ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 透明と水色と夏祭り2017年6月4日 16:16かむそよの出会いを妄想しました。久しぶりに地球に来た神威がそよ姫と出会い、夏祭りに行くお話です。 テスト期間に現実逃避に書いたので長々ダラダラわけのわからないところでお話が終っていますが、続きを書ければ書きたいところで思っています…(需要があれば) あぁ〜誤字脱字もろもろ適&当なのでお許し下さい……っ!! 久しぶりに来た江戸は夜兎ではなくともへばってしまうような、人が多い場所特有の空気のだるさと暑さを纏っていた。そんな日差しとは無縁です、と語っているように真っ白に透明感のある肌をした神威は人混みを避けるように瓦屋根の上を歩いていた。それにしても、暑い。神威は暑さを凌ぐため、人のいない路地裏に足を向けた。日傘だけでは耐えられそうになかった。「…おい、あれって」「ああ、間違いねぇな。あの女捕まえたら身代金がっぽりだ」そう言う男二人組の目の先には、地球に住んでいない神威にもわかる江戸の町民よりいい着物を着た女が一人。男たちの手元では黒いものがバチバチと音を立てる小さな光があるので、多分あれがこの江戸の『悪党』と呼ばれるものなのだろう。気まぐれで、なんとなく二人組の様子を目で追っていた。神威が屋根から道に降り立った気配もわからないのだから、きっと神楽の元にいたような『サムライ』ではないのだろう。女の方は、この人通りの少ない路地裏を通っている割に周りを気にしていないのか男たちの存在に気付きすらしない。この町の人々のように浮き足立っているように見える。その揺れる上質そうな黒髪と暑さを気にしていないような雰囲気を纏った後ろ姿に、なぜか無性に腹が立った。 「こんにちは、悪党さん。質問なんだけど、君たちは強い?」「うぉ!誰だお前?」 急に目の前に降り立った神威に一人が驚きの声をあげた。もう一人は驚いた様子だったが声をあげなかった。こちらの方が気が小さいのかもしれない。 「俺たちになんか用か?お前も見たところ変わった奴だな。金になりそうだ」「あはは。やだなぁ、俺で金を稼ごうとしてるの?俺はね、強い奴と戦いたいだけなんだ。それで、君たちは強いの?」「…あぁ、つ、えーよっ!!!!!」「ルールなしでなぁ!!」いきなり襲いかかれば、一発で倒せるとでも思ったのだろう。声をあげなかった方が刀を抜き出し、神威の右側に斬りかかってきた。もう一人は左側からの蹴りだ。神威は真上へのジャンプでそれらを交わし、「いいね!でもサムライは刀でしょ?二人とも抜きなよ」と煽った。 「あの女の方が金ヅルだからなぁ、お前に構ってる暇はないんだ、よっと!」言われた通り刀を出して斬りかかってくる男たちに迷いはない。この町の悪党というのは人を殺すことに迷いがないみたいだ。自分が言えることではないけど、荒れている。そんな攻撃を交わしながら後ろを見ると、神威たちに気付いた女が足を止めてこちらのことを見ていた。「ねぇ、そこにいる人さ、さっさと逃げないと連れて行かれるよ?この二人、君のこと狙ってるみたいだから」「お前…何者だ?よそ見してるくせに…っ!」女がようやく足を動かして走っていくのを見ながら答える。「俺はお前らより強いんだ。何者なのかは知らなくていいよ」剣の使い方があのサムライよりも全然甘い。左右から来てるのに神威に当たりもしない。「……サムライはみんな強いのかと思ったけど違うんだね。神楽があいつらに執着する理由がわかる気がするよ」剣が神威に全く当たらないのに嫌気がさしたのか、もう太刀筋どころの話ではなくなっていた。「ここにあのサムライ以外の強い人はいないのかなぁー…って、まだいたの?」この日陰の路地裏に唯一光差す場所に彼女は立っていた。暑さで陽炎が登っている。彼女が立っている場所に自分が行ったら具合が悪くなるだろう。何かを喋ろうとしたが、神威のしかめた顔に反応して口を噤んでしまったので仕方なく「なに?」と聞き返した。全身を震わせて、どうしてここに戻ってくる必要があったのだろうか。怯えながらもまっすぐこちらを見る目に、芯がある。その目をしてる地球人は刀を持っていたら大抵はそこそこ強い。「……どうして、私を助けたんですか?前…前は、殺そうとしたのに」「前?俺は誰かを殺し損ねたりしたことはないと思うんだけど」「私は徳川茂茂の妹、そよと申します。…助けて頂いてありがとうございます」 「へぇ」神威はひと蹴りでそよとの距離を数センチまで詰め、そよを壁まで追い詰めた。やっぱり、日陰の外は傘を差していても夜兎には少しきつかった。神楽はよくこんなところで生活しているな、と感心する。 そよは小さな悲鳴をあげて、背後に逃げ道がないことを神威の腕によって狭められた空間の中で確認していた。弱い、あまりにも。神威の意思一つでそよは兄の元へ旅立てるくらいに。「お前、あの時にいたんだ。確か…あの黒い集団の」「沖田さん、沖田総悟さんですよね?」「そうそう。あのおまわりもなかなかおもしろかったな。……ねぇ、今自分がどういう状況かわかってる?前自分を殺そうとした奴が目の前にいて、そいつはついさっき二人殺したばっかりなんだよ?今度こそ殺されるとか思わないわけ?」 「…わかっていたら、私はここにいません」向けられていた潤んだ瞳が下げられ、その反動で流れるような黒髪が揺れる。「…あれで兄が亡くなり、私は将軍の妹という地位もなくなりました。私は、兄のように頑張らないければならないのかもしれませんが…。それはなんのためでしょうか?わ、私が江戸を守る必要があるのでしょうか?」「…よくわからないな。俺に殺されたくてここに戻ってきたの?」 だとしたらそれは勿体ないと神威は反射的に思った。それがらしくない思考だということに神威は気付かない。「私が死んでも、江戸はなにも変わりません。本当に強い人たちが沢山頑張ってくれているのに、私はなにもできないんです。できることがない。だったらいっそ一般の方のように生きる方がいいと思って…。ただ、不思議に思ったんです。あの時私を殺そうとしてた人が、今は興味すら示さないから」「俺は別に将軍サマとか初めから興味ないんだ。ああいうのに乗っかってれば強い奴に会える。それだけだよ」 「なら、今の私を殺す気はないんですか?さっきのあの二人も、強そうだったから殺したんですか?」一つ目の質問に答えるのは簡単だったが、二つ目の質問は神威自身よくわかっていなかった。どうして、そよを襲おうとした二人の目の前に立って相手をしたのか。最初から相手にならないことくらいわかっていたのに。「俺、弱い奴に興味ないから安心してよ」「そうですか」 ………え。今まで生きてきた中で、初めて見た笑顔だと思った。「なに本当に安心してるの?まだ俺に拘束されてるの知ってる?」 「あ、すみません。貴方の表情が知り合いに似ていたものですから」 「夜兎は暑さに弱いんだ。あまり調子を狂わせないでくれよ」日傘越しに太陽を睨みつける神威がおもしろかったのか、そよはクスクス笑い出す。自分が神威の殺しの守備範囲にないことに安心したからかもしれない。「夜兎っていうのは、肌が本当に綺麗なんですね。羨ましいです」 「そよの黒髪の方が綺麗だよ」「そんな素敵なことを言ってくれるんですね」 にっこりと、今度は自分に向けられた笑顔。暑さと相まって視界が揺れる。 あぁ、自分はなにを言っているんだろう。こんな事を言うのは全部暑さのせいだ。今日は大人しくするべきだったかもしれない。阿伏兎は暑いと外に出ないから自由にできると思って出てきた神威だったが、自分も限界らしかった。 「あの、大丈夫ですか?」「……あっつい」神威が呟くと、そよの夜兎とは違う健康的な白い肌を持ったそよの腕が神威の頰に伸びる。「体温がすごい高いです!どうしてこんなになるまで放置してたんですか!?私についてきて下さい!歩けますか?」彼女は本当に変わっている。どうして殺されかけた奴の身の安全をこんなに心配できるんだろう。 「…歩けるよ。日陰に行きたいんだ」「このままでは危険です!私の隠れ家に案内しますから!」[newpage]そよの言っていた隠れ家は、裏路地を抜けたところにある住宅地の小さな民家だった。飲み物やタオル、布団を用意された神威はそのまま意識を手放し起きた時には夕方になろうとしていた。「あ、神威さん起きましたか?」「…名前って言ったっけ?」「やっぱり貴方が神威さんなんですね。私の夜兎のお友だちって神楽ちゃんのことなんです。あまりにもそっくりだからきっとそうだろうと思いました」わかりもしない相手の名前を、適当な予想で呼び始めるなんて変わってる。地球人とはみんなこんなものなのだろうか。額に乗せられていたタオルと取って体を起こしたが、暑さによる影響はなくなっていた。そよが「もう起きても大丈夫なんですか?」と聞いてきたので「ありがとう」と返し、横に置いてあった水を飲んだ。さっきまで神威を苦しめていた白い光は淡いオレンジ色に変色を始めていた。この色を綺麗と表現する地球人は変わっている。これがわかればサムライの原理が理解できるのだろうか?それはなんともめんどくさいことで、ため息しかでない。 「…あの、神威さんはこの後予定はあるんですか?」「予定?しばらくは燃料調達やらで地球にいるけど、なんで?」 よく見ると、そよの格好が先ほどとは変わって軽そうな浴衣に変わっていた。恥ずかしそうに下を俯いて、そよは神威に言った。「…よろしければ、お祭に行きませんか?」「祭?神楽と行けばいいじゃん」「…神楽ちゃんは忙しいんです。抜け出した身ですから、他にアテもないですし」そよは意外と抜け目がないということがわかった。神威を連れて行けば変な輩に襲わずに済むし、助けて貰った手前、神威が申し出を断るには少し躊躇われた。 「そよってちゃっかりしてるね」「そうでしょうか?あ、男物の浴衣ならここにありますから着てください」そよは奥の押入れを開けて男物の浴衣を出して来た。普段ここにそよはいないはずなのに物が沢山、しかし綺麗に押し込まれていた。よく見ると家の中全体がそんな感じだった。質素だが生活感が溢れている。神威が寝ている布団もとても綺麗でしっかり洗われていた。「なんでそんなものがあるのさ?ていうかここ、隠れ家って言ってたけどなんなの?」 そよの髪の毛は先ほどとは変わって上でまとめ上げられていた。下に流れていた時も美しいと思ったが、上で結われているのも悪くはなかった。 「ここはこの町のお婆さんの家なんです。お爺さんに先立たれて一人で暮らしていたので、私の貯めたお小遣いから家賃を払うので、私の荷物を少しと何かあった時に泊めてくださいとお願いしました。お婆さんはもうお孫さんとお祭に行かれてます」 この国の姫をやってる地球人はこんなに神経が図太いのか。他の星の姫というのは横暴で、誰かに頼りっぱなしのつまらない生き物ばっかりだった。だから神威はそんな枠から外れたそよに猛烈な興味を抱いた。「いいよ、行こう祭」神威がそう言うと、花を咲かせたような笑顔でそよは弾かれたように立ち上がった。その笑顔に神威はまた目を奪われそうになる。…ダメだな。そよの顔にはなんか中毒性があるみたいだ。もう治ったと思っためまいがまた襲ってきそうになる。 「では、変装もしなければならないのでお面も買いましょう!神威さんも着替えてください!」「え、俺の着替えそのままそこで見てるの?そよってばやらしーな」 「え、あっ、すみません!わ、私はあっちに行っているので着替え終わったら行きましょう」 パタパタと走っていく足音が軽い。きっとお祭が楽しみで仕方なかったのだろう。そんなそよの感情が、お祭に微塵も興味のない神威にもじわじわと伝染していく。 「あ、そよ?俺帯の締め方とかわかんないんだけど」「え、えぇ?私が締めるんですか!?」「だって俺わかんないし」そっとこちらに戻ってきたそよの顔は少し赤い。 「えっと…じゃあ私が、」「地球人にとっては女が男の帯を締めることに何か意味があるの?」「…いえ、特にないのですがただ私が緊張してしまって…すみません」先ほどよりも真っ赤になったそよは神威から手渡された帯を手に取り、遠慮気味に神威の後ろに立った。そよが息を止めて腰に手を伸ばしたのがわかった。神威自身、帯を締めて貰ったことなどないので黙って後ろから伸びてきたそよの手の動き見ていた。神威の筋肉質な背中のせいでそよの腕が届かず、そよの顔が神威の背中にくっ付く。「すみません、腕が届かなくて」 帯を締めることは意識するのに、体がくっついてしまうことには頓着がない。この数時間一緒にいてわかったことは、神威はそよといるとリズムが狂うことだった。このまま足元の布団に組み敷いてしまえばいいものの、あまりにもそよという存在が無邪気なせいで襲う気すら無くしてしまう。「そよって誰かに襲われたりしたことない?」「この身分なので一般の方よりは多いのではないでしょうか。神威さんにも襲われましたし」 「できましたよ」と言って微笑むそよを見て、神威はため息をつきたくなった。もう、そういう意味ではないと否定するのもめんどくさくなった。きっとそよはこういう地球人なのだ。「まーいいや、行こうか」神威とそよは並んで外に出た。傘は要らなくても、空気はじっとりとしていて神威は顔をしかめた。 「神楽は暑いとか騒いだりしない?」「そうですね、今日のように暑い日は家の中で遊ぶことが多かったと思います。けど神楽ちゃん、大抵は傘を差して他の子と走り回っていますよ」「馬鹿は自分が具合悪いことに気付けないからね」まとめ上げたそよの髪につけられている水色に黄色が散りばめられた髪飾りが歩くたびにゆらゆらと揺れる。浴衣も水色、黄色、赤色の花びらが綺麗に咲いていてそよにぴったりだと思った。「お姫様っていうのはピンクが好きなんだと思ってたよ。そよは水色なんだね」 「あぁ、私普段はピンクが多いのでこっそり抜け出す時は違う色を選ぶんです。ピンクは女の子らしいとかでよくみんなが持ってきてくれるんですけど、私はこういう色も好きなんですよ」そよはきっと不自由なんだ。神威はそう思った。地位や兄、そういういろんな自分は捨ててしまったようなゴミのようなお宝を前にしてそよはきっとどうすることもできない。捨ててしまえば、自分のことだけ考えれるのに。そよはきっと神威の何百倍も周りのことを考えて、困っているんだ。 ……俺みたいになれば、そよも自由なのに。 だけどきっとそよは、何年たっても神威のようにはなれないし、ならないのだろう。そんな神威の思考とは裏腹に、そよは歩く足を早めた。 「ほら神威さん!着きましたよ!まずはお面を買いましょう!!」「わかったから、走ったら転ぶよ」「どうして走り出さずにいられるんですか!私、神威さんの分も買ってきますね!」 そう言ってそよが買ったのは、白い狐のお面と黒い狐のお面だった。そよはどうしても黒がつけたいらしく、神威には白のお面を渡してきた。 「これを顔の斜め前に付けたら、きっと周りからもバレませんよ」「これ俺がつける必要ないし、付けたとしてもすぐそよってわかると思うよ」「いいんです!神威さんも付けてください。祭は楽しまないと!」ガヤガヤと沢山の人が大きな通り沿ってゆっくりと流れてく。そよは神威の前をキョロキョロしながら歩いている。周りを気にしないで屋台に吊られてしまうので、たまに神威がそよを引っ張らないとどこかに行ってしまいそうだった。こんな浮かれた人混みの中で位の高い彼女が神威の目の前からも消えてしまえばそよは一気に危険に陥るだろう。 「そよってすっごい綺麗なのに中身は幼児みたいで目が離せないね」そよは勢いよく振り返ってまた何か発しようと口を動かすが声が出ていない。 「なに?声出てないよ?」「…綺麗とか、あんまり言っちゃダメですよ」この暑さの中、そよは一人だけ涼しそうな空気を纏っていた。周りは熱されたような怠いオレンジ色のような空気を纏っているのに、そよは澄んだ水色のような空気。暑さでどうにかなりそうでも、そよだけははっきり認識できた。それを綺麗と呼ばず、なんと言えばいいんだろう。 「神威さんは、準備が終わって地球を出たらもうここに来ることはないんですか?」こんな騒がしい人混みの中でも、そよの声だけははっきり聞こえる。「どうかな。地球に寄ることは結構多いんだ。地球はしっかり空気と温度があって夜兎も対応しやすい。今日みたいな日は例外だけど」 「……それじゃあ、また神威さんに会えますか?」「…俺の気が向いたらそよに会いに行ってあげるよ」 気付いたら神威はそう答えていた。自分が誰かに負けるなんてことは想像したこともないが、一度宇宙に出れば明日生きているかの保証なんてない。ただ、地球に来た時にそよの顔を見るのは悪くないと思った。 「本当ですか!?」 「うん。その代わり次来る時にはその屋台に吊られるような幼児みたいな部分をなおしておいてね」「失礼ですね!私は普段はこんなんじゃないんですから!でも今日は楽しんじゃおーっと!」 さっきもテンションが高いと思ったが、さらに度が増して元気になったそよ。こんな人だらけの祭りのなににそんなに喜んでいるのだろう。「神威さんは悪党と呼ばれる怖い人だけど、しっかりと向き合えばいいところもあるんだってわかったんです。だから今日でさよならすると思ったら寂しかったけど、また会えるとわかったらこれほど嬉しいことはありません!」「馬鹿だなぁ、俺にそんな価値なんてないよ」それでも、そよがそんなに喜んでくれるのは嬉しかった。でもそれは全部この暑さによる気まぐれで、ここを歩いているのだって偶然で片付く。頭がぼんやりするからきっと判断が鈍っているはずだ。「ありますよ。絶対に気向いて下さいね」次地球に来た時は、地球は冬かもしれない。秋かもしれない。きっと今みたいに蒸されることはないから、そよに会おうなんて判断は下さないはずだ。だからきっとそよに会うのは今日が最後だ。でも、もし本当に気が向いたら、また今日のようにそよに振り回されに会いに来てもいいのかもしれない。なんて考えてしまうのは、やはりこの暑さのせいだ。そよの笑顔は綺麗だ。きっとピンクも似合うのだろうけど、そよの笑顔に水色も涼しげでよく似合ってる。買ったばかりで慣れぬだろう浴衣と下駄で楽しそうに屋台を見て歩くそよが、周りより群を抜いて綺麗なためにやけに儚げで、茹だる意識がそよだけに向いた。