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2章:大炎の地フランメ編
50G:温泉
しおりを挟む―――それから、深夜12時を回った頃。
深い眠りについているフェルトを気にせず、ベーゼはガシャガシャと物音を立てて起き上がる。そして、乱暴にドアを閉めると地下の大浴場へと向かった。
ベーゼ「…」
ロビーはすっかり真っ暗だったが、カウンター脇の地下への階段には仄かな明かりが灯り、足場も気にせずに浴場へと着くことが出来た。見渡す限り、明かりは"炎の魔力"が宿った魔法の石をガラス細工に仕込み、情緒あるように明かりを展開しているようだ。妙な配慮をしていることに、ベーゼは「もっと力を入れるところがあるだろうが」と一人呟く。
ベーゼ「さて…」
帽子を外し、黒のコートを脱ぐと、籠に仕舞わずその辺に投げる。一応、錆びを気にせずにアクセの一部や小型のナイフは装備したままではあるが、タオルも身に着けず、浴場の扉を開き、中に入った。
ベーゼ「ほう…」
感心するところは、素直に感心する。
フェルトも浴場に久々に人間界を感じたようだったが、ベーゼも何か思いに更けるような顔を見せた。
ベーゼ「かけ流しは、この辺では珍しくもないが……」
豊富な湯量は、更衣室付近の側溝まで溢れだす。何とも豪快で気持ちが良くなる造りだ。
ベーゼ「…」
近くの桶で、湯船から少しすくってかけ湯しつつ、周囲を見ると浴槽近くには腰掛けに石鹸が用意され、使った形跡があることからフェルトだろうと納得。そして、ここでようやく、まだ装着していたアクセの一部を石鹸の近くに置いて、湯船に足を入れた。
ベーゼ「ふむ……」
熱めではあるが、お湯の質は柔らかめで、身体はすぐに馴染む。腰を下ろすとベーゼの長い髪の毛は湯に浮いてしまったが、別に周りに誰がいるわけでもなく気にする様子はない。
ベーゼ「…」
湯に浸かったまま静かに目を閉じ、瞑想を始める。彼が何を思っているのかは誰が知ることでもないが、この時ばかりはリラックスしているように見えた。しかし、彼が望んだ静かな時間は、そう長くは続かず。
ベーゼ「ん…」
突然、"がらり"と温泉の戸が開き、現れたのは小タオルを頭に乗せたレイナであった。
レイナ「……ありゃ!」
ベーゼ「お前か…」
レイナは慌てて「お客様がいたら、私は後で入ります!」と戻ろうとしたが、ベーゼは「気にするな」とそれを止めた。
レイナ「でも、ベーゼは私と一緒だと嫌じゃないです?」
ベーゼ「ガキが一人増えたところで、変わることは無い」
レイナ「……そうですかっ!」
元気よく返事するが、それに対してはベーゼが少し怪訝そうな顔をした。
ベーゼ「ただ、声を上げたりはするな。浴場は声が良く響くからな」
レイナ「はいっ!気をつけますっ!」
ベーゼ「…」
話が通じていない。取り敢えず彼女は静かに戸を閉めると、ベーゼの使った桶で湯をすくい、かけ湯で身体を簡単に洗うと「失礼します」と言って湯船に浸かった。
レイナ「ふぅー…」
小タオルは頭に乗せたまま、至福の表情で湯に沈む。
先ほどまでは桃色のゴムで赤髪をサイドに結っていたが、今は髪を降ろし、ベーゼと同じくお湯に髪の毛を浮かせている。
ベーゼ「…」
それを見たベーゼは、最初こそ気にしていなかったが、レイナに「おい、ちょっと来い」と呼び寄せた。
レイナ「なんですかー?」
ざぼざぼと水音をたてて傍に近づく。ベーゼはレイナに「あちら側を向け」と背中を向かせ、頭に乗せたタオルを取ると浮かぶ髪の毛の水を軽く絞り、簡単に水を拭うと慣れた手つきで彼女の長い赤髪を小タオルでアップスタイルに直した。
レイナ「!」
驚いたレイナは振り返り、有難うございます!と頭を下げた。勢いよく、水しぶきがベーゼの顔にかかるが、不機嫌そうな顔をするだけで何も言うことはない。
レイナ「私も、ベーゼおじさんの髪の毛をなおしましょーか?」
こちらを向いて首を傾げて尋ねるが、ベーゼは「俺のことは気にするな」とあちら側を向かせ、グイグイと押した。
レイナ「あわわっ」
ベーゼ「……あとは静かにしていろ」
ふぅと一息ついて、再び目を閉じる。
だが、大人びた子供でも、所詮は子供である。静かにしていろと言われても、構いたくなるし、構ってほしくなる。
レイナ「…」
彼女は離されてもめげずに、ベーゼの傍に近づく。
ベーゼ「……あっちに言っていろと言った筈だが」
レイナ「つ、つい……」
ベーゼ「あのな」
レイナ「ベ、ベーゼおじさんは優しいんですね!」
ベーゼ「何?」
突然の「優しい」という言葉に、反応する。
レイナ「髪を結んでくれたり、宿に泊まってくれたり。おじさんは良い人ですね!」
ベーゼ「……馬鹿を言え」
手を払うように動かし、彼女の顔にお湯をかける。
レイナ「わっぷ!…で、でも優しいと思います!」
ベーゼ「何言ってやがる。俺が優しかったら、商売あがったりだ。どうやってここまで生きてきたと思っている」
レイナ「う…、でも……」
レイナから見た彼の身体には、痛々しい傷がいくつもついていた。幼いなりにも、彼がどんな生活をしてきたのか想像がつく。
ベーゼ「傷が珍しいか」
レイナ「ううん、そんなことないです」
ベーゼ「……物怖じしない奴だ」
得体の知れない格好に、不気味な風貌。見慣れていない人間ならば誰もが不気味に思い、知れば存在に恐怖するというのに。
ベーゼ「いくら宿屋の娘だろうが、お前は変わっているな」
レイナ「そうでしょうか?」
ベーゼ「無駄に料理が作れたり、俺を怖がらないとはな」
レイナ「……怖くなんてないです!」
"ザボンッ!"
勢いよく立ち上がり、お湯を山なりに動かして浴場いっぱいに響く声で言った。
ベーゼ「……やかましいぞ」
レイナ「あ…!ご、ごめんなさい……」
ベーゼ「静かにしていろ」
レイナ「は、はいです……」
レイナは一旦落ち着くと、両腕を浴槽の縁につけて休むベーゼを見上げながら、小さく呟いた。
レイナ「本当に、怖くないのに……」
お湯に沈み、顔半分だけ出してジトっとした目でベーゼを睨んだ。
睨まれたベーゼは「あぁ、そうかい」と一言。
ベーゼ「……そこまで言うなら、俺の商売は終わりだな」
レイナ「え、終わり?」
ベーゼ「お前のようなガキが怖くないのなら、俺の金貸しも廃業だって意味だ……ったく」
縁に置いていた両手を支えにして立つと、レイナの頭をポンを叩いて湯船から上がった。
レイナ「ベーゼおじさん……」
ベーゼは横にあった腰掛けに座ると、軽く肩を回してストレッチし、近くにあった桶の裏を簡単に洗って手前に置いた。そして、レイナに「背中向けて座れ」と桶の裏をチョイチョイと指差した。
レイナ「え?あ、はい…!」
お湯から出たレイナは、言われた通りベーゼの手前の桶に座る。
ベーゼ「……石鹸だが、頭も洗えるタイプか」
レイナ「はい、そうですけど…もしかして……!」
ベーゼ「いいから黙ってろ」
彼女の小タオルを取ると、指先で毛先から根元を梳かしながら髪の毛を広げる。
ベーゼ「目を閉じてろ」
レイナ「…はい!」
彼女がギュっと目を閉じたのを確認してから、お湯をすくって頭に被せたあと、石鹸を泡立せ、毛先からゆっくりと泡を馴染ませながら頭に円を描くように指でマッサージをするように洗い上げる。
レイナ「にゃ…!」
ふわふわの泡が髪の毛に馴染ませたのを確認すると、先ほど腰掛けの近くに置いたアクセサリーの指輪を片手に嵌め、ピン!と弾いた。
ベーゼ「最初は冷たいぞ」
レイナ「ひぁあっ!?」
指輪に埋め込まれていたのは、"水"の力。特に水気の多い浴場ということもあって、弾かれた指輪からは勢いよく水が噴射した。
ベーゼ「…」
すぐに別の桶を手に取り、温かいお湯と水を被せ、ぬるま湯にする。レイナは「だ、大丈夫です!」といって泡が流れ落ちるのを待った。
ベーゼ「フン…」
全ての泡が流れ落ちると、小タオルをギュッと絞り、彼女の顔を拭く。その後、もう1度絞り直したそれを髪の毛を簡単に拭き直すと、あとは勝手にしろと言って、また湯船に浸かった。
レイナ「ベーゼおじさん…。あ、ありがとう……」
ベーゼ「気が向いただけだ」
レイナ「……えへへ、でもね、何だか嬉しかったの」
屈託のない笑顔で、ベーゼにお礼を言った。
ベーゼ「……無垢だな、お前は」
レイナ「え?」
ベーゼ「純粋過ぎる。もっと危険な場所にいると自覚を持て」
レイナ「どーいう…こと……?」
トテテと歩き、近づいて湯船に浸かろうとする。ベーゼは「おい、待て」とそれを止める。
ベーゼ「後ろ向け。折角洗ったのに、また温泉につけたら洗い直しだろうが」
レイナ「あ、そ…そっか……」
フェルトが居たら、有り得ないと大声で言う光景だ。ベーゼは彼女の髪の毛をアップスタイルにさせ、お湯に触れないようにした。
ベーゼ「やれやれ…。どうして風呂に浸かって疲労せねばならないのか」
髪の毛を直すと、ベーゼはそのまま風呂から上がって更衣室へと向かう。慌ててレイナは「あ、おじさん…有難う…!」と叫ぶが、ベーゼはこちらも向かずに一言。
ベーゼ「気が向いただけだ」
そう言い残し、身体を簡単に拭いたベーゼはさっさと着替えを済ませ、自分の部屋に戻ったのだった。
………
…
しおりを挟む深い眠りについているフェルトを気にせず、ベーゼはガシャガシャと物音を立てて起き上がる。そして、乱暴にドアを閉めると地下の大浴場へと向かった。
ベーゼ「…」
ロビーはすっかり真っ暗だったが、カウンター脇の地下への階段には仄かな明かりが灯り、足場も気にせずに浴場へと着くことが出来た。見渡す限り、明かりは"炎の魔力"が宿った魔法の石をガラス細工に仕込み、情緒あるように明かりを展開しているようだ。妙な配慮をしていることに、ベーゼは「もっと力を入れるところがあるだろうが」と一人呟く。
ベーゼ「さて…」
帽子を外し、黒のコートを脱ぐと、籠に仕舞わずその辺に投げる。一応、錆びを気にせずにアクセの一部や小型のナイフは装備したままではあるが、タオルも身に着けず、浴場の扉を開き、中に入った。
ベーゼ「ほう…」
感心するところは、素直に感心する。
フェルトも浴場に久々に人間界を感じたようだったが、ベーゼも何か思いに更けるような顔を見せた。
ベーゼ「かけ流しは、この辺では珍しくもないが……」
豊富な湯量は、更衣室付近の側溝まで溢れだす。何とも豪快で気持ちが良くなる造りだ。
ベーゼ「…」
近くの桶で、湯船から少しすくってかけ湯しつつ、周囲を見ると浴槽近くには腰掛けに石鹸が用意され、使った形跡があることからフェルトだろうと納得。そして、ここでようやく、まだ装着していたアクセの一部を石鹸の近くに置いて、湯船に足を入れた。
ベーゼ「ふむ……」
熱めではあるが、お湯の質は柔らかめで、身体はすぐに馴染む。腰を下ろすとベーゼの長い髪の毛は湯に浮いてしまったが、別に周りに誰がいるわけでもなく気にする様子はない。
ベーゼ「…」
湯に浸かったまま静かに目を閉じ、瞑想を始める。彼が何を思っているのかは誰が知ることでもないが、この時ばかりはリラックスしているように見えた。しかし、彼が望んだ静かな時間は、そう長くは続かず。
ベーゼ「ん…」
突然、"がらり"と温泉の戸が開き、現れたのは小タオルを頭に乗せたレイナであった。
レイナ「……ありゃ!」
ベーゼ「お前か…」
レイナは慌てて「お客様がいたら、私は後で入ります!」と戻ろうとしたが、ベーゼは「気にするな」とそれを止めた。
レイナ「でも、ベーゼは私と一緒だと嫌じゃないです?」
ベーゼ「ガキが一人増えたところで、変わることは無い」
レイナ「……そうですかっ!」
元気よく返事するが、それに対してはベーゼが少し怪訝そうな顔をした。
ベーゼ「ただ、声を上げたりはするな。浴場は声が良く響くからな」
レイナ「はいっ!気をつけますっ!」
ベーゼ「…」
話が通じていない。取り敢えず彼女は静かに戸を閉めると、ベーゼの使った桶で湯をすくい、かけ湯で身体を簡単に洗うと「失礼します」と言って湯船に浸かった。
レイナ「ふぅー…」
小タオルは頭に乗せたまま、至福の表情で湯に沈む。
先ほどまでは桃色のゴムで赤髪をサイドに結っていたが、今は髪を降ろし、ベーゼと同じくお湯に髪の毛を浮かせている。
ベーゼ「…」
それを見たベーゼは、最初こそ気にしていなかったが、レイナに「おい、ちょっと来い」と呼び寄せた。
レイナ「なんですかー?」
ざぼざぼと水音をたてて傍に近づく。ベーゼはレイナに「あちら側を向け」と背中を向かせ、頭に乗せたタオルを取ると浮かぶ髪の毛の水を軽く絞り、簡単に水を拭うと慣れた手つきで彼女の長い赤髪を小タオルでアップスタイルに直した。
レイナ「!」
驚いたレイナは振り返り、有難うございます!と頭を下げた。勢いよく、水しぶきがベーゼの顔にかかるが、不機嫌そうな顔をするだけで何も言うことはない。
レイナ「私も、ベーゼおじさんの髪の毛をなおしましょーか?」
こちらを向いて首を傾げて尋ねるが、ベーゼは「俺のことは気にするな」とあちら側を向かせ、グイグイと押した。
レイナ「あわわっ」
ベーゼ「……あとは静かにしていろ」
ふぅと一息ついて、再び目を閉じる。
だが、大人びた子供でも、所詮は子供である。静かにしていろと言われても、構いたくなるし、構ってほしくなる。
レイナ「…」
彼女は離されてもめげずに、ベーゼの傍に近づく。
ベーゼ「……あっちに言っていろと言った筈だが」
レイナ「つ、つい……」
ベーゼ「あのな」
レイナ「ベ、ベーゼおじさんは優しいんですね!」
ベーゼ「何?」
突然の「優しい」という言葉に、反応する。
レイナ「髪を結んでくれたり、宿に泊まってくれたり。おじさんは良い人ですね!」
ベーゼ「……馬鹿を言え」
手を払うように動かし、彼女の顔にお湯をかける。
レイナ「わっぷ!…で、でも優しいと思います!」
ベーゼ「何言ってやがる。俺が優しかったら、商売あがったりだ。どうやってここまで生きてきたと思っている」
レイナ「う…、でも……」
レイナから見た彼の身体には、痛々しい傷がいくつもついていた。幼いなりにも、彼がどんな生活をしてきたのか想像がつく。
ベーゼ「傷が珍しいか」
レイナ「ううん、そんなことないです」
ベーゼ「……物怖じしない奴だ」
得体の知れない格好に、不気味な風貌。見慣れていない人間ならば誰もが不気味に思い、知れば存在に恐怖するというのに。
ベーゼ「いくら宿屋の娘だろうが、お前は変わっているな」
レイナ「そうでしょうか?」
ベーゼ「無駄に料理が作れたり、俺を怖がらないとはな」
レイナ「……怖くなんてないです!」
"ザボンッ!"
勢いよく立ち上がり、お湯を山なりに動かして浴場いっぱいに響く声で言った。
ベーゼ「……やかましいぞ」
レイナ「あ…!ご、ごめんなさい……」
ベーゼ「静かにしていろ」
レイナ「は、はいです……」
レイナは一旦落ち着くと、両腕を浴槽の縁につけて休むベーゼを見上げながら、小さく呟いた。
レイナ「本当に、怖くないのに……」
お湯に沈み、顔半分だけ出してジトっとした目でベーゼを睨んだ。
睨まれたベーゼは「あぁ、そうかい」と一言。
ベーゼ「……そこまで言うなら、俺の商売は終わりだな」
レイナ「え、終わり?」
ベーゼ「お前のようなガキが怖くないのなら、俺の金貸しも廃業だって意味だ……ったく」
縁に置いていた両手を支えにして立つと、レイナの頭をポンを叩いて湯船から上がった。
レイナ「ベーゼおじさん……」
ベーゼは横にあった腰掛けに座ると、軽く肩を回してストレッチし、近くにあった桶の裏を簡単に洗って手前に置いた。そして、レイナに「背中向けて座れ」と桶の裏をチョイチョイと指差した。
レイナ「え?あ、はい…!」
お湯から出たレイナは、言われた通りベーゼの手前の桶に座る。
ベーゼ「……石鹸だが、頭も洗えるタイプか」
レイナ「はい、そうですけど…もしかして……!」
ベーゼ「いいから黙ってろ」
彼女の小タオルを取ると、指先で毛先から根元を梳かしながら髪の毛を広げる。
ベーゼ「目を閉じてろ」
レイナ「…はい!」
彼女がギュっと目を閉じたのを確認してから、お湯をすくって頭に被せたあと、石鹸を泡立せ、毛先からゆっくりと泡を馴染ませながら頭に円を描くように指でマッサージをするように洗い上げる。
レイナ「にゃ…!」
ふわふわの泡が髪の毛に馴染ませたのを確認すると、先ほど腰掛けの近くに置いたアクセサリーの指輪を片手に嵌め、ピン!と弾いた。
ベーゼ「最初は冷たいぞ」
レイナ「ひぁあっ!?」
指輪に埋め込まれていたのは、"水"の力。特に水気の多い浴場ということもあって、弾かれた指輪からは勢いよく水が噴射した。
ベーゼ「…」
すぐに別の桶を手に取り、温かいお湯と水を被せ、ぬるま湯にする。レイナは「だ、大丈夫です!」といって泡が流れ落ちるのを待った。
ベーゼ「フン…」
全ての泡が流れ落ちると、小タオルをギュッと絞り、彼女の顔を拭く。その後、もう1度絞り直したそれを髪の毛を簡単に拭き直すと、あとは勝手にしろと言って、また湯船に浸かった。
レイナ「ベーゼおじさん…。あ、ありがとう……」
ベーゼ「気が向いただけだ」
レイナ「……えへへ、でもね、何だか嬉しかったの」
屈託のない笑顔で、ベーゼにお礼を言った。
ベーゼ「……無垢だな、お前は」
レイナ「え?」
ベーゼ「純粋過ぎる。もっと危険な場所にいると自覚を持て」
レイナ「どーいう…こと……?」
トテテと歩き、近づいて湯船に浸かろうとする。ベーゼは「おい、待て」とそれを止める。
ベーゼ「後ろ向け。折角洗ったのに、また温泉につけたら洗い直しだろうが」
レイナ「あ、そ…そっか……」
フェルトが居たら、有り得ないと大声で言う光景だ。ベーゼは彼女の髪の毛をアップスタイルにさせ、お湯に触れないようにした。
ベーゼ「やれやれ…。どうして風呂に浸かって疲労せねばならないのか」
髪の毛を直すと、ベーゼはそのまま風呂から上がって更衣室へと向かう。慌ててレイナは「あ、おじさん…有難う…!」と叫ぶが、ベーゼはこちらも向かずに一言。
ベーゼ「気が向いただけだ」
そう言い残し、身体を簡単に拭いたベーゼはさっさと着替えを済ませ、自分の部屋に戻ったのだった。
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