甲状腺機能低下症
■甲状腺ホルモンが足りない全身病
甲状腺(こうじょうせん)機能低下症とは、のどの下にある甲状腺の働きが低下し、甲状腺ホルモンの産生が不十分になる疾患。全身のエネルギー利用を促すホルモンである甲状腺ホルモンの不足によって、生命活動がゆっくりと低下します。
先天性のものと後天性のものとがあり、前者の場合はクレチン症と呼ばれ、乳幼児期の知能が低下し、身体的発育も止まって低身長となります。
後天性の場合は、一般的に高齢者、中でも女性に多くみられ、高齢女性の約10パーセントが発症しています。ただし、いずれの年代でも発症します。非常に重症の甲状腺機能低下症として、皮下や心臓に粘液状の物質が沈着する粘液水腫(すいしゅ)があります。
甲状腺機能低下症には、いくつか原因があります。最も一般的なのが、慢性甲状腺炎(橋本病)が長く続くことです。甲状腺が徐々に破壊されるにつれて、甲状腺の機能低下が進行します。
痛みを伴わない無痛性甲状腺炎(無痛性亜急性甲状腺炎)と痛みを伴う亜急性甲状腺炎は、ともに一過性の甲状腺機能低下症の原因になります。この甲状腺機能低下症は、甲状腺が破壊されていない一時的なものです。
さらに、甲状腺機能亢進(こうしん)症や甲状腺がんの治療で使われる放射性ヨード治療、あるいは甲状腺の外科的除去のために、甲状腺ホルモンの産生がされなくなったり、減少された場合にも、甲状腺機能低下症は起こります。
多くの開発途上国では、慢性的なヨード不足の食事が、甲状腺機能低下症の最も多い原因です。海藻類などに多く含まれているヨードは、甲状腺ホルモンを生成する材料であるからです。
比較的まれな原因としては、遺伝性の病気があります。甲状腺細胞中の異常酵素が、甲状腺の十分な甲状腺ホルモンの産生と分泌を妨げるものです。
その他のまれな原因としては、甲状腺を正常に刺激する甲状腺刺激ホルモンを、下垂体も視床下部も十分に分泌できない場合があります。汎(はん)下垂体機能低下症やシーハン症候群などが、その例です。
甲状腺ホルモンが不足すると、身体機能が低下します。症状はとらえにくく、徐々に進行します。体重が増え、便秘性で、冷え性になります。無力感を持ったり、脈拍がゆっくりになり、発汗が減少し、肌が乾燥してガサガサになり、髪は抜けやすく、動きが鈍くなります。
機能低下の程度が著しくなりますと、代謝が低下して皮下に粘液状の物質が沈着し、むくみます。このむくみを粘液水腫といい、普通のむくみと異なり、指で押してもへこんだままにならず、元に戻る特徴があります。
顔のむくみがひどいと、まぶたがむくみ、唇が厚くなり、舌が大きくなるなど、人相が変わってしまうこともあります。話をする時に口がもつれ、ゆっくりした話し方になることもあります。皮膚ばかりでなく、粘膜にもむくみは起こります。喉頭(こうとう)にむくみがくると、声がしわがれて低音になります。心臓への粘液状物質の沈着も見られ、不整脈の原因となります。
これらの症状は割とゆっくり出てくるので、他の病気と間違われます。例えば、脈がゆっくりなので循環器科、腫(は)れぼったいので腎臓科、肌がガサガサなので皮膚科、反応が鈍く精神活動も緩慢となるので、うつ状態や認知症(痴呆症)と間違えられて精神科に回されたりします。
治療せずに放っておくと、甲状腺機能低下症は貧血、低体温、心不全を結果として引き起こします。この状態では、錯乱、物忘れ、意識喪失や粘液水腫昏睡(こんすい)を生じ、呼吸が遅くなり、発作や脳への血流が低下する致死的な合併症に進行することがあります。
■検査と診断と治療
甲状腺機能低下症は、血液検査で血中の甲状腺ホルモンを測定することで診断されます。高齢者によく発症し、軽症ではこの年代が侵される他の病気との区別が難しいため、多くの専門医は55歳以上の人に対して、この血液検査を少なくとも1年おきに行うように勧めています。
甲状腺機能低下症のまれなケースに、下垂体も視床下部も甲状腺刺激ホルモンを十分に分泌できないことに起因するものがあり、第2の検査として、蛋白(たんぱく)質に結合していない遊離甲状腺ホルモンT4値を測定する必要があります。このT4値が低ければ、甲状腺機能低下症の診断が確定されます。
治療法としては、軽度であれば経過観察のみとすることもありますが、数種類の経口薬のうち1種類を用いて甲状腺ホルモンを補充する方法がとられます。ホルモン補充に望ましいのは、合成甲状腺ホルモンT4です。ほかに、動物の甲状腺を乾燥させた製剤があります。一般的に、乾燥甲状腺製剤は錠剤中の甲状腺ホルモンの含有量が変動するので、合成甲状腺ホルモンT4ほど十分な効果が得られません。粘液水腫昏睡のような緊急の場合には、合成甲状腺ホルモンT4か合成甲状腺ホルモンT3、ないしは両剤が静脈注射されます。
甲状腺ホルモン剤の投与は、少量から始められます。多くの量が必要な場合でも、1回分が多すぎると、重篤な副作用を引き起こすことがあるためです。高齢者では副作用のリスクが高いので、治療開始時の量と増量の割合は特に少なくされます。心臓の病気がある人や機能低下症の程度が著しい人に対しても、少量から開始し、血液中の甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンの濃度が正常値に戻るまで、慎重に増量します。場合によっては入院も必要です。
妊娠中、授乳中の人に対しても用量を調整する必要がありますが、甲状腺ホルモン剤を飲み続けていても、胎盤を通過せず、母乳にも出ませんので、安心して使えます。
甲状腺機能低下症の半数の人は、甲状腺ホルモン剤を一生飲まなければなりません。しかし、甲状腺ホルモン剤は決められた量を服用している場合、体に症状が出ることはなく、副作用もありません。
先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
■生まれつき甲状腺の働きが弱い疾患
先天性甲状腺(せん)機能低下症とは、生まれつき甲状腺の働きが弱いために、甲状腺ホルモンの分泌が不足している疾患。知能低下や発育障害が起こる重症から軽症まで、症状の出方はさまざまです。別名、クレチン症。
発生頻度は、出生児5000~6000人に1人の割合と推測されています。男女比は1:2で、女児が多いようです。
胎児期における発生の異常によって、甲状腺そのものが形成されていない、甲状腺があっても十分な大きさがない,甲状腺が舌根部など別の場所にあって働かない、甲状腺があっても甲状腺ホルモンの合成に障害があるなどのために、甲状腺ホルモンが不足の状態になります。まれに、中枢性(下垂体性)、視床下部性の機能障害に、原因があるケースもあります。
出生時体重は正常ですが、次第に成長、発達が遅れてきます。新生児黄疸(おうだん)から引き続き、黄疸がなかなかとれません。
顔つきは特徴があり、まぶたがはれぼったく、鼻は低く、いつも口を開け、大きな舌を出しています。これをクレチン顔貌(がんぼう)と呼びます。皮膚は乾燥し、あまり汗をかかず、腹部は大きく膨れています。また、臍(さい)ヘルニア、頑固な便秘があります。
また、四肢、特に手足の指が短いことが特徴的です。周囲に興味を示さず、あまり泣かずによく眠ります。体動も不活発で、おとなしい子供です。
これらの症状は乳児期以後に認められるものが多く、新生児期にははっきりした症状を示しにくいものです。
そのまま放置しておくと、運動機能の発達の遅れ、発育障害がみられ、おすわりや歩行が遅れ、知能も障害されます。また、骨の成熟が著しく遅れ、身長が伸びずに小人症になります。
■検査と診断と治療
現在の日本では、新生児の集団スクリーニングが全国的に行われており、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)の症状が現れる前に、ほとんどが発見されます。
この集団スクリーニングは生後5~7日に、足の裏から一滴の血液を濾(ろ)紙で取り、血液中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定によって行われます。このスクリーニングのみでは、甲状腺刺激ホルモン(TSH)遅発上昇型などの症例や、中枢性(下垂体性)、視床下部性の機能障害に原因があるケースが見逃されますので、症状があれば要注意です。地域によっては、遊離サイロキシン(FT4)の測定を同時に行っています。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高値であると、再採血あるいは精密検査になります。集団スクリーニングで精密検査の通知が届いたら、速やかに指定された医療機関を受診します。
医療機関によっては、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、遊離サイロキシン(FT4)などの再検査、大腿(だいたい)骨遠位骨頭核のX線検査、甲状腺の超音波検査などを行います。一般に、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)では骨の発育が遅延し、大腿骨遠位骨頭核が出現していないか、小さいと見なされています。
一過性甲状腺機能低下症、一過性高TSH血症、ごく軽度の先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)との区別のため、母親の甲状腺疾患、母親がバセドウ病の場合には抗甲状腺薬内服、胎児造影、イソジン消毒などによるヨード大量曝露(ばくろ)の有無などが、確認されます。
症状がそろっていて、甲状腺刺激ホルモン(TSH)値が高く、甲状腺ホルモン値が低いと、診断が確定します。
診断が確定したら治療を開始し、1日1回、甲状腺ホルモン剤の内服を行います。一般に、生後3カ月以内に薬剤の内服が開始できれば、知能障害や発育障害を残さずに正常の発達を期待できますので、経過を見ながら薬剤の量を加減します。生後12カ月以後では、知能障害を残してしまいます。
痛風
関節が腫れて痛む痛風の発生頻度は、時代、地域、人種、性別、社会階層によって異なります。痛みが激しいために名前は知れ渡っていますが、患っている人が増加している現在の日本においても、それほど人数は多くありません。推定で、人口の0.3パーセントに当たる40万人が悩んでいるとされています。昔は、高貴な家系の病気で帝王病ともいわれていました。
| 痛風の原因をチェック |
●痛風とはどんな病気か? プリン体と呼ばれる物質の代謝障害で、過剰に作られた尿酸によって高尿酸血症が起こります。さらに進行すると、突然、足の母趾関節、足関節、耳たぶなどが赤く腫れる痛風結節ができ、激痛を訴えます。この痛みは、痛風発作と呼び、しばしば再発します。 日本で痛風患者が増加している背景にあるのは、食事内容が欧米化し、動物性蛋白質の摂取量が増えたこと、飲酒量が増加したこと、個人の食生活のパターンが変化したことです。 |
●男女どちらに多いのか? 男女比で見ると、圧倒的に男性に多い病気です。男性に多い理由は、痛風の原因である尿酸の血液中濃度が女性より高いからです。女性に少ない理由は、女性ホルモンに腎臓からの尿酸の排泄を促す働きがあるために、高尿酸血症や痛風になりにくいとされています。といっても、閉経期以後の女性は罹患します。 患者の85〜90パーセントは男性で、40〜50才をピークに、主に中年もしくはそれ以後に発症します。痛風の1/4の症例には、家族歴が見られるようです。 |
●尿酸値の基準値はどうなっているのか? 血清尿酸値が男女ともに7.0mg/dl以上では、高尿酸血症と呼ばれます。7.0mg/dl以上の高尿酸血症が続くと、痛風になります。 |
| 予防対策と治療法 |
●尿酸値を上昇させないための注意 食生活と飲酒に気をつけましょう。プリン体は、肉類、豆類に多く含まれています。アルコールではビールに最も多く含まれ、ウイスキー、ブランデー、焼酎などにはあまり含まれておりません。 尿酸値を下げるためには、総カロリーを制限し、肥満にならないよう努力しましょう。プリン体含有量の低い食材としては、米、パン、うどん、そば、スパゲッテイ、かずのこ、のり、わかめ、白菜、なすなどが挙げられます。また、水分を摂取するように心掛け、尿中の尿酸を流しましょう。運動としては、ウォーキングなどの有酸素運動が有効です。 |
●治療法はどのようになっているのか? 痛風の治療においては、1)非ステロイド系抗炎症薬、2)コルヒチン、3)副腎皮質ステロイド薬などが使われています。 |
●尿酸値を下げる薬はどのようなものがあるか? 血清尿酸値を下げる薬には、下記のようなものがあります。 1)アロプリノール (商品名:ザイロリック、アロシト−ル) 2)ベンズブロマロン (商品名:ユリノ−ム) 3)プロベネシド (商品名:ベネシット錠) |
糖尿病性網膜症
■糖尿病のために網膜の血管が障害される疾患
糖尿病網膜症とは、糖尿病によって目の網膜などに各種の変化を来し、視力低下を認める疾患。糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症(じんしょう)と並んで、糖尿病の3大合併症の一つに数えられます。
かつては日本人の中途失明の原因として最多でしたが、平成18年に緑内障に次ぐ第2位となりました。しかし、糖尿病性網膜症による失明人数は年間約3000人で、毎年増加していますし、緑内障の原因の一部には糖尿病性新生血管(血管新生)緑内障も含まれています。
糖尿病性網膜症は通常、糖尿病を発症して5年以後に出現する合併症ですが、2型糖尿病(インシュリン非依存型糖尿病)では発症がいつかはっきりしないこともあり、糖尿病と初めて診断された時点で、すでに30〜40パーセントの人に網膜症の合併を認めるとする報告もあります。従って、2型糖尿病では、糖尿病の初診断時から網膜症のチェックが必要と考えられます。
糖尿病のコントロールが悪いと、糖尿病の罹患(りかん)期間が長くなるとともに網膜症も進行します。糖尿病の発症後20年では、1型糖尿病(インシュリン依存型糖尿病)の100パーセント、2型糖尿病の60パーセントの人に網膜症の合併を認めるとする報告もあります。
網膜とは、眼球の底に当たる眼底を覆っている膜です。視神経が集中し、また栄養を運ぶために多くの毛細血管が張り巡らされているため、高血糖状態が長く続くと血管障害を引き起こしやすくなります。
血管障害によって酸素欠乏状態になった網膜からは、血管を自分のほうへ伸ばすホルモンが放出されます。その結果、病的な血管である新生血管が新しくできます。この新生血管は非常にもろいため出血しやすく、それによって目の機能に障害が起きます。
通常、三つの病期に相当する単純網膜症、前増殖網膜症、増殖網膜症と徐々に進行することが多いのですが、突然進行し、悪化することもあります。
単純網膜症では、眼底の所々に出血が見られたり、血管が閉塞(へいそく)して、こぶができたりします。前増殖網膜症では、眼底の随所に出血が見られ、新生血管が出現します。増殖網膜症では、新生血管が網膜だけでなく硝子体(しょうしたい)にまで増殖し、硝子体出血や網膜剥離(はくり)が生じる場合があります。
初期の頃は、多くは無症状で経過します。徐々に、眼底出血や、網膜の中央に位置する黄斑(おうはん)に浮腫(ふしゅ)が生じて、視力低下や、物がゆがんで見える変視症を自覚するようになります。
硝子体出血や広範囲な眼底出血を伴うと、飛蚊(ひぶん)症や急激な視力低下を示します。二次的に増殖膜が形成され、それが網膜を引っ張って牽引(けんいん)性網膜剥離に陥ると、永続的な視力低下や失明に至ることがあります。新生血管緑内障に陥ると、眼痛、不可逆的失明、眼球委縮を示すことがあります。
また、白内障が標準より早く進行します。糖尿病性腎症の悪化に伴い、腎性網膜症を併発し、目の症状が悪化して著しい視力低下を認めることもあります。
■糖尿病性網膜症の検査と診断と治療
糖尿病性網膜症の予防、及び進行防止を図るには、糖尿病をきちんと管理し、血糖値を正常範囲に保つようコントロールすることが、最も有効です。
糖尿病の人は、網膜症になっても早期に発見して治療を始められるように、定期的に目の検査を受けるべきです。視力障害の程度は、糖尿病を発症してからの期間や、血糖値のコントロールがどの程度きちんとできているかに左右されます。
医師が糖尿病性網膜症を診断するには、基本となる眼底検査とともに、蛍光眼底造影検査も必ず行います。単純網膜症、前増殖網膜症、増殖網膜症と進む病期を見極め、どの病期であれ現れる黄斑症を的確に把握するには、蛍光眼底造影検査が不可欠です。
眼底検査と蛍光眼底造影検査は、主に間接眼底鏡を用いて、肉眼的に眼底の状態を診察します。通常、眼底が外部からよく見えるようにするために、瞳(ひとみ)を開く点眼薬を用いて散瞳(さんどう)を行います。散瞳中はピント調節能力が低下するため、自動車の運転は困難となりますので、受診の際の交通手段には注意を要します。
治療法としては、レーザー光凝固術という方法があり、レーザー光線を網膜に照射して、主に網膜の酸素不足を解消し、新生血管の発生を予防したり、すでに出現してしまった新生血管を減らしたりすることを目的として行います。網膜症の進行具合によって、レーザーの照射数や照射範囲が異なります。
このレーザー光凝固術は、すべての網膜が共倒れにならないように正常な網膜の一部を犠牲にして、今以上の網膜症の悪化を防ぐための治療であって、決して元の状態に戻すための治療ではありません。まれに網膜全体のむくみが軽くなるといったような理由で、視力が上がることもありますが、多くの場合、治療後の視力は不変かむしろ低下します。
早い時期であれば、レーザー光凝固術はかなり有効で、将来の失明予防のために大切な治療です。通常は通院で行い、必要に応じて繰り返し行います。
レーザー治療で網膜症の進行を予防できなかった場合や、すでに網膜症が進行して網膜剥離が起こっている場合、傷付いた網膜血管からの大量の出血が続いている場合は、硝子体切除術という治療が必要になることもあります。
眼球に3つの穴を開けて細い手術器具を挿入し、目の中の出血や増殖組織を取り除いたり、剥離した網膜を元に戻したりするものです。顕微鏡下での細かい操作を要し、眼科領域では高度なレベルの手術となります。この手術により、硝子体出血では多くのケースで視力の回復がみられ、網膜剥離でも視力が回復することがあります。
なお、薬物治療もありますが、進行した網膜症にはあまり効果が期待できません。
糖尿病性網膜症がある人では、急激な血糖コントロール、妊娠、腎症の進行、人工血液透析の導入などの際に症状が進行することがあるので、注意して下さい。
橋本病(慢性甲状腺炎)
■甲状腺の病気の一つで、女性に多い
橋本病は、喉頭の前下部にある甲状腺に慢性の炎症が起きている病気で、慢性甲状腺炎とも呼ばれている自己免疫性疾患です。九州大学の橋本 策(はるか)博士が明治45年、ドイツの医学誌に初めて発表した病気で、世界的にも有名なものです。
内分泌腺の一つである甲状腺に、慢性のリンパ球の浸潤による炎症があるために、甲状腺が腫大したり、甲状腺機能に異常が起こります。男性の20倍と女性のほうが圧倒的に多くかかり、よく調べると、女性の10~20人に1人の割合でみられるほど、頻度の高い病気だということがわかってきました。
例外はありますが、橋本病の患者は大なり小なり、甲状腺がはれています。ただし、この内分泌腺の一つである甲状腺のはれが、首や喉に何か症状を起こすというようなことはありません。まれに甲状腺のはれがなく、萎縮している場合もあります。
橋本病では、甲状腺のホルモン状態の違いから次の3つのケースに分けられ、甲状腺ホルモンの過不足があるケースにだけ症状がみられます。
●甲状腺ホルモン濃度がちょうどよいケース(甲状腺機能正常)
橋本病であっても、大多数の方は甲状腺ホルモンに過不足はありません。この場合は、橋本病が体に影響するということはまったくありませんので、何か症状があっても甲状腺とは関係ありません。従って、治療の必要はありません。
しかしながら、将来、甲状腺の働きが低下して、ホルモンが不足することがあります。また、まれですが一時、甲状腺ホルモンが過剰になることもあります。
●甲状腺ホルモンが不足しているケース(甲状腺機能低下症)
甲状腺ホルモンが減少する病気の代表が、橋本病です。橋本病も甲状腺臓器特異性自己免疫疾患の一つで、体質の変化により、甲状腺を異物と見なして甲状腺に対する自己抗体(抗サイログロブリン抗体、抗マイクロゾーム抗体)ができます。
この抗体、すなわち浸潤したリンパ球が甲状腺を破壊していくため、甲状腺ホルモンが減少し、徐々に甲状腺機能低下症になっていきます。痛みもなく、本人の知らないうちに、少しずつ甲状腺が腫大します。
甲状腺ホルモンは体の新陳代謝に必要なホルモンですので、不足が著しかったり長く続いたりすると、下のような症状が現れます。自覚症状はないこともありますが、コレステロールの値が高くなったり、血圧が上がったり、心臓や肝臓の働きが悪くなることもあります。
*顔や手足がむくむ *食べないわりに体重が増える *気力が低下する *動作が鈍くなる *皮膚が乾燥する *声がかすれる *寒がりになる *始終、眠い *毛髪が薄くなる *物忘れがひどくなる *ろれつが回らなくなる *その他(便秘、貧血、月経過多)
これらの症状は他の原因でも起こりますから、こうした症状があるからといって甲状腺のホルモンが足りないとは限りません。
また、甲状腺機能低下症であっても、適量の甲状腺ホルモンを服用して血液のホルモン濃度が正常になっている場合は、何か症状があれば、他のことが原因です。
なお、「甲状腺機能低下症になると回復しない」といわれていましたが、数カ月のうちによくなることも少なくありません。
●甲状腺ホルモンが一時的に過剰になるケース(無痛性甲状腺炎)
甲状腺にたくわえられている甲状腺ホルモンが血液中にもれ出て、血中濃度が高くなることがあります。ふだん、甲状腺の働きが正常な方に、比較的急に起こります。産後数カ月以内に、ことによくみられます。バセドウ病と間違われることもあります。
このケースは炎症が原因ですが、痛みがないので「無痛性甲状腺炎」といいます。長くても4カ月以内には自然に治りますが、その後、逆に甲状腺ホルモンが不足して、甲状腺のはれが大きくなることがあります。これもたいていは数カ月で治りますが、中には長く続いて甲状腺ホルモン剤の内服治療が必要になる方もあります。
●その他のケース
非常にまれですが、途中でバセドウ病に変化することがあります。血縁にバセドウ病の方がいる場合は、他の人よりなりやすい傾向があります。
悪性リンパ腫の中には甲状腺から発生するものがあり、橋本病の人は一般の人よりこうしたことが起こりやすいのですが、甲状腺から発生するものは治療に大変よく反応し、治りやすいという特徴があります。
■診断と治療法
●血液検査や細胞診
触診や超音波検査で、びまん性甲状腺腫を確認します。血液検査では、甲状腺自己抗体である抗サイログロブリン抗体と抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体の2つが陽性になります。
自己抗体が陰性の人でも、甲状腺の生検や細胞診でリンパ球浸潤を認めれば診断が確定されます。甲状腺機能(FT3・FT4・TSH)は正常の人が多いですが、低下症になっている例もあります。
●甲状腺ホルモン薬の服用
橋本病患者で甲状腺の腫大が小さく、甲状腺機能も正常の場合は、治療は必要ありません。
甲状腺機能の低下がある場合には、不足している甲状腺ホルモン薬(チラージンS錠)を毎日内服します。腫れも小さくなります。
甲状腺の腫大がひどい場合は、手術で甲状腺を切除する場合もあります。
●日常生活と食事
甲状腺ホルモンに過不足がなければ、生活上、留意することはありません。
食事も、ふだんどおりでけっこうです。海藻類も普通に食べてかまいませんが、昆布を毎日食べたり、ヨードを含むうがい薬を毎日何度も使うと、甲状腺機能が低下することがあります。なお、甲状腺ホルモンを服用している方は、問題ありません。
ビタミン欠乏症
■ビタミンの欠乏で、いろいろな疾患が出現
欠乏症を起こす主なビタミンは、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンD、ニコチン酸、およびビタミンCです。
ビタミン欠乏症は、食べ物から摂取するビタミンの量が体の必要とするビタミン量を満たさないか、あるいは、摂取する量は十分でも体内への吸収や利用が十分でない時に起こります。前者は発育期や授乳で消費が多い時など、後者は胃や腸の一部を手術で切り取った後などが相当します。
ビタミンA欠乏症(夜盲症)
夜盲(やもう)症とは、夜間や暗い場所での視力、視野が著しく衰え、目がよく見えなくなる疾患。俗に、鳥目(とりめ)と呼ばれます。
先天性では、幼児期より徐々に発症するものと、発症しても生涯進行しないものがあります。後天性では、ビタミンAの欠乏によって発症します。網膜にあって、夜間の視覚を担当するロドプシンという物質が、ビタミンAと補体から形成されているため、ビタミンA不足は夜間視力の低下につながるのです。夜盲症が進行すると、結膜や角膜の表面が乾燥して白く濁り、失明することもあります。
なお、ビタミンAは発育の促進、皮膚の保護の機能とも関係しているので、これが欠乏すると、乳幼児の発育が遅れたり、皮膚がカサカサになったりすることもあります。
ビタミンB1欠乏症(かっけ)
かっけ(脚気)とは、ビタミンB1欠乏症の一つで、ビタミンB1(チアミン)の欠乏によって心不全と末梢(まっしょう)神経障害を来す疾患。心不全によって下肢のむくみが、末梢神経障害によって上下肢のしびれが起きます。
ビタミンB1は、糖質の代謝に重要なビタミンです。白米を主食として副食の少ない食事を長期間続けた際や、重労働、妊娠、授乳、甲状腺(せん)機能高進症などでビタミンB1の消費が一時的に増大した際に、糖質の分解産物であるピルビン酸や乳酸が蓄積されて、かっけが起こります。
かっけの症状としては、初めは体がだるい、手足がしびれる、動悸(どうき)がする、息切れがする、手足にしびれ感がある、下肢がむくむなどが主なものです。進行すると、足を動かす力がなくなったり、膝(ひざ)の下をたたくと足が跳ね上がる膝蓋腱(しつがいけん)反射が出なくなり、視力も衰えてきます。
かつては、かっけ衝心(しょうしん)といって、突然胸が苦しくなり、心臓まひで死亡することもありましたが、現在ではこのような重症例はほとんどありません。
しかし、三食とも即席ラーメンを食べるといったような極端に偏った食生活によるかっけなどが、最近は若い人に増えてきています。インスタント食品やスナック菓子には脂質とともに糖質も多く含まれているのですが、この糖質の消費に必要なビタミンB1の摂取量が足りていないのです。また、過度なダイエットや欠食、外食によって、女子大学生の血中総ビタミンB1の値が非常に低いことも報告されています。
さらに、糖尿病の発症者と、高齢の入院患者にも、かっけが増えてきているといいます。糖尿病の場合は、血液中の糖質に対するビタミンB1の相対的な不足が原因となり、高齢の入院患者の場合は、高カロリー(糖質)の輸液に対してやはりビタミンB1の不足が原因となります。食事の代わりに酒を飲むといったアルコール依存症の人も、ビタミンB1欠乏症になる確率が高いと見なされています。
なお、ビタミンB1の欠乏症には、欧米に多いウェルニッケ・コルサコフ症候群もあります。こちらは中枢神経が侵される重症の欠乏症で、蛋白(たんぱく)質、脂質中心の食生活で、アルコールを多飲する人に多発します。症状は、意識障害、歩行運動失調、眼球運動まひ、健忘症など。
ビタミンB2欠乏症
ビタミンB2欠乏症とは、ビタミンB2(リボフラビン)の欠乏によって、皮膚や粘膜にトラブルが現れたり、子供の発育が悪くなったりする疾患。
ビタミンB2には皮膚を保護する働きがあるので、欠乏すると皮膚や粘膜にいろいろな症状が現れてきます。例えば、唇の周囲やふちがただれたり、舌が紫紅色にはれたり、肛門(こうもん)や外陰部などの皮膚と粘膜の移行部のただれなどもみられます。目の充血や眼精疲労などの症状のほか、進行すると白内障を起こすこともあります。 脂漏性皮膚炎も認められ、鼻の周囲や顔の中央部に脂ぎった、ぬか状の吹き出物ができます。重症になると、性格変化や知能障害が現れることがあります。
ビタミンB2にはまた、子供の発育を促す働きがあるので、欠乏した子供では成長不良につながります。成長期には、必要量を十分取らなければなりません。
ビタミンB2は、体内で糖質、蛋白(たんぱく)質、脂肪をエネルギー源として燃やすのに、不可欠な水溶性ビタミンです。ビタミンB2欠乏症は、アルコールの多飲、糖質過剰摂取、激しい運動、労働、疲労などで、現れることがあります。多量の抗生物質や経口避妊薬、ある種の精神安定薬や副腎(ふくじん)皮質ステロイド薬などを長期に服用した時にも、現れることがあります。また、心臓病、がん、糖尿病、肝炎、肝硬変などの慢性疾患や吸収不良によって、ビタミンB2欠乏症のリスクが高くなります。血液をろ過する血液透析や腹膜透析でも、同様です。
ビタミンD欠乏症(くる病)
くる病とは、骨が軟らかくなり、変形を起こしてくる疾患。骨成長期にある小児の骨のカルシウム不足から起こる病的状態で、成人型のくる病は骨軟化症と呼びます。
カルシウム不足による骨の代謝の病的状態というのは、骨基質という蛋白(たんぱく)質や糖質からなる有機質でできた骨のもとになるものは普通に作られているのに、それに沈着して骨を硬くする骨塩(リン酸カルシウム)が欠乏している状態です。このような状態では、骨が軟らかく弱くなります。
子供では、骨が曲がって変形したり、骨幹端部の骨が膨れてくることがあります。成人でも、骨が曲がったり、骨粗鬆(そしょう)症と同様に、ちょっとした外部の力で骨折が起こるようになります。
くる病の原因は、いろいろあります。ビタミンD欠乏による栄養障害、腎(じん)臓の疾患、下痢や肝臓病などの消化器の疾患、甲状腺(せん)や副腎などのホルモンの異常に由来するものや、妊娠、授乳などによるカルシウム欠乏に由来するものがあります。
骨粗鬆症と同時に存在することも多く、その場合には骨粗鬆軟化症と呼んでいます。
ニコチン酸欠乏症(ペラグラ)
ニコチン酸欠乏症とは、ビタミンBの一つであるニコチン酸が欠乏することにより、皮膚炎、下痢、精神錯乱などを起こす疾患。ナイアシン欠乏症とも呼ばれ、とうもろこしを主食とする中南米などの地域ではペラグラとも呼ばれています。
ニコチン酸は、ナイアシンとも呼ばれる水溶性のビタミンで、蛋白(たんぱく)質に含まれる必須アミノ酸のトリプトファンから体内で合成されます。糖質、脂質、蛋白質の代謝に不可欠な栄養素であり、また、アルコールや、二日酔いのもとになるアセトアルデヒドを分解します。人為的にニコチン酸を摂取することで、血行をよくし、冷え性や頭痛を改善しますし、大量に摂取すれば血清のコレステロールや中性脂肪を下げる薬理効果もあります。
ニコチン酸欠乏症はとうもろこしを主食とする人に多い疾患ですが、日本では、不規則な食事をするアルコール多飲者にみられます。酒を飲むほどニコチン酸が消費されますので、つまみを食べずに大量に飲む人は、栄養不良に注意が必要です。特にビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6が不足すると、ニコチン酸の合成能力が低下します。
遺伝病であるハートナップ病の人も、トリプトファンが腸から吸収されないために、ニコチン酸欠乏症を発症します。
症状としては、日光に当たることによって手や足、首、顔などに皮膚炎が起こります。同時に、舌炎、口内炎、腸炎などを起こし、そのために食欲不振や下痢なども起こします。その後、頭痛、めまい、疲労、不眠、無感情を経て、脳の機能不全による錯乱、見当識の喪失、幻覚、記憶喪失などが起こり、最悪の場合は死に至ります。
日本では普通の食事をしている限り、重症にはなりません。食欲減退、口角炎、不安感などの軽いニコチン酸欠乏症が見られる程度です。
ビタミンC欠乏症(壊血病)
壊血病とは、ビタミンCの欠乏によって、出血性の障害が体内の各器官で生じる疾患。ビタミンC欠乏症とも呼ばれます。
水溶性ビタミンであるビタミンCは、血管壁を強くしたり、血液が凝固するのを助けたりする作用を持っています。また、生体内の酸化還元反応に関係し、コラーゲンの生成や骨芽細胞の増殖など、さまざまな作用も持っています。
成人におけるビタミンCの適正摂取量は、1日に100mgとされています。日本人はもともとビタミンCの摂取量が多く欠乏症になりにくいのですが、3~12カ月に渡る長期、高度のビタミンC欠乏があると、壊血病が生じます。妊娠や授乳時では、ビタミンCの必要量も増えます。
ビタミンCが欠乏すると、毛細血管が脆弱(ぜいじゃく)となって、全身の皮下に点状の出血を起こしたり、歯肉に潰瘍(かいよう)ができたり、関節内に出血を起こしたりします。また、消化管や尿路から出血することもあります。一般症状として、全身の倦怠感(けんたいかん)や関節痛、体重減少が現れます。
小児においても、壊血病は生じます。特に生後6~12カ月間の人工栄養の乳児に発生し、モラー・バーロー病とも呼ばれています。現れる症状は、骨組織の形成不全、骨折や骨の変形、出血や壊死(えし)、軟骨や骨境界部での出血と血腫(けっしゅ)、歯の発生障害などです。
■ビタミン欠乏症の検査と診断と治療
ビタミンA欠乏症(夜盲症)
ビタミンA欠乏性の夜盲症以外の場合、治療法が確立しておらず、光刺激を防ぐ対策を必要とします。遮光眼鏡を使用したり、屋外での作業を控えるなどです。
ビタミンA欠乏性では一般に、ビタミンAを経口で服用し、ビタミンAを多く含む食品を適度に取ります。ビタミンAには、レバーやウナギなど動物性のものに含まれるレチノールと、主に緑黄色野菜などの植物性食品に含まれβ-カロチンの2種類があります。ただし、過度に摂取するのは、ビタミンA中毒を引き起こすのでよくありません。
ビタミンB1欠乏症(かっけ)
かっけの検査では、ハンマーなどで膝の下を軽くたたく、膝蓋腱反射を利用した方法が広く知られています。足がピクンと動けば正常な反応で、何も反応がなければかっけの可能性がありますが、診断を確定する検査ではありません。
かっけの治療では、ビタミンB1サプリメントを投与します。なお、かっけの症状は回復したようにみえても、数年後に再発することがあるので注意が必要です。
ビタミンB1はいろいろな食べ物の中に含まれているので、偏食さえしなければ、欠乏症を起こすことはほとんどありません。過度のダイエット、朝食や昼食を抜く、外食で食事をすませる、インスタント食品に偏るなどの食生活では、ビタミンB1の不足を招き、かっけになりやすくなります。
ただし、ビタミンB1が不足していても、他の栄養素のバランスがいい場合は、すぐにかっけにはなりません。食生活に偏りがあって、疲労感や倦怠(けんたい)感が続いている場合は、潜在的ビタミンB1欠乏症と考えて、食生活を改善する必要があります。
お勧めなのは玄米食。玄米にはビタミンB1が多く含まれているからで、玄米を精米した白米ではほぼ全部のビタミン類が取り除かれています。玄米のほかにビタミンB1を多く含む食品には、豚肉、うなぎ、枝豆、えんどう豆、大豆(だいず)、ごま、ピーナッツなどがあります。これらをうまく組み合わせて、ビタミンB1を摂取していきましょう。
ビタミンB2欠乏症
医師による診断は、現れた症状や全身的な栄養不良の兆候に基づいて行います。尿中のビタミンB2排出量を測定し、1日40μg以下であれば欠乏症です。血中のビタミンB2濃度の測定も行われます。
治療では、ビタミンB2を症状が改善されるまで、経口で服用します。ビタミンB2の1日所要量は成人男性で1・2mg、成人女性で1・0mgとされており、1日10mgを経口で服用すると症状は完全に改善します。他のビタミン欠乏症を伴うことも多く、その場合はビタミンB1、ビタミンB6、ニコチン酸なども服用すると、より効果的です。
なお、ビタミンB2吸収不良を生じている場合、血液透析や腹膜透析を受けている場合は、ビタミンB2サプリメントを日常から摂取する必要があります。
ビタミンD欠乏症(くる病)
確定診断のためには、X線写真で確かめるほか、血液検査や尿検査、血清生化学検査などにより、ビタミン、ホルモン、カルシウム、リン、血清アルカリホスファターゼなどの数値を測定します。
治療では、原因に応じて対処することになります。一般には、ビタミンDなどの薬剤投与を行い、小魚や牛乳などのようにカルシウムの多い食べ物を摂取し、日光浴をします。ビタミンDには、カルシウムやリンが腸から吸収されるのを助け、骨や歯の発育を促す働きがあります。このビタミンDは食べ物の中にあるほか、皮膚にあるプロビタミンDという物質が、紫外線を受けるとビタミンDになります。
骨が軟らかくなるのが治っても、骨の湾曲、変形などが強く残ったものは、骨を切って変形を矯正する骨切り術を行うこともあります。
ニコチン酸欠乏症(ペラグラ)
ニコチン酸欠乏症の治療は、ニコチン酸を含むビタミンB群の投与です。ニコチン酸アミドを1日50〜100mg投与し、他のビタミンBの欠乏を合併することも多いので、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6も併用して投与します。ビタミンB群は、お互いに協力しあって活動しているため、それぞれの成分だけではなく、ビタミンB群としてまとめて投与することが望ましい栄養素でもあります。
ニコチン酸の過剰症は特にありませんが、合成品のニコチン酸を100mg以上摂取すると、皮膚がヒリヒリしたり、かゆくなることがあります。とりわけ、ニコチン酸の摂取に際して注意が必要なのは、糖尿病の人です。ニコチン酸はインシュリンの合成に関与し、大量に摂取すると糖質の処理を妨げてしまいます。 一部の医薬品との相互作用を示唆するデータもあるため、すでに他の薬を服用中の場合は主治医に相談の上、ニコチン酸を摂取する必要があります。
ビタミンC欠乏症(壊血病)
乳児では1日100mg、成人では1日1000mgのビタミンCを投与すると、症状の改善が認められます。ただ、長期に投与すると尿路結石(シュウ酸カルシウム結石)が生じることがあり、注意が必要です。
予防としては、新鮮な果物や野菜を十分に取ります。また、煮すぎない、ゆですぎない、ミキサーに長時間かけないなど、調理によるビタミンCの破壊に気を付ければ、まず壊血病の心配はありません。
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