微であれば落とせます。また、白のアウトソールの場合、外周の汚れが気になったりしますが、これもメラミンスポンジで丹念に擦れば真っ白になります。基本、全面的に束子を用いて洗い、最後にワイヤーブラシをインソールに掛けて汚れを掻き出します。もちろん、ロゴ周辺は避けるように。洗い終えたら洗剤が完全に落ちるまで流水に晒します。その後、スプレーボトルに入れた柔軟剤を吹きかけ、また十分に流水に晒します。柔軟剤を用いるとスエードライナーの仕上がりがフワッとします。



洗浄の工程を終えた状態。洗濯機で三分程度、脱水しています。脱水なんかして平気なのか?!洗濯層の壁面に立て掛けるように置いてからスイッチを押しています。そうすると遠心力で壁面に張り付いた状態で回り続けるので、内部で暴れるようなことはありません。ちなみに古いタイプの一層式の洗濯機です。かなり乱暴な方法ですがね…


完全に乾燥した状態がこちら。まだ全体に黒ずんでいて汚いですね…ガサガサしてますね…でもご安心を。この黒ずみは沈み込んでいた汚れが表面に浮いてきたものです。片方だけブラッシングとペーパー掛けをしてみましょう。



5分程度ですっきりと綺麗になりました。ロゴ周辺以外は大雑把にワイヤーブラシでブラッシングし、最後に表面に浮いた汚れを削ぎ落とすようにペーパー掛けを実行。ワイヤーブラシで毛羽立ち過ぎた部分も削ぎ落として滑らかに仕上げています。スエードの質は天然素材ゆえに個体差が激しく、ものによっては激しく毛羽立ちます。そんな場合には丁寧な仕上げのペーパー掛けを要します。ペーパーによる仕上げは元々のスエードの製造過程で行われていることです。新品同様とまでは行きませんが、新品時のフィーリングにかなり近い状態にはなったと思います。ちなみに今回は一回の洗浄で十分に綺麗になりましたが、油分が激しく蓄積したような酷い汚れの場合では、一回の洗浄では汚れが落ちきらないケースもありました。そんなケースでは面倒でも、二度目の洗いに着手すると良いでしょう。



両足共に完了。フワフワ、サラサラ、モフモフに仕上がりました。ロゴはやや薄くなりましたが、ある程度は仕方ないでしょう。足を入れた感覚は、新品時の感触に遜色ないです。それと…画像を見てお気付きになるポイントがあると思います。左右のアッパーをご覧下さい。右足だけ艶が出ているのがお分かり頂けるかと思います。右足のアッパーには車用のレザーワックスを塗布してあります。レザーワックスにより艶が出るだけでなく、被膜で覆うことで汚れが付きにくくなります。特に白等の淡色系は汚れが目立つためお勧めです。



如何だったでしょうか?特別な道具も必要とせずに、多少の手間と時間は掛かりますが、誰でも簡単にスエードライナーをリフレッシュさせることが出来ます。ビルケンの最大の泣き所、インソールの黒ずみは少しの手間と愛情で解決出来ます。汚れたスエードライナーにお悩みの方は是非、チャレンジしてみて下さいね。きっと今まで以上に愛着も沸いて来ますよ。


ちなみにワイヤーブラシはステンレス製、真鍮製共に100均でも売られています。サンドペーパーもあります。ワイヤーブラシはヘッドの大きさの違うものをいくつか用意しておくと便利です。


次回はもう一歩踏み込んだメンテナンス法をご紹介したいと考えています。


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