良導絡治療ってなぁに 第14回


美容良導絡

~炎症性色素沈着へのアプローチ~


日本良導絡自律神経学会 多田理恵

 お顔のトラブルとしてシミ、しわ、たるみ、くま、肌荒れなど多々あり、特に美顔は女性にとっては常に気になるところです。シミとはホルモンの異常、紫外線の影響などがありますが、ここでは、にきび痕やカミソリ負けなど肌への刺激でできる炎症性色素沈着に対する治療を紹介します。

1.炎症性色素沈着の原因

 本来、色素沈着した肌もターンオーバーにより生まれ変わるのですが、そのサイクルが上手に行われないことがあります。1つには、メラニンを生成するメラノサイトが、肌の危険が解決したのにもかかわらず、次々とメラニンを生成してしまうから。 もう一つの原因は、肌細胞の生まれ変わりが正常に行われず、通常より時間がかかってしまうためです。

-炎症性色素沈着とは?-
 にきびや傷が治った後、色素が沈着することで肌に残りシミになる場合があります。また、香水や薬品がついた部分が炎症を起こして色素が沈着する場合もあります。シミの色は淡褐色ですが、紫外線をあびることで色が濃くなっていきます。この色素沈着は、様々ですが、以下の事が主に述べられています。

 血液中のヘモグロビンが原因で起こる紫色の色素沈着。これは、にきびが炎症を起こすなど化膿した後によく起こります。ヘモグロビンとは、血液中の赤血球に含まれる成分で、体中に酸素を運ぶ役割をしています。 酸素と結び付くと赤くなり、逆に酸素が少なくなると黒っぽくなります。傷やにきびなどが炎症を起こし、化膿して真皮にまで影響が及ぶと、毛細血管が破壊され血液がしみ出します。 この血液は老廃物と一緒に排出されますが、肌にヘモグロビンが残ってしまうことで、色素沈着が起こるのです。

 次に、茶色いシミのような色で、表皮の奥にあるメラニンによって起こる色素沈着。 これは、紫色の色素沈着が治まる頃に目立ってくるものです。メラニンは、メラノサイトという色素細胞によって生成されます。 メラノサイトは、肌に悪影響を与える活性酸素が増えすぎたり、炎症が起こると、メラニンを生成して肌を守ろうとし、にきびや傷あとが悪化すると、その過程で活性酸素が増えメラニンが生成されます。 このメラニンが、茶色い色の原因となります。また、同じメラニンによって表皮で起こる色素沈着。 これも、シミのような茶色い色をしています。

2.症例

 対象は53歳女性。2006年10月に右眉頭を打撲後、患部を砂糖で擦ると早く治ると聞いたことがあり、砂糖で毎日のように擦っていると、手にポロポロと付くものがあり、手を見てみると皮膚が擦れて手に付いたようでし。それが1cmほどのシミとなり、2カ月間様々な方法でシミの消失を試みたが治らず、シミが沈着してから2カ月後の2006年12月に来院し、2007年1~4月まで9回の治療を行いました。

 このような症例では、色素沈着はいつ頃からか、何がきっかけか(にきび、傷など)など把握する必要があります。

-皮膚の構造-

              図1
 皮膚の構造として体表から、表皮、真皮、皮下組織となり(図1)、表皮の厚さは0.08~0.2mmとサランラップぐらいの薄さで、真皮は0.2mmほどだと言われています。肌が正常の状態であれば、表皮は28日周期で生まれ変わり、それをターンオーバーといいます。 表皮への栄養は表皮と真皮の間にある基底膜を通して、真皮の乳頭層から送られます。


-電気鍼を使用する目的-
 皮膚をバリアと考えるならば、今回の炎症性色素沈着症はバリアが破られたものと考えられ、傳田によると直流電流でマイナス電場を負荷するとバリア機能の回復が促進した。と発表しています。また、山田は12V 200μA 7秒直流通電で組織変性が著明に起こり始めると発表しています。

 これらのことをふまえ、真皮の循環を活性化し、ターンオーバーを促進する目的で、鍼はシミ部の範囲を広くとらえるために横刺で直流電流を行いました。

―測定条件―
①来院されてから無処置時(安静座位で5分後)と顔面部のみ鍼刺激直後各々の測定を合計2回
②顔面部への鍼刺激直後と良導絡治療後各々の測定を合計2回
                     (使用機器 ノイロシステムビジョンDS-603)

―治療方法―
顔面部:
①シミ部外周2カ所横刺約7mm 10分間置鍼、抜鍼前に直流電流12V 200μA 7秒間通電
②左右の中谷眼点A点、陽白、頬車、下関、計8カ所に50HZ 10分間パルス通電      (使用機器 パルス:NEORO SOFTOR W4  直流電流:ロイヤルエイト)

良導絡治療: 主訴の頚肩こりの改善を図りながら、良導絡基本Ⅰ、Ⅱ、Ⅲをベー
スに行う

良導絡基本Ⅰ:肝兪(F437)、脾兪(F435)、腎兪(F432)
「肝・胃・膵・腎・副腎を強め、解毒機能や防衛機能を高める目的で用いる。異常良導絡の調整を引き締める作用があるので、全良導絡調整には必ず使用します」
良導絡基本Ⅱ:基本Ⅰに天柱(F459)、肩井(F525)、上脘(VM12)、中脘(VM11)、下脘(VM9)、梁門(F626)
「後頭部や肩の凝りを訴えるものや胃腸の弱い人へ組み入れる」

良導絡基本Ⅲ:基本Ⅱに百会(HM26)、膻中(VM16)、次髎(F423)、足三里(F610)、気海(VM5)
「頭をすっきりさせ、気分を落ち着かせ骨盤腔内の血液循環を良くし、胃の機能を高める」

3.結果

結果① 無処置時と顔面部刺激直後のノイロメトリーの変化(1回目)
 青が無処置時、赤が顔面部刺激直後になります(図2)。いずれも、H系が低く、F系が高く、ノイロメトリーパターンは類似しており、平均値の変動もほぼ見られませんでした。


                               図2


















結果① 無処置時と顔面部刺激直後のノイロメトリーの変化(2回目)
 これもH系が低く、Fの3は多少の変動はあるものの全体的にF系が高く、ノイロメトリーパターンは1回目とほぼ同じでした(図3)。

 顔面部刺激のみではノイロメトリーを変動させることは難しいことがわかりました。では、顔面部刺激のみと良導絡治療ではどう変化するのかと思い測定したものが次(結果②)になります。


                               図3


















結果② 顔面部刺激直後と良導絡治療のノイロメトリーの変化(1回目)
 これは顔面部のみと良導絡治療のノイロメトリーの変化を比較したものです(図4)。結果①では全体的な変動は見られませんでしたが、顔面部刺激直後と比較して良導絡治療後はH系ではH1~5が興奮し、F系ではF5・6が興奮、全体的に生理的範囲に近づく傾向をみました。また、平均値に関しては顔面刺激直後では平均値33に対し、良導絡治療後は平均値57と上昇しました。


                               図4


















結果② 顔面部刺激直後と良導絡治療のノイロメトリーの変化(2回目)
 これも顔面部刺激直後と比較して良導絡治療後はH系の4・5が興奮、F系5・6が抑制となり生理的範囲に近づく傾向をみられ、平均値は若干の上昇をみました(図5)。


                               図5


















結果③ 施術1回目と9回目のシミ部の比較
 最初に来院された時と9回施術した後のシミ部の比較です(図6)。処置前に比べ眉頭の赤褐色のシミが9回目でほぼ消失をみました。

【初回】


【9回目】

                              図6





















4.治療のコツ

 顔面部のみの鍼刺激よりも、全身の良導絡治療後の方がノイロメトリーパターンに変化が表れ、生理的範囲に近づく傾向をみたことから、自律神経系にも作用し、内分泌系の活性化が行われ、短い回数での改善に繋がったのではないかと思われます。

 これらのことから、美顔治療には局所へのアプローチでターンオーバーの活性化と全体の良導絡治療での内分泌系(自律神経系)の調整が必要だと思われます。

【参考文献】
1)和田清吉:新しい鍼灸臨床入門 良導絡興奮性のパターン(1977)P.87
2)傳田光洋:皮膚は考える,岩波科学ライブラリー