非アルコール性肝脂肪、非アルコール性脂肪性肝炎
肝炎イコールお酒または肝炎ウィルスと連想する方が多いかもしれませんが、アメリカではこの非アルコール性肝脂肪と脂肪性肝炎が最近急増しています。日本もアメリカに従い同じ傾向にあるようです。アメリカでは総人口の25-35%が非アルコール性肝脂肪だといわれています。
非アルコール性肝脂肪と脂肪性肝炎の症状は稀に疲労感や腹部の違和感を感じることもありますが、殆どの場合何も感じることが無く病状は進行していきます。通常の血液検査では初期段階で非アルコール性肝脂肪と脂肪性肝炎を発見するのは困難で、ASTやALTと言った肝臓に由来するマーカーが上昇することもありますが、初期段階での診断ではフェリチンが殆どの場合に上昇します。通常の肝臓は脂肪を5%ほど蓄えていますが、脂肪が10%以上になった場合肝脂肪になります。超音波を使った診察では肝脂肪が15%以上になると肝脂肪が画像で判定できるようになります。
非アルコール性肝脂肪と脂肪性肝炎の原因に大きく関与しているのは果糖とインスリン抵抗性です。なぜ果糖の摂り過ぎに原因があるのでしょうか?果糖と聞くとフルーツに含まれる糖分だから砂糖より体に良い様なイメージがありますが、果糖の摂りすぎは体にとって非常に危険です。フルーツを食べても普通、果糖の摂り過ぎにはなりません。では、どこから余分な果糖はやってくるのでしょうか?それは砂糖(Sugar)と果糖ブドウ糖液(High Fructose Corn Syrup)。果糖は非常に多くの食品に含まれます。(ジュース類、パン、お菓子、バーベキューソース、ケチャップ、マスタード、缶詰、みりん風調味料等々。)アメリカでは平均すると果糖の摂取は一日あたり54.3g(通常の果物、野菜からの摂取だけでは平均15g)と言う統計です。
砂糖も果糖ブドウ糖液も、でん粉と同じ炭水化物ですが、大きな違いがあります。でん粉(米、小麦、芋など)はブドウ糖が沢山集まった多糖類ですが、砂糖はブドウ糖と果糖が二つ繋がった2糖類。果糖ブドウ糖液はおおよそ55%が果糖で、45%がブドウ糖でできています。
果糖とブドウ糖は同じ糖でも体に入るとまるで違う働きをします。ブドウ糖は80%が筋肉や脳、臓器で消費され20%が肝臓で代謝されます。ところが果糖はどの臓器でも消費することができません。唯一肝臓だけが果糖を代謝することができます。
2番目の違いは肝臓での代謝のされ方の違いです。肝臓に吸収されたブドウ糖は殆どがグリコーゲンと呼ばれる物質に代謝され肝臓に貯蔵されます。このグリコーゲンは肝臓にとって一切毒性が無く、肝臓は限りなくグリコーゲンを貯めこむことができます。一方肝臓に吸収された果糖はまずフルクトース-1-リン酸に変換されます。この過程の副生産物として尿酸が大量に作られます。(尿酸は通風、腎臓結石、高血圧の原因となります。)代謝されたフルクトース-1-リン酸はいくつかのステップを経てVLDL(超悪玉コレステロール)、中性脂肪、遊離脂肪酸に代謝されます。またjunk1と言う酵素を活性化させ肝臓内での炎症(肝炎、肝硬変の始まり。)を引起します。junk1は肝臓へのインスリンの働きを悪化させ、すい臓からもっと多くのインスリンを分泌させてしまいます。遊離脂肪酸は血液中に放出されると筋肉でのインスリンの働きが悪化します。インスリンの働きが悪化するとインスリン抵抗性という状態になり、すい臓はより多くのインスリンを分泌するようになります。インスリンが増えるとエネルギーを蓄えるようになるので脂肪がより一層増えるようになります。ですから果糖の肝臓への毒性はアルコールとほぼ同等、それ以上と言えます。(150カロリー分のコーラを飲むと90カロリーが肝臓で代謝されます。ビールを同じ150カロリー分飲むと92カロリーが肝臓で代謝されます。)
これだけでなく、インスリンの抵抗性が増えると満腹を感じさせるホルモンのレプチンの働きが鈍り、常に空腹を感じることになります。ですから砂糖、果糖ブドウ糖液を多く食べると脂肪が増え常にお腹が減り、もっと甘いものが食べたくなります。そして非アルコール性肝脂肪と脂肪性肝炎へと発展していきます。
非アルコール性肝脂肪と脂肪性肝炎の治療ですが、まずは食事と体重をコントロールすることが一番重要です。食事法は低炭水化物、高たんぱく質を基本にします。脂肪分は魚、オリーブオイル、ナッツや種子類のみから摂るようにし、肉、乳製品、卵はなるべく避けるようにしてください。食用油はオリーブオイル、紅花油、ココナッツオイル、ごま油、フラックスシードオイル、アボカド油を使ってください。野菜は多く食べるようにします。特に根菜類、苦味成分を含む葉野菜、ブロッコリー、カリフラワーを多く食べてください。これらの野菜には肝臓の解毒機能を高める働きがあります。特にアブラナ科の野菜(ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ、ラディッシュ、大根)にはスルフォラファンと呼ばれる物質が多く含まれ肝臓の解毒遺伝子を活性化したり、肝臓内での抗酸化物質の生産を促進することで肝臓の炎症を防ぎます。フルーツは果糖の摂りすぎになることもありますので注意してください。ベリー類、キウイーは糖分が低めのフルーツですので一日1品は大丈夫です。穀物は玄米、ホールウィートでできたものにして下さい。カレー粉に含まれるウコンには肝臓の炎症を抑える働きがありますので、カレー粉を使った調理は肝脂肪、肝炎の治療にも有効ですが、カレーのルーには脂肪が多く含まれていますので間違えないでください。水分の摂取はもちろんジュース類を全て避けてください。お水を基本として、一日に数杯の緑茶を飲んでください。緑茶に含まれるEGCGというバイオフラボノイドには抗酸化、抗炎症作用があり肝臓への脂肪の蓄積を予防し、肝臓の炎症を軽減します。
運動とダイエットは注意をしながら行う必要があります。急激な体重の低下は脂肪を分解し遊離脂肪酸を大量に血液中に放出することになります。遊離脂肪酸は肝脂肪、肝炎を悪化させることになります。理想としては1週間に0.5-1キロのダイエットが望ましいです。運動量はランニング、水泳、自転車などの有酸素運動を30-40分を目安に週に5回程度、筋トレを20-30を目安に週に5回程度が理想ですが、自分のできる範囲内で運動量を増やしていってください。筋肉が増えることでインスリン抵抗性が低減し脂肪酸を多く燃焼することができますので肝脂肪、肝炎の治療には非常に重要です。
生活習慣で気をつけていただきたいのは睡眠と毒物です。睡眠時間が減るとグレリンというホルモンが増えます。このグレリンが増えると脳は食欲が増し、甘いものを食べたくなります。逆に睡眠時間が増えるとレプチンというホルモンが増えます。グレリンとは逆に、満腹感を感じやすくなります。毒物といっても急性の毒性のあるものではありません。慢性的な毒物にはいくつかの代表例があります。アルコール、重金属、有機化学物質。全て肝臓の炎症を悪化させます。
サプリメントで非アルコール性肝脂肪と脂肪性肝炎の方に有効なものにオメガ3、アルファリポ酸、フォスホチジルコリン、ニーム、ギムネマ、ウコン、レスベラトロール、ミルクシスレがあります。オメガ3には炎症を抑える働きがありますので肝炎の症状を軽減することができます。アルファリポ酸には優れた抗酸化作用があるだけでなく、インスリン抵抗性を緩和し血糖値を改善させます。また肝硬変の予防、治療にもなります。フォスホチジルコリンは肝臓に蓄積した脂肪を溶かす働きがあります。ニームには肝臓での糖の代謝を改善させ脂肪が蓄積し難くさせます。ギムネマにはインスリンの働きを助け血糖値を低減させる効果があります。ウコンとレスベラトロールには脂肪に由来する炎症を軽減させる効果があります。ミルクシスレは肝臓を保護する働きに優れ、肝炎から肝硬変へと進行するのを防ぎます。また肝臓の炎症を防ぎます。
非アルコール性肝脂肪と脂肪性肝炎の治療に一番重要なのは食事と運動です。サプリメントは補助として考えてください。非アルコール性肝脂肪は症状が一切無いのが特徴ですので放置される傾向にありますが、放っておくと脂肪性肝炎そして肝硬変、肝臓がんへと進行していきます。また、糖尿病がなくても砂糖の摂取が多い方は非アルコール性肝脂肪を罹患していることがありますので定期的な医師の診断をお勧めいたします。