あなたは日本のスーパーで野菜を買うときに、生産地が中国産だと購入するのをためらった事がありませんか?なぜなら、テレビやネットで中国産の野菜が危険だと盛んに伝えられているからです。
私も野菜が中国産だと「農薬が残っているのではないか」「食べたら体に悪いのではないか」と心配になります。
しかし、実際に中国に行き、農業の現場を見ると少し意見が変わりました。それは安全性の高い野菜を育てようと、国をあげて取り組んでいるからです。
今後は国民の安全への意識が高まり、農業への安全への規制が高まるでしょう。そうなれば、日本と同レベルの野菜が育つことになります。
このページでは、私が見てきた中国での野菜作りの現状を紹介し、今後の中国の野菜がどのように変わっていくかを考えてみます。
中国産の野菜に対する不安の原因
2004年に中国産の冷凍ホウレンソウの残留農薬事件がありました。以前から中国産の野菜に対する不安はささやかれてましたが、この事件をきっかけに中国産の食品全般に対する不安が高まりました。
それ以外にも、私の知り合いの野菜を輸入している方の話では、年に数回、中国産の野菜から基準値以上の農薬が検出され、日本の税関で輸入をストップすることがあると聞きました。
中国産の野菜が危ないと言われる理由
なぜ、中国産の野菜から基準値以上の農薬が検出されるのでしょうか?
理由は3つあります。
- 多くの人口を賄うためには大量の野菜を育てる必要があります。そのため虫や病気の被害から野菜を守るために、大量の農薬を使わなければならなかったから。
- 日本では安全性の理由から禁止されている農薬が、いまだに使われているから。
- 農薬の使用方法を守っていなかったから。
このように中国では野菜を大量生産するために、必要以上の農薬をつかっていました。それが消費者の口に入るまでに、農薬の成分が分解されず残ってしまっていたのです。
中国人の意識の変化
残留農薬事件が起こってから、中国国内では安全な野菜に対する要求が高まっています。
今では中国産の野菜に対する危険性を、中国人が心配しています。これまで中国人は買ってきた野菜を、絶対に生では食べませんでした。買ってきた野菜を洗って、炒めたり、茹でたりして食べます。野菜についた農薬を洗い流す洗剤があるという話も聞いたことがあります。
しかし、私が前回上海に行ったとき食事にサラダが出てきました。驚いたのと同時に、ついに生で野菜を食べる習慣が出来たんだと感じました。
サラダを食べるということは、農薬を含め野菜の危険性を下げないといけません。農薬の残った野菜を生で食べるのは抵抗があります。それが出来るようになっているということです。サラダの味も日本の野菜とかわりませんでした。
今後、欧米の文化が広まっていくと、中国人も生で野菜を食べる機会は増えていきます。そうなると、野菜の安全性への要求は、さらに高まっていくはずです。
中国で農業の現場を見て感じたこと
私が日本で有機栽培を始めて数年したころから、中国から栽培を指導してほしいという依頼が来るようになりました。そこで現地に視察に行き、実情を見る機会が増えてきました。時間が経つにつれて、中国の状況が変わっています。
大連市近郊の農家
私が初めて中国に行ったのは、中国北部にある大連市近郊の農園でした。冬だっとので、かなり寒かったのを覚えています。川の水がカチカチに凍ってました。ここで私に有機野菜の栽培を指導してほしいということです。
その農園の方は有機農業の技術は全くわかりません。農家たちは多くの人を雇い作業していました。人件費が安かったからです。ただ、農薬に関しては思った以上に使っていないません。農薬は価格が高いからです。肥料に関しても、値段の安い鶏の糞を使っていることが多く、次に安い化学肥料を使っていました。
スーパーで有機野菜は売っていましたが、普通の野菜に比べて値段が5倍近くします。市場の物価は日本より安いのですが、有機野菜は日本と同じぐらいの価格でした。それでも、たくさんの人が求めているという話です。
このタイミングで有機野菜の栽培を軌道に乗せることができれば、利益がでると感じました。中国での有機農業はとても良いビジネスチャンスなのです。
残念ながら、最終的に契約にはなりませんでしたが、有機農業の可能性を感じることが出来ました。
シンセン市近郊の農場
次に依頼があったのは、香港に近いシンセン市です。気候は暖かく、台湾と似た気候です。温暖な気候のためなのか町中に街路樹がたくさん植えてあり、自然の多い綺麗な街です。ここで私は会社組織に入り農園運営を手伝ってほしいということになります。この運営会社は各地に大規模な農場をもち、すでに有機野菜を栽培し、なおかつ販売も自分たちでしていました。
現場をみると、有機野菜がそれなりに育っています。中国で無農薬の野菜を育てている現場をみて感動しました。相変わらず人の手を総動員する方法でしたが、管理されている農園は、日本にある私の農園より綺麗なのではないかと思うほどです。
この運営会社はかなり大きく、大株主と数人の株主で構成されていました。中国人の中でも富裕層は農園経営に対しとても興味をもち、次の投資先として農業を考える人はたくさんいます。このときも数人の出資者があつまりました。
結局、話はなくなりましたが、有機栽培の技術はあがっているなと感じました。
上海近郊の農園
次に依頼をうけたのは上海から1時間ほどの農園です。前回よりさらに規模が大きく、行政を巻き込んだ観光農園を運営する会社です。
上海は中国最大の都市で富裕層も多いためか、安全や健康に対する意識が高い人がたくさん住んでいます。週末にはイチゴやトマトなどの収穫体験をするために、上海からお客さんがやってきます。
設立当時から日本人の技術者をよび、野菜の栽培方法を学んで野菜を育てています。ここで私は有機野菜の栽培を指導をしています。
日本の野菜と同じ種を使い、同じ栽培方法で育てているので、地元での評価はすこぶる高いです。今後は日本の企業と協力し、さらに良い野菜を育てることになります。
中国産野菜のこれから
上に書いたことは、自分の目で見た一部の中国の話ですが、確実に農業の技術はあがっていると感じます。そして消費者の野菜に対する安全への意識も上がっています。
そして、お金を持つ投資家が農業に投資するので、大卒の優秀な若者が農業者が育てるための資金もあります。さらに中国政府も農業に力を入れています。農業が発展する土台が出来つつあるのです。
中国政府の不正に対する取り締まり
以前から中国にも独自の有機野菜の基準がありました。しかし不正が多く、中国人は有機野菜を信頼していません。
その後、習近平体制になった時に、不正をした役人を処罰しているのを日本のテレビなどで放送しているのを目にした方もいるでしょう。そのとき有機野菜に対する不正も処罰の対象になり、偽物の有機野菜は一斉に摘発されました。一時は流通している有機野菜は半分になったという話です。
今後は不正の無い、本物の有機野菜が流通することになります。
野菜の輸出には安全性が求められる
中国は育てた野菜をたくさん輸出しています。日本をはじめ、東南アジア、ヨーロッパなどに野菜を輸出しています。
野菜を中国国内以外に輸出するには、輸入国の安全基準を満たさないといけません。そのため中国国内でも輸入国の安全基準で野菜を育てることになります。
例えば、日本に輸出している中国産の野菜は、日本で育った野菜と同じ安全基準で育ったものでなければ、日本に輸出できません。特に、上記の残留農薬事件以降、中国国内でも制度が強化されました。さらに日本の検疫体制も厳しくなりました。
少しの残留農薬が見つかれば、すぐに輸入が禁止されてしまいます。
また、日本よりも基準の厳しいヨーロッパに輸出するには、より厳しい管理のもと野菜を育てなくてはいけません。
そのため、今日本で輸入される中国産の野菜については、ほぼ日本と同じレベルの安全性が確保されています。
まとめ
かつての中国は、食料の増産体制をとるために、化学肥料や農薬をたくさん使ってきました。今も一部では危険な野菜は流通しています。
しかし多くの事件を経て、中国人自身が安全な野菜を求めだしました。そして、政府も民間企業も農業の可能性に多くの投資をすることで、安全性の高い野菜を育てる土台が出来つつあります。
そこに、高い技術を学んだ人材が育つことで、今後は日本と同じレベルの野菜が育ってきます。そうなると、中国国内はもちろん、国外に輸出する野菜についても、安全性が高く、品質の良い野菜が育つでしょう。