ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 槍の居ぬ間に熊鞘は──。2016年10月31日 14:27本丸内で好き勝手。御手杵の熊鞘が顕現している本丸、番外編的なお話し。※ご注意※・うちの本丸設定、オリジナル審神者あり。・刀剣男士が誰だあんた状態。!本来具現化されていない付喪神も出ます。!今回御手杵と山姥切国広はあんまり出ません。他男士と熊鞘が遊んで(?)ます。続きものです。御手杵と熊鞘の話シリーズを読んでいただいた方がわかりやすいかと。以上、ご了承いただけましたら、ごゆっくりどうぞ。[chapter:長谷部さんと一緒。]「貴様はその格好で何処へ行こうとしていた?よもやのうのうと本丸内に戻ろうなどとは思ってないだろうな?」「!!」呆れ顔のへし切長谷部が猫の子のようにつまんでぶら下げているもの……猫の子どころか、親猫よりも遥かに大きな、テディベアめいたもの。御手杵と共に顕現した、熊鞘の付喪神だ。全体的に艶やかな黒い毛並み、赤毛混じりの首元に白い飾り紐を付け、つぶらな瞳が特徴のぬいぐるみのような見た目をしている──いつもは。今はというと、長谷部に首根っこを掴まれぶら下げられているが、その姿はぐしょりと濡れている。イヤイヤ離せと言わんばかりに一生懸命に振り回すその両の腕からは、泥水と小石がせわしなくピシピシと飛んできて、長谷部は顔ををしかめる。[newpage]──丸一日の休みを貰ったが特にやる事もなく暇を持て余していた長谷部は、主の『もう庭の紅葉も綺麗に色付いているだろうし、良かったら一緒に散歩しない?』との誘いに一も二もなく賛同し、綺麗に整えられた庭を見て歩いていた。途中、庭の手入れをしていた鶯丸と燭台切に話し掛け(二人とも顔見知りが来た時に綺麗な庭を案内したいから、と張り切っていた。その笑顔に主が胃を押さえていらっしゃった)、向こうの畑の横にある金木犀は遅咲きだったからまだ見頃だと言われて向かってみたら。鯰尾藤四郎が、自らに冠された鯰を体現するかのように泥に沈んでいた。『えぇぇぇずおぉぉー?!』主が叫ぶ。「あ……あるじ、さ、ん」唯一泥に覆われていない顔(ただし目元のみ)を上げ、ふるふると震える指で差し示す先。畑の脇に落ち窪んで浅い水たまり──というかもはや泥だまりになった場所で、熊鞘……くまがホースやおもちゃのじょうろなどを使って遊んでいる。 俺と主がくまを見たことを確認すると「奴に……気を、つけ……」と言い残し、ぐしゃりと泥に突っ伏した。『あ、あ……そんな……ずおぉぉぉっ!!』主はふらふらと鯰尾に歩み寄り、その手を取って叫ぶ。その叫びでようやくくまが俺たちに気付き、ぺしょぺしょと手を振る……泥水のせいで水々しい音がする。「……主、俺ももう喋ってよろしいですか?」『……長谷部も乗ってくれていいのよ?』「ご冗談を」『本気なんだけどなぁ』「長谷部さんも乗って下さいよー一緒に泥まみれになりましょうよー」「御免こうむる」悪乗りして遊んだ主が手を貸して、鯰尾が立ち上がる。いつもの内番着が泥を纏って重そうだ。「うー、上着脱いだらマシですけど、やっぱり気持ち悪いなぁ……」「何があったらそうなるんだ」『本当だよ、転んだのか?』「いえ……今日は畑当番だったので、最後に水撒きして終わりにしようとしたんですけど、後ろからくまくんに飛び付かれちゃって……」そのままついついプロレスしたらこの有様ですよーと笑っている。熊鞘が犯人というのは本当だったようだ。「くまくんが水遊びし始めたから、俺は風呂にでも行こうかと思っていたら主さんの話し声がしたので、これはやるしかないなって!」『流石ずお!』「任せてください!」「何をだ、何を」主と鯰尾がびしっ、と親指を立てて何やら合図し合っている。「うわっ鯰尾くんどうしたのそれ?!」「おお、熊鞘も泥人形みたいになっているな」「あ、光忠さん、鶯丸さん」『二人も来たの?』「ああ。向こうも一段落したから、声を掛けた手前どんな様子か見に来たんだけど……」「とりあえず、茶でも飲むか?」「何故このタイミングで勧めるんですか……」「なに、この人数で飲みきれるくらいの良い茶葉があるな、と思い出してな」俺はマイペースな鶯丸に呆れる。その間、鯰尾は燭台切に事のあらましを伝えたようだ。「じゃあ僕、タオルとか湯殿の用意をしておくよ。鯰尾くんとくまくん、ざっとでいいから泥を落として中庭からお風呂の近くまで回っておいで。廊下にタオル敷いておくから、その上を──え?」燭台切が話す途中、くまが何かに気付いたようにぱっと走り出す。本丸に向かって。ほんのつかの間、皆がぽかんと見送ってしまったが。「……おお、今日のお八つは焼き芋か?」鶯丸の言葉に、鯰尾が「あ、乱達がスイートポテト作るって……」とつぶやく。言われてみればほんのりと甘いさつまいもの香りが漂って来ている……と言うことは。あいつ、あのまま厨に入る気か。皆が同じ考えに至っただろう瞬間、気付けば俺は走り出して熊鞘の首根っこを引っ掴み、冒頭の状況に至る。[newpage]『長谷部、流石の機動だね!』良くやった!と後から着いてきたらしい主が、先程鯰尾にやっていた合図を俺に向ける。「恐れ入ります、とりあえず捕獲出来ました」「長谷部さん、桜、桜」「……いうな……」鯰尾に指摘されるが、気合で止められるものじゃないから仕方ないだろう。それより。「……こいつは俺が風呂場に持っていこう。燭台切、中庭に向かうが、その前に湯殿の準備が出来たら教えてくれないか」「僕は構わないけど、長谷部はくまくん抱えてて大丈夫?」『いや光忠よく見て抱えてないよ?めっちゃつまんでるからね??熊鞘ぶら下がってるからね??』「あぁ、大丈夫だ。そちらも面倒だろうが準備を頼む……とりあえず鯰尾と熊鞘、泥を落とすから先程のホースがあるところまで戻るぞ」『あ、じゃあタオル持ってくよ』「そんな、主のお手を煩わせるのは……」『いいのいいの!今日の日課も、みんなが頑張ってくれたから終わる目処ついて手が空いたし!』「……お心遣い痛み入ります。お願いいたします」話している合間もじたじた暴れる熊鞘を眼前に持ってきて、「おい貴様、いつまで暴れる気だ?あまりにジタバタしていると、ホースに辿り着く前にそこの小川に放り込むぞ?」俺の言葉にぴしりと固まる熊鞘。ぷくりと頬をふくらませ、不服と言わんばかりに目を細め耳を伏せるも、熊鞘はぷらんと手足を降ろして大人しくなった。……今時期の川の水はさぞ冷たいだろうことは、外で遊ぶこいつには言うまでもなくわかったのだろう。思い通りにならないのが物凄く不満なようだが、あの冷たさに放られるのは嫌だったようだ。──あののほほんとした槍は、どこまでこの鞘を甘やかしているのか。今頃戦場を駆け回っているだろう大身槍に、こいつの躾について一言物申したい。ふぅ、とため息にならない程度の息を吐いて、ホースのある場所まで戻る。「鯰尾、すまないが先にこいつの泥を落としてくれ。手を離したら逃げ出しそうだ」「!!」先程まで自ら泥まみれになっていたくせに、いざホースからしょろしょろと水が出ているのを見たらまた暴れだした。「え、いいですけど、長谷部さんがくまくん持ったままでやるんですか?」「だから、そうでないと逃げそうなんだ……こら大人しくしろ」「うー、やりづらいなぁ……いきますよー?」鯰尾が緩やかに水を出し続けるホースを、熊鞘の足先に近付ける。「足からいくよー」「…!!」ぴく、と熊鞘が跳ねた。おそらく冷たかったのだろう。その直後。「!!!!」「うわおま、ぶふっ」「わっぶ!」──何が起こったのか一瞬わからなかったが。冷たい水が嫌な熊鞘がホースを蹴り飛ばし、俺の腕を伝って頭に飛び付き、蹴ったホースは鯰尾の顔面に行ったようでむせる声が響く。しかも熊鞘は俺の頭を抱えるように抱きついてきたものだから、髪と顔には乾きかけの泥を擦り付けられ、ぐっしょり濡れた泥まみれの足が肩周りに絡みついて……。『お待たせー……何があったし』主が籠にふかふかのタオルを入れてやってきた頃には、むせてうずくまる鯰尾の隣で、ピーピー泣きわめく熊鞘を頭にひっつけて、俺もすっかり泥にまみれてしまっていた……。[newpage]「長谷部、災難だな。湯上りには冷茶を用意してやろう」「…………ありがとう、戴きます」──結局、主や燭台切に言われるまでもなく、服の中まで泥が入ってしまった事もあって俺も風呂に入る事になった。燭台切と鶯丸も庭いじりをしていたので入るかと思ったが、先に俺と鯰尾、熊鞘のみでいいらしい。「僕と鶯丸さんは後で泥の掃除がてらにお風呂頂くから、ゆっくり浸かっておいで」「光忠、俺の事はおじいさんと呼んでもいいんだぞ?備州での縁があるだろうに」「もう、鶯丸さん、それはまた後で話しましょうって言ったじゃないですか!」──長くなりそうなので、二人でゆっくりと話すのだろう。「僕らってあちこちで縁が出来るから、他のひとの繋がりを聞くのって面白いですねー」「そうだな……こらまて、先に行くな」「♪」鯰尾と共に、泥が落ちないよう気を付けながら、ビニールを敷いた籠に衣類を入れる。熊鞘は飾り紐をぺいっと籠に入れて風呂にぽてぽてと向かおうとする。それを大きなタオルでくるむ様に捕まえる──俺たちと違って、熊鞘はその身の毛皮が服のようなものだから、歩くままに泥が落ちる。「♪」行く手を阻むようにタオルでくるみ抱えてもなにやら機嫌がよい。「こいつ、随分機嫌がいいな?」「あー、くまくんお風呂好きですし、あと多分長谷部さんとお風呂入れるからじゃないですか?」「俺?」「はい!くまくん、大体御手杵さんや俺ら粟田口と入ることが多いので、お風呂に入る顔ぶれが似通ったメンバーになるんですよ」……確かに、帰還した御手杵と同部隊の連中と湯浴みする際に入るか、粟田口や他の短刀・脇差連中と入ることが多いように思う。「だから、大好きなお風呂に珍しいひとと一緒だから嬉しいんじゃないかなって!」「……そうか」「レアキャラ出現って嬉しいですからね!」「それはよくわからん」「えー」話しながら、脱衣所から風呂に続く戸を開ける。ふわりと爽やかな柑橘の香りがする。「……なんだ、柚子の香りか?」「あ、主さんがいい入浴剤見つけた!って言ってたやつじゃないですか?」「あれか」主は風呂好きらしく、本丸の風呂も主の時代の遊べる銭湯なるものに露天風呂を加えたような大きな造りになっているそうで、多少ぎゅうぎゅうになってもよいならば、刀剣男士全員でも入れる広さがある。更に『たまには気分転換も大事!』と入浴剤を用意して下さるので、時々風呂場が良い香りで満たされている。「冬至には本物浮かべたいなーって言ってましたからそっちも楽しみですけど、これも良い香りですね!」「あぁ、そうだな」「……?」熊鞘は香りの元が良く分からないのか、キョロキョロとあたりを見回している。「くまくん、入浴剤ってわかってないみたいですよ」「湯船に浸かる時には気付くだろう……まずは身体を流すぞ、くま」湯をシャワーから出し、熊鞘をタオルから出して泥を流してやる。ポロポロと泥や小石が流れていく。「♪」温かい湯が心地よいのか、熊鞘は大人しくされるがままになっている。「うっわ!髪の中まで泥が!」「お前は泥に突っ伏していたからな……」長い髪をほどいて頭から湯をかぶった鯰尾の悲鳴に、熊鞘の頭を見やる……こいつも頭のてっぺんまで泥まみれだ。「鯰尾、こいつは普通の石鹸で洗っていいのか?」「う?あー、大丈夫ですよ!俺たちが使っているもので洗ってあげてください!」頭を洗い始めた鯰尾が、叫ぶように返してくる。湯殿には俺たちが使うものと、五虎退の仔虎や鳴狐のお供を洗う為の動物用石鹸があるのだが、こいつは動物用ではないらしい。「おい、頭を濡らすぞ」「♪」五虎退の虎たちよりは大人しく、顔の近くに湯を掛けても平気なようだ。「ほら、手を出せ……洗えるところは自分で洗え」「!!」ぽきゅぽきゅと液状石鹸を出して、泡立てたものを熊鞘の手に乗せてやる。喜々として自分の身体を泡まみれにし始める熊鞘を確認して、俺も髪を洗い始める。──しばし各々が自分を洗う為の音と水音ばかりが響いた。俺が頭を洗っていると、ぺふ、と座る俺の膝に泡まみれの何かが触れる。「ん……くまか?少し待て」泡まみれの頭のせいで目をつむっていたので、シャワーで頭の泡を流してからくまを見て、噴き出した。「お前、いつからシロクマになったんだ」「♪」綺麗にもこもこの泡に包まれて、黒い毛皮がすっかり隠れた熊鞘がそこにいた。「へへ、頑張りました!」「鯰尾の仕業か」「いやぁ、俺、先に洗い終わったからくまくんの背中洗ってたんですが、なんだか今日泡立ちが良かったので、つい!すっごい滑らかな泡じゃないですかそれ!」「確かに、ケーキのクリームみたいだな」「クマ型ケーキですね!今度燭台切さんかいちにいに作って貰おうかな」「♪」「ほら、遊ぶのは終わりだ、流すから大人しくしていろ」「!!」熊鞘が手を振り上げると、ふわふわの泡が舞う。いつか見たぼたん雪を思い出す。「もうじき、冬になるなぁ」「そうですね、そうしたら雪合戦でもしましょうか!くまくんも初めての雪でたくさん遊びましょう!」「♪」かまくらもいいなぁー、という鯰尾の言葉に、良く分からないなりに返事をする熊鞘。──雨降らしに雪降らしの逸話を持つ槍。その槍の為に誂われた鞘は、きっと雪が好きになるだろう。そのままよしなしごとを話しつつ、俺たちはのんびりと風呂を堪能した。[newpage]「ふふ、可愛いねぇ」「あはは、途中までは頑張って起きてたんですけど」「こいつの毛皮を乾かすの、時間が掛かりすぎるんだ……」「……」風呂上がりの俺たちを見て、燭台切が笑う。頭にタオルを巻き付けた鯰尾が、座った俺の頭の水気をタオルで拭き取り、あぐらをかいた俺の膝に大きなタオルでくるまれた熊鞘がいる……うとうとと舟を漕いでいてほとんど夢の中だ。風呂を済ませたはいいが、熊鞘の毛皮の水気が取れなくて悪戦苦闘した。俺たちがタオルで身体の水気を取るようにはいかず、何枚も何枚もタオルを使って、ようやく半乾きくらいまで拭けたのだか、その頃には熊鞘は半分ほど眠っていた。「こいつ、いつもこんな手間暇かけているのか……」「んー、燭台切さんはこれくらいやってましたが、御手杵さんはどうだったかな?」「あいつは半乾きの熊鞘を部屋に連れ帰っていたぞ──そら、冷茶だ」「鶯丸さん、ありがとうございます!」「ありがとう、戴こう……御手杵はこいつを半乾きで放っているのだろうか」ひと時手を止め、鶯丸から冷茶を受け取る。湯上りの身体に冷たい茶が染み渡る心地がする。手持ち無沙汰になった俺は熊鞘の頬辺りを撫でる。しっとりと湿った毛皮がまとわりつくようだ。むず痒いのか、身じろぎした熊鞘だったが。がぶり。「い──っ!」「? 長谷部さん、どうしました?」「か、噛まれた……」「へ?」──寝ぼけているのか、噛んだ後にぺろぺろと俺の手を舐め、また熊鞘は眠りに就いたようだ。熊鞘の歯型を鯰尾に見せると、うわ痛そ、と眉をひそめられた。そこに、「おぉ、いたいたぁ」「あ、御手杵さんお帰りなさい!」「おー、ただいまぁ。熊鞘がすまねぇな」戦場から帰還したらしい御手杵が、俺の膝からタオルごと熊鞘を持ち上げる。「いや、気にするな……おい、まだそいつの毛は乾いてないぞ」「あー、大丈夫大丈夫、干しとくから」「干し……?」「やっぱ濡れてるといつもより重たいなぁ……」ぶつぶつ言いながら熊鞘を抱えて、御手杵は立ち去っていった。「……とりあえず、俺たちの髪、乾かしますか」「……そうだな」俺の手には湿ったタオルだけが残った。──その後しばらくして、御手杵の部屋を通りかかった五虎退の悲鳴に駆け付けると。開け放たれた部屋の中。鴨居に据え付けられたフックに、タオルごと紐でぐるぐるにされてくくりつけられ、ミノムシのようにぶら下げられた熊鞘がすやすやと眠っていた。「あいつ乾くまで時間が掛かるから干してるだけだってえ」と言い放った御手杵は一発殴った後に説教しておいた。[newpage]「おや長谷部、こんなところで読書ですか?」主命厨の貴方がそんな事するなんて雪でも降るんですかね、と袖口で口元を押さえて見せるのは宗三左文字だ。後ろにお盆を持った小夜左文字を連れているところを見るに、出陣の合間に一緒にお茶でも飲みながら過ごそうとしているのだろう。「ふん、この天気でいきなり雪が降るなら御手杵の仕業だろう」「はぁ、責任転嫁ですか?」「何を読んでいるの?」宗三の言葉に被せるように、小夜が尋ねてくる。恐らく俺達の無駄な諍いを止める為だろう……出来た弟だ。「……」そんな小夜に、無言のまま本の表紙を見せる。「……『楽しく仲良く🐾犬のしつけ』……?」「長谷部、本当にどうしたんです?うちの本丸に犬はいませんよ」本の題を読み上げる小夜に、首を傾げる宗三。「知っている……欲しい本が届くまでの代替え品だ」「何の本を頼んだの?」「……黙秘する」はぁ、とため息を付きつつ返せば、何を思われたのか小夜の一緒に一休みしない?との言葉のせいか、後から来た江雪左文字含めた左文字兄弟の茶会に強制的に加えられた。──言えるか。主に熊鞘の話をし、熊の生態がわかる本を所望したら『ごめん流石に持ってないや、探しておくからそれまでこれでも読んでて!』と渡されたのが犬の本。主は現世で犬を飼っていたとは聞いていたが、まさかここで出されるとは……と思いつつも、お借りしたからには一度目を通すべきと読み始めた。その中の記述に、【噛まれた時の対処】とあり、そういえば風呂上がりに寝ぼけたあいつに噛まれたな、と読み始めて後悔した……。『噛み付いて、自分のつけた噛み跡を舐める行為;犬は噛んだ後に、我に返って怪我をさせた場所をペロペロと舐める仕草をよくします。人間から見ると反省しているように見えますが、実際はこれっぽっちも反省していません。犬の心理学や行動学に関する本を読むと、噛んだ後に舐める犬の気持ちは・俺/私のほうが偉い(強い)のがわかったでしょ。・仲良くしてあげる。という意味があるようです。自分が優位に立つ事で、噛みついた後の落ち着きを取り戻しているのでしょう──』そんな記述に落ち込んでいたところにお前たちが来たんだ、とは言えない。……俺は確かに、風呂のあとで寝惚けた熊鞘に噛まれて噛み跡を舐められた。あれは……いや、あいつは熊だ、犬ではない……いやしかし……。江雪の煎れた茶を頂きつつ、もんもんと考えた結果。──いつかあいつ熊鍋にしてやろうそうしよう。「長谷部から……邪念を感じます……」「貴方、その顔小夜に向けないでくれませんか?」「……長谷部、大丈夫?お茶苦かったの?」小夜左文字を撫でつつ他2人を睨みつつ、苦い気持ちを茶菓子で押し込めた──。─end─