激動の時代に咲いた華麗なばら ケンティフォリア
ケンティフォリア・ローズとモス・ローズは共にヨーロッパで特に人気の高い系統で、多くはオールドローズらしい幾重にも重なり合った花弁と豊かな香りに恵まれています。
今回はこれらの系統の魅力と庭園素材としての使いこなしに焦点を当ててみたいと思います。
多くの花弁を持つことからキャベッジ・ローズとも
ロサ ケンティフォリア
ケンティフォリア・ローズはセンティフォリア・ローズとも表記され、「非常に多くの花弁(または葉)」を意味します。
純粋な原種バラではなく、ロサ・ダマスケナ・ビフェラとアルバ・ローズの交雑ではないかと推測され、16世紀頃からオランダで改良され18世紀初めに完成されたといわれています。
もっとも基本となるロサ・ケンティフォリアは「キャベッジ・ローズ」(キャベツバラ)の別名が示すとおり、たくさんの花弁とカップ状の丸い花型が美しい品種です。
絵画にも好んで描かれ、特に女流画家ヴィジェ・ルブランによるケンティフォリア・ローズを手にしたマリー・アントワネットの肖像画は有名ですし、その後の植物画の大家ピエール・ジョセフ・ルドゥテもこの系統の見事な作品を残しています。
いかにもオールドローズらしい、美しいカップ状の花容と素晴らしいダマスクの香りは現在も変わることなく私たちを魅了し続けます。
激動の時代に咲いた華麗なばら モスローズ
ロサ ケンティフォリア ムスコーサ
モス・ローズはこのケンティフォリア・ローズの突然変異により17世紀の終わり頃に生じ、コモン・モス(ロサ・ケンティフォリア・ムスコーサ)が最初の品種であると推測されています。
「自然で一番素朴な草をまとって、このバラに優るものがあるだろうか」と詩にも謳われ、19世紀のフランスの育種家ラフェイやロベルトらによりドゥィド・ポール・フォンティーンなど返り咲きを有する品種も作出されるなど、こちらも大変人気の高い系統です。香りも高く、コンテス・ド・ムリネなど一部ダマスク・ローズを起源とする品種も存在します。
また、アルバローズの多くは独特のさわやかなレモン香を含む芳香を有し、現在も白バラの香りとして、ハイブリッド・ティ種などモダンローズの白バラの中にも、その影響を見ることが出来ます。
すべての品種ではありませんが耐寒性も高く、アルバセミプレナやメイデンスブラッシュなど古い品種はばらの大敵である黒星病にもほとんどかからない様です。
前回にご紹介したガリカローズほど枝に柔軟性がないため、植栽の目的は多少限られますが、アルバローズもガリカローズに劣らず魅力にあふれた品種群と思います。
誘引は少し上級者向け
ウィリアム ロブ
庭園素材としてこれらの系統をみたとき、枝振りがやや散漫な品種が多いので使いこなしとしては上級の部類に入るかもしれません。また、返り咲く品種ほど木立バラに近い、言い換えれば自立型に近い樹形となりますので枝は曲げにくくなり、弱剪定で形を整えながら庭木のように仕立てたり、トレリスや窓辺のポイントとして使用してみると良いでしょう。
一方でファンタン・ラトゥールやウィリアム・ロブのように枝を長く伸ばす品種はつるバラとして誘引して咲かせますと大変美しく魅力的です。
それらの中間型であるロサ・ケンティフォリアやブランシュ・フルールはアーチや壁面、トレリスなどに、ステムが長く大輪のジュノーなどは自然樹形または弱剪定で小灌木のように咲かせる、またはいったん枝を上にあげてしまい、枝垂れ咲く姿を演出するなど、この系統に限ったことではありませんが枝振りとステムの長さ、花付きを考慮して仕立て方を工夫してゆくことが何より大切かと思います。難しいことではありますが、期待通りの美しさを堪能できたり、思わぬ効果を発見したりとまた楽しみも尽きることがありません。
花容や香りの点からも、これらの系統はもっともオールドローズらしい魅力にあふれた、素晴らしい文化遺産といえます。花や香りだけでも栽培してみる価値は充分にあり、たとえ鉢植えの一輪の花であっても、多くの喜びと感動を与えてくれることでしょう。
そして、革命と社会不安の時代にあってなお美しいものを生み出し続けた人間の力に、改めて心からの敬意を捧げたいと思います。
特におすすめの品種
特におすすめの品種を抜粋して、ご紹介させていただきます。
ロサ ケンティフォリア – Rosa centifolia
古くから愛された基本種で、花弁はキャベツほど多くはないものの、風情のある美しいカップ咲き。ダマスクの素晴らしい香りがある。花付きはやや少なめだが気になるほどではなく、樹形は自立ぎみにまとまるのでアーチ仕立てやトレリス、鉢栽培にも好適。
ファンタン ラトゥール – Fantin Latour
フランスの高名な画家の名をいただき、その名に恥じない誰が見ても美しい品種。整ったロゼット本来のケンティフォリアの性質とはかなり異なり、伸長力が強いので窓廻りや高めのフェンスなどに最適。独特の甘い香りが豊かでトゲがほとんどないのも嬉しい。
ブランシュ フルール – Blanchefleur
ありそうで意外に少ないのが白いオールドローズ。豊麗なカップ状の花が美しく、豊富な花付きとあいまって満開時は見事。ダマスク系の香りがあり、3mほど伸びるので窓辺やトレリスに誘引して咲かせると美しい。花名は「白い花」を意味するが、蕾の内は紅が差す。
キャプテン ジョン イングラム – Capitaine John Ingram
栗色を帯びた赤にわずかに黒赤の絣が入るような、大人びた色彩が美しい。枝振りはモスというよりむしろガリカローズに近く、細くて曲げやすいためアーチやトレリス、オベリスクなど小スペースでの仕立てにも好適。花付き香り共によい。
デュ ド ポール フォンテーン – Deuil de Paul Fontaine
深い黒赤と濃厚なダマスク香が見る人を惹き付ける、魅惑のモスローズ。返り咲きがかなりあり、秋にも開花が楽しめる。返り咲きするオールドローズは概して病害虫に弱いのが難点で、この品種もその例にもれないが、それを補って余りある品種。
2.5mほど伸びるので、壁面などへの誘引のほか、自立させて弱剪定で管理し庭木のように楽しむこともできる。
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