聞きたいけど、聞けない「更年期とセックス」のこと
「セックスをしないと更年期障害が酷くなる」「セックスしたほうが若々しくいられる」などといった話をどこかで聞いたことがありませんか? 実際のところはどうなのか、人に聞きたいけどなかなか聞けない内容であるがゆえに、悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回はセックスに関する更年期世代ならではのケアや不調対策をまとめてみました。
文/増田美加(女性医療ジャーナリスト)
セックスの有無と更年期の症状、関係あるの?
これまであまり語られることのなかった更年期世代のセックス。更年期世代がこれだけメンタルも外見も若々しくある今、セックスに関する更年期世代ならではのケアや不調対策、医療情報が求められています。セックスレスの背景にある性交痛やデリケートゾーンのさまざまな悩みへの対策も、進んできています。「更年期世代はセックスしたほうが若々しくいられる?!」という都市伝説も含めて、現状を取材しました。
セックスレスだと更年期障害が早く来る? ひどくなる?
セックスと更年期障害の症状との関連性は、正しい研究やデータはありません。でも、更年期は、肌や髪と同様、女性器のエイジングはだれにでも生じます。
更年期を迎えるあたりから、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が一気に低下、子宮内膜や子宮筋の委縮、骨盤底筋群の緩み、腟壁の乾燥や腟萎縮(萎縮性腟炎)、腟炎が起こりやすくなります。
閉経後は、閉経前より、さらに症状が進みます。日本女性の閉経年齢は平均50.5歳と言われています。閉経すると、エストロゲンなどの女性ホルモンは、ほぼゼロになります。
たとえば、腟萎縮の発現率を見ても、閉経後1年、2年、3年と年を経るごとに増えていきます。女性ホルモンによって守られてきた女性器の老化が、閉経後、急に進んでいくというのは残念ながら、事実。女性器は、女性ホルモンに守られてきたわけです。
セックスレスにより、オンナ度が下がり、女性ホルモンの分泌が減って、更年期が早く訪れると思っている方もいるかもしれませんが、セックスレスが更年期障害を招くということはありません。ただ、セックスをしている人のほうが、腟萎縮の程度が少ないかもしれません。ックスをすることで、骨盤底筋群や腟周りの筋肉を使いますので、機会がない人よりも筋肉などが鍛えられ、萎縮が抑えられるのではないかと考えられます。
更年期のセックスは女性にとってプラス? マイナス?
腟萎縮が進むと、セックスは痛みをともなう場合も多く、セックスレスになりがち。
でも、「セックスをしている人のほうが、腟の潤いが保たれている場合が多い」という婦人科医も少なくありません。
長年、セックスレスで放置していると、腟壁が硬くなって腟萎縮も早く起きやすい。それによって、乾燥、かゆみ、腫れ、ニオイ、性交痛、排尿障害など、さまざまな不調が起こりやすいのは、どうも事実のようです。
「更年期世代になってから、パートナーとの性交痛が気になり、閉経してからさらに、尿漏れ、かゆみやニオイも感じるようになりました」というように、セックス…どころではなく、セックスレスがさらに加速したという女性も少なくありません。
「残りの30年以上の人生、まだまだ女性として生きたい! と思っているのに不安」という声も少なくありません。
更年期のセックス、痛くてつらい、どうしたらいい?
更年期世代の性交痛をケアするには、早めに腟の乾燥を治療することが大事です。
婦人科のクリニックに行くと、エストロゲンの腟錠を処方してもらえます。局所(腟)に効くエストロゲン(ホルモン)剤の腟錠を腟に入れる方法です。エストロゲン剤の腟錠にはさまざまあり、症状に応じてエストロゲン含有量の多少を考慮して処方してくれます。
性交時の痛みだけでなく、性交時出血の症状がある人もいます。なかには、萎縮性腟炎を起こしていて、内診をすると、腟の周りが真っ赤になっている人もいると言われています。そんな女性が腟錠を週に2回程度入れたところ、2週間くらいで楽になり、その後、週1回程度、腟錠を入れることで、症状はずいぶん軽快するケースも少なくありません。
また、下半身や骨盤周り子宮が冷えることによって、腟の潤いや柔軟性が低下する場合もあるので、お腹や腰を冷やさないようにして、常に温かくしておくことも効果的です。
腟錠だけでなく、全身のホルモン剤や漢方薬も有効です
腟の乾燥だけでなく、ほてり、のぼせなど更年期障害のさまざまな症状や、頻尿、尿もれなどの症状もある人には、局所の腟錠でなく、全身に作用するホルモン補充療法(HRT)が効果的です。
全身のホルモン補充療法(HRT)で使うホルモン剤には、錠剤、パッチ剤、ジェル剤などさまざまな種類があります。自分の希望で選べますが、ジェル剤は症状に応じて、量を加減できるので便利です。
また、腹圧性尿失禁や過活動膀胱の症状がつらいときには、骨盤底筋群を鍛える体操やそれぞれに効く薬がありますので、婦人科や女性泌尿器科の医師に相談するとよいでしょう。
乳がんの既往があったり、ホルモン剤を使いたくない人には、漢方薬で治療することもできます。たとえば、「温経湯(うんけいとう)」「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」は、体を温め、皮膚や粘膜の潤いを増す漢方薬です。
デリケートゾーンの洗いすぎと乾燥に配慮したセルフケアを
性交痛やセックスレスは、女性の問題だけでなく、パートナーとの関係も影響します。パートナーと症状について話し合ったり、心理カウンセリングを受けることが有効な場合もあります。
セルフケアとしては、腟や外陰部の乾燥が気になる人は、ともすると洗いすぎの傾向があります。洗いすぎは、若い年代であっても、腟にある大事な常在菌をとり除いてしまいますので、腟や外陰部は石鹸でゴシゴシ洗わないようにしましょう
特に、更年期以降、エストロゲンが低下すると常在菌がいなくなり、バリア機能がなくなった状態になりがち。ますます粘膜が弱くなりますので、デリケートゾーン用の洗浄剤を使うことをおすすめします。ビデも使いすぎないようにします。
デリケートなフェミニンゾーンの洗浄剤「ラクタシード」
一般的な洗浄料とは違い、デリケートなフェミニンゾーンの皮膚(肌)のpH値を考慮した処方の洗浄剤。適切なpH値の洗浄料で洗うことで、フェミニンゾーンを清潔に保ちます。
性交時の潤い不足に使うジェル剤やデリケートゾーンに潤いを与えるスキンケア剤なども販売されていますので、使ってみてください。
性交時の潤い不足に「リューブセリー」
水、グリセリンが主成分の腟潤滑剤。女性ホルモン剤未使用のためホルモンが使えない人にも。性交痛に悩むカップルに。
チューブ入り55g
一般社団法人日本家族計画協会 ☎03-3269-4727
また、補正下着などで締めつけるのも、粘膜や皮膚が乾燥している更年期世代はよくありません。コットン素材で締め付けない下着を選ぶようにしましょう。
乾燥しやすい更年期世代の肌にやさしい「キレイラボ(R)」
生地面に肌の保湿構造を再現することによって、水分をためこめる層をつくり、皮膚からの水分蒸発を抑制します。乾燥しやすい肌を、うるおいヴェールがやさしく包む下着設計です。
性交痛の原因が、シェーグレン症候群ということも
更年期世代の性交痛で、ひとつ気をつけなくてはならない病気があります。
エストロゲンの低下だけが原因ではない、シェーグレン症候群という病気があります。シェーグレン症候群は、目や口の乾きの症状が顕著ですが、腟の乾燥も起こります。
シェーグレン症候群と診断されている人のなかにも、腟の乾燥症状をケアできず、悩んでいる人も少なくありません。シェーグレン症候群の治療は、リウマチ内科や膠原病の専門医ですが、腟の乾燥の治療は婦人科でもできますので、悩んだら婦人科に相談することも考えてみましょう。
デリケートゾーンの解決法は、今後の人生をどう生きたいか
更年期によって女性ホルモンが減るのは、女性なら全員が経験することですが、更年期世代のセックスやデリケートゾーンの悩みは、今後、どう生きたいか…という人生の選択によって、ひとりひとり異なります。
人生いろいろ、悩みも千差万別です。なかには、「母の介護経験から将来、自分が介護されるときに備えて、デリケートゾーンの悩みを解消しておこうと思った…」と話す女性もいました。
更年期は、女性の今後の人生にとって、とても大切な時期です。ひとりで考え込まず、パートナーに今の体の状態を話し、悩みを打ち明けることによって、心身ともに安定できる時間を増やしていきましょう。