全身清拭の目的と観察項目、各部位における看護手順・留意点 2015/7/7

公開日:2014年12月9日 / 最終更新日:2015年7月7日

全身清拭の留意点

 

  • 全身清拭は、どのような健康状態にある患者にも適応できる。全身の皮膚の清潔を保つための看護技術である。

 

  • 清拭は、患者の状態によって一度に全身清拭を行う場合と、患者の状態や日によって部分的に清拭する部分清拭の方法がある。

 

  • 石けんによる全身清拭が基本になるため、ここではその方法について記す。

 

目的

 

  • 全身の皮膚・粘膜の表面に付着している垢や汚れ、汗を取り除いて清潔にするとともに、感染を予防する。
  • 身だしなみが整えられ、心身の爽快感を得ることができる。
  • 皮膚に刺激を与え、血液循環が良好になり、皮膚・粘膜のトラブルを予防する。
  • 筋肉を刺激したり、他動運動の機会となり、筋肉の拘縮を予防する。
  • 全身を観察したり、スキンシップによるコミュニケーションをはかる機会となる。

 

適応

 

  • 病状により入浴・シャワー浴ができない患者

 

全身清拭

 

物品・患者の準備

 

①患者に全身清拭について説明し、承諾を得る。

②着替えをそろえる。

③バケツに熱い湯(60℃以上)を入れる。

④大きいピッチャーに水を入れる。

⑤室内の温度を患者の希望する温度(通常は24±2℃)に、気流が当たらないように調節し、プライバシーが確保できるようにカーテンを閉める。

⑥ベッドの上、周辺を、清拭用の物品を配置できるように片付ける。

⑦必要物品をベッドサイドに運び、作業手順を考えて配置する。

⑧2つのベースンに52〜55℃の湯を2/3程度ずつ入れる。

[根拠]:手を入れてウォッシュクロスをしぼれる最高温度がだいたい52〜55℃で、ウォッシュクロスをしぼって肌に当てたときにも冷たくない温度である。

 

⑨患者にタオルケットをかけながら、足下に毛布などの掛けものを下げて折り畳む。

⑩タオルケットの下で、寝衣類を脱がせる。

[根拠]:患者に寒気を感じさせないためである。

・和式の寝衣、ネグリジェは袖を脱がせ、身ごろを上半身部分まで折り畳む

・パジャマは、上着のみを同様に脱がせ、前身頃のみを折り畳む

 

⑪えりもとに乾いたフェイスタオルをかけておく。

 

全身清拭の実際(全身のすべての部分に共通する清拭方法)

 

①ウォッシュクロスを手に巻き、湯に浸して絞り、石けんをつけて泡立たせて清拭する。

・石けんが泡立たない場合には、湯を手で少量すくってかけ、泡立たせる

 

②石けんを拭き取る時は、ウォッシュクロスを石けん用のベースんで洗って絞り、拭き取る。

③その後、すすぎ用のベースンで洗ったウォッシュクロスで2〜3回清拭し、石けんが残っていないことを確かめてから、乾いたバスタオルやフェイスタオルで水分を拭き取る。

 

④湯は汚れ具合、温度の冷め具合によって適宜交換する。

・その際は、ベースンの汚れも落として新しい湯を入れる

 

—必要物品—

 

①ベースン2個(石けんを使用するもの、拭き取り用各1個)

②バケツ2個(湯を入れるもの、汚水入れ各1個)

③ピッチャー2個(大、小各1個)

④ウォッシュクロス1枚

⑤ガーゼ(四つ折りガーゼ2枚)、ペーパータオル4〜5枚

⑥ゴム手袋

⑦フェイスタオル2枚

⑧バスタオル2枚

⑨タオルケット1枚

⑩石けんと石けん入れ

⑪水温計

 

<顔、頸部の清拭>

 

①ウォッシュクロスを湯に浸して絞り、手に巻いて顔を清拭する。

・希望により、洗顔石けんをつけて拭くこともある

・片手で頭部を押さえて目頭から目尻に向かって軽く拭き、ウォッシュクロスを洗ってから反対側を拭く

・前額部を中心部から左右に拭き、鼻、頬、鼻翼から口の周囲を8の字を描くように拭く

 

②頸部、耳(耳介)を拭く。

・頸部は胸部の方向に向かって拭く

・耳は耳垢もよく観察する

 

③顔、頸部、耳を清拭したら、えりもとに置いたフェイスタオルで水分を拭き取る。

・石けんをつけた場合は、ウォッシュクロスをゆすいで、石けんをよく拭き取る

 

<上肢の清拭>

 

①看護師の反対側の上肢を出し、下にバスタオルを敷いて包んでおく。

②バスタオルから清拭する上肢を出し、石けんをつけたウォッシュクロスで、手指、手掌、手背、前腕、上腕、肩、腋窩の順に末梢から中枢に向かって拭く。

・患者の体位が不安定にならないように、前腕を拭く時は手首を持ち、上腕を拭く時は肘関節を持って拭く

・腋窩は皮脂による汚れも多く、観察しながら拭く

 

③石けんはゆすいだウォッシュクロスで拭いて落とす。

④下に敷いたバスタオルで水分を拭き取る

⑤清拭した上肢にタオルケットをかける。

⑥反対側の上肢を出し、下にバスタオルを敷いて包み、同様に清拭する。

 

<胸部、腹部の清拭>

 

①胸部にバスタオルをかけ、タオルケットを腹部まで下げ、タオルケットの縁にフェイスタオルをかけておく。

・タオルケットやバスタオルは体に密着させてかける

[根拠]:タオルケットやバスタオルの隙間に冷たい空気が入り患者が寒気を感じないようにする

・胸部を拭くときには、湯に浸して2枚重ねて絞ったフェイスタオルを半分か1/4に折って腹部全体を覆い、その上にバスタオルをかけておく

 

②胸部を石けんをつけたウォッシュクロスで拭き、ゆすいだウォッシュクロスで石けんを拭き取る。

③フェイスタオルで胸部の水分を拭き取る。

④胸部にバスタオルをかけ、タオルケットをそのまま下腹部まで下げる。

⑤腹部を石けんをつけたウォッシュクロスで拭き、ゆすいだウォッシュクロスで石けんを拭き取る。

・腹部を拭くときには、胸部を冷やさないように、湯に浸して2枚重ねてしぼったフェイスタオルを半分か1/4に折って胸部を覆い、バスタオルをかけておく

 

⑥フェイスタオルで腹部の水分を拭き取る。

⑦胸部にかけていたバスタオルを除去し、タオルケットを全身にかけて足下まで伸ばす。

 

<下肢の清拭>

 

①看護師の立っている反対側の下肢をタオルケットから出し、バスタオルで包む。

・手前の下肢には、タオルケットをかけておく

 

②石けんをつけたウォッシュクロスで、足の指、甲、裏、下腿、大腿の順に末梢から中枢部に向かって拭き、ゆすいだウォッシュクロスで石けんを拭き取る。

③下肢の水分をバスタオルで拭き取る。

④反対側の下肢も同様に清拭する。

⑤両下肢の清拭が終わったら、タオルケットを全身にかける。

 

<背部、殿部の清拭>

 

①患者に看護師に背を向けて側臥位になってもらい、身体の下にバスタオルの端を入れ込むように敷く。

・敷いたバスタオルを背中にかけておく。このとき、湯に浸して2枚重ねてしぼったフェイスタオルを半分にして背中全体を覆い、その上からバスタオルをかけておくと、体全体が温まり、心地よさを与えることができる。

 

②背中を蒸しているあいだにウォッシュクロスに石けんをつけて準備し、背部、肩、腰部、脇、殿部の順に拭く。

・患者の身体が不安定にならないように、必ず片手で肩や腸骨部を押さえながら拭く

 

③石けんをゆすいだウォッシュクロスで拭き取る。

④乾いたバスタオルで水分を拭き取る。

⑤肛門裂溝からその周囲は、ゴム手袋を着用し、ガーゼに石けんをつけ泡立てたもので拭き、ペーパータオルまたはガーゼで石けんを拭き取る。

・ガーゼは石けんをつける前に、熱めの湯に浸してしぼっておく

・石けんを拭き取るペーパータオルやガーゼも熱めの湯に浸してしぼっておく

 

⑥乾いたペーパータオルで肛門裂溝、その周辺を軽く拭き、よく乾かす。

⑦ゴム手袋をはずす。

⑧着替えの寝衣の袖を通し、背中に広げて仰臥位になってもらい、反対側の袖を通し前を合わせる。

⑨乾いたバスタオルを胸部にかけ、タオルケットは膝の位置まで下げる。

 

<陰部の清拭>

 

①膝を立て、両下肢をすこし開いてもらい、殿部の下にバスタオルを半分くらいに折り敷きこんでおく。

②拭き取り用のガーゼ、またはペーパータオルを熱めの湯でしぼって準備しておく。

③ゴム手袋を着用し、しぼったガーゼに石けんを泡立てて軽く肛門部や陰部を拭く。

[根拠]:肛門部は大腸菌などによる汚染があることも予測されるために、感染防止のためゴム手袋を着用する。また、陰部の粘膜を看護師の手により傷つけたり、直接、看護師の手が患者の陰部に触れ不快感を与えないようにゴム手袋を着用する。

・鼠径部も汚れやすいために観察しながら拭く

 

④用意していた拭き取り用のペーパータオルやガーゼで石けんを拭き取る。

・陰部は強くこすらないように十分気をつける

 

⑤乾いたペーパータオルで水分を拭き取る。

⑥ゴム手袋をはずす。

⑦下着をつけて寝衣を着せ、しわのないように整える。

⑧患者の疲労度、爽快感を尋ね、必要があればバイタルサインを測定して終了する。

 

<後片付け>

 

①掛けもの、枕などを元通りにし、カーテンを開ける。

②使用したベースン、バケツ、ピッチャーは洗って乾かし、石けんも洗ってもとの場所へ戻す。

③タオル類は、規定に沿って洗濯に出す。