泌尿器科学講座紹介

進行性尿路上皮癌に対するゲムシタビン-シスプラチン併用化学療法(GC療法)

  1. はじめに

  2. 尿路上皮癌の治療には、手術的な病巣の摘出、放射線治療、抗癌剤による化学療法などが考えられます。このうち手術、放射線治療は原則として局所的な治療と考えられます。これらの治療で十分な効果が期待できない場合やその効果を増強する目的で抗癌剤による化学療法を行われています。また、全身的な効果を期待する場合には全身化学療法を行うことが一般的です。これから説明する治療はこのような全身化学療法の1つの化学療法です。
    ゲムシタビン、シスプラチンの2剤併用による尿路上皮癌の化学療法について基本的で重要なことを以下にご説明します。

  3. 治療について

  4. シスプラチンは、1983年に元厚生労働省から承認され、比較的広い抗腫瘍効果のある化合物であることから、膀胱癌、腎盂・尿管癌、卵巣癌、頭頸部癌、胚細胞腫瘍など幅広く化学療法剤として使用されています。
    ゲムシタビンは日本で既に非小細胞肺癌、膵癌、胆道癌の治療に対し承認されている薬剤で2008年11月尿路上皮癌に対しても承認がおりました。すでに海外、日本の臨床試験において尿路上皮癌への有効性が報告されています。
    ゲムシタビン+シスプラチン併用療法は、従来の化学療法と治療効果はほぼ同等ですが、より副作用が軽減されていることが大規模臨床試験で明らかになっており、現在我が国をはじめ世界中で進行性尿路上皮癌への標準治療(第一に選択する治療)になっています。海外の治療成績の報告をまとめますと、奏効率(腫瘍が小さくなった率+消失した率)は23~57%という成績をおさめています。

  5. 治療方法

  6. 投与スケジュール
    薬剤 標準投与量
    (体表面積あたり)
    1日目 2日目 8日目 15日目
    シスプラチン 70mg/m2
    ゲムシタビン 1000mg/m2

    治療第1日目を点滴静注し、治療第 1, 8, 15 日目にゲムシタビンの点滴(静脈内注射)を行います。治療第2日目にシスプラチンの点滴(静脈内注射)を行います。その後は休薬日を入れて治療28日目までを1コースとして、同じ内容の治療を繰り返します。なお、第1、2日目の投与は入院して行い、第8、15日目の投与は外来で行う(専用の部屋があります)のが一般的ですが、患者様の状態に応じて変更することもあります。(主治医と相談して決まります。)
    ゲムシタビンとシスプラチンの実際に投与する量は腎機能、肝機能、骨髄の機能の状態など、全身状態により減量する可能性があり、副作用その他の要因により予定された治療や投与日を適宜変更、延期、中止する可能性があります。また、これらの薬剤の他に、点滴、副作用防止の薬剤など、他の薬剤の投与も同時に行われます。
    治療期間中は定期的に症状の観察や適宜の血液検査、腫瘍マーカー、X線検査、CT検査などを行います。いずれもこの治療法の効果と安全性を詳しく調べるために行いますので、従来の治療を行けるときよりも、血液検査や画像診断の回数は多くなるかもしれません。

  7. 予想される副作用

  8. 化学療法の一般的な副作用(有害事象)として、比較的よく認められるのは以下の4つです。

    1. ①骨髄抑制(20~100% :好中球減少、血小板減少、貧血)、感染症(発熱性好中球減少症、敗血症など)
    2. ②粘膜炎(0~10% 口内炎、胃潰瘍など)
    3. ③悪心・嘔吐(0~25% )
    4. ④脱毛(0~60% )
    さらに上記4つ以外の副作用として抗癌剤の血管外漏出、アレルギー、全身倦怠感、食欲低下、下痢、末梢神経障害、臓器障害(肝、腎、心、内分泌腺、生殖器)、浮腫、皮膚の色素沈着、爪の異常や その他の副作用が起こりうる可能性もありますが、これらの副作用の防止および発生後対策は、米国癌治療学会や米国感染症学会の推奨するガイドライン等に準拠して対策を行っています。
    他にも稀に間質性肺炎という重篤な副作用が生じることがありますが、定期的検査により早期発見に努めています。(化学療法前に肺病変がある場合にはこの化学療法できない場合もあります。担当医へご相談ください。)
    また稀ながら死亡にいたる可能性もあります。(GC療法や約1%前後の死亡率が報告されています)。 各薬剤のついての主な副作用について以下に記載します。
    *シスプラチンの主な副作用
    総症例8,787例(承認時1,339例、市販後調査7,448例)における副作用及び臨床検査値異常の発現率は85.6%であり、主なものは嘔気・嘔吐74.6%、食欲不振62.2%、全身Π怠感34.8%、脱毛25.7%、白血球減少36.5%、貧血28.0%、血小板減少17.0%、腎機能低下(BUN上昇14.3%、クレアチニン・クリアランス値低下14.1%、血清クレアチニン上昇6.6%等)でした。
    重大な副作用としては、急性腎不全(0.1%未満)、汎血球減少(0.1%未満)等の骨髄抑制(貧血、白血球減少、好中球減少、血小板減少等があらわれることがあります)、ショック、アナフィラキシー様症状(0.1%未満)、聴力低下・難聴(1.4%)、耳鳴(1.7%)、うっ血乳頭、球後視神経炎、皮質盲(すべて0.1%未満)、脳梗塞(0.1%未満)、一過性脳虚血発作(0.1%未満)、溶血性尿毒症症候群(0.1%未満)
    心筋梗塞、狭心症、うっ血性心不全、不整脈(すべて0.1%未満)、溶血性貧血(0.1%未満)、間質性肺炎(0.1%未満)、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(0.1%未満)、劇症肝炎(0.1%未満)、肝機能障害(頻度不明)、黄疸(0.1%未満)、消化管出血、消化性潰瘍、消化管穿孔(すべて0.1%未満)、急性膵炎(0.1%未満)、高血糖( 0 . 1 % 未満)、糖尿病の悪化( 0 . 1 % 未満)、横紋筋融解症(0.1%未満)が認められました。

    *ゲムシタビンの主な副作用
    本剤単独投与の臨床試験における全投与例は394例であり、そのうち安全性評価対象は369例でした。これらにおいて、本剤との因果関係が完全に否定できない死亡例が、全投与例394例中8例(2.0%)に認められました。8例の死因の内訳は、腫瘍死3例、間質性肺炎2例、感染性肺炎1例及び敗血症2例でした。安全性評価対象369例において認められた臨床検査値異常変動を含む副作用のうち、主なものは骨髄抑制(特に、白血球減少(68.0%)、好中球減少(61.8%)、赤血球減少(58.8%)、ヘモグロビン減少(66.4%)及び血小板減少(32.2%))、食欲不振(45.5%)、悪心・嘔吐(40.1%)、ALT(GPT)上昇(33.5%)、発熱(32.2%)、疲労感(31.2%)、AST(GOT)上昇(30.1%)でした。外国の臨床試験(6,995例)において、本剤との因果関係の有無にかかわらず発現した有害事象のうち、国内における臨床試験において認められなかった項目として、重大なものは、肺水腫(0.7%)、うっ血性心不全(0.6%)、腎不全(1.2%)、気管支痙攣(0.5%)でした。その他の項目として、無力症(18.7%)、浮腫[末梢浮腫(16.0%)、顔面浮腫(1.0%)、全身浮腫(0.3%)]、インフルエンザ様症状(7.3%)、傾眠(2.6%)、筋肉痛(7.2%)、鼻炎(1.1%)、発汗(3.1%)、不整脈(0.9%)が認められました。また、間質性肺炎や肺繊維症などの既往のある方は、重篤な間質性肺炎を引き起こす可能性があるため、十分な観察のもとに慎重な投与が必要です。 (平成21年2月25日現在、薬剤添付文書より改変して引用)
    以上がシスプラチン、ゲムシタビンについて報告されている主な副作用ですが、予想外の副作用が現れることもあります。しかし、すべての患者さんにこれらの副作用が現われるというわけではありません。また、好中球減少に伴い熱が出たり肺炎などの感染症を併発したりすることがあります。また、吐き気が出ることも予想されます。


  9. 医療費について

  10. 本治療はすべて通常の保険診療で行われますので、患者さんはご自身の健康保険内の自己負担分のみの負担となります。 抗癌剤は比較的単価が高額なものが多いため、自己負担額も高額となる場合があります。そうした場合の経済的な負担を軽くするために設けられた制度の一部を下記に示します。

    1. 1) 高額療養費制度:医療費の自己負担額は所得に応じてひと月の自己負担限度額が定められており、その金額を越えた部分は申請により高額療養費として払い戻されます。
    2. 2) 貸付制度:医療費が高額で支払いが困難な場合、高額療養費として払い戻される見込み金額の8~9割相当の金額を無利子で貸し付ける制度です。
    3. 3) 委任払い:保険者によって取り扱っていない場合がありますが、自己負担限度額のみ医療機関の窓口で支払い、高額療養分を保険者から医療機関に支払われる制度です。
    4. 4) 医療費控除:納税者が1年間に本人または家族(生計を1にする親族)のために支払った医療費が一定額を超える場合に、超えた部分が医療費控除となり確定申告をすれば税金が還付される制度です。



2) 進行性尿路上皮癌への化学療法