芥屋の波が引き寄せた個性が集結
特集 – サンセット・ライヴ2010 (1日目レポート – 千葉原編)「芥屋の波が引き寄せた個性が集結」@ 芥屋海岸 2010.09.03
ブラック・ボトム・ブラス・バンド
「この人たちなくしては語れない」と進行役のMCが言う通り、サンセット・ライブの看板バンドであり恒例行事。出演歴は8年目。毎年3日間出演し、どこからともなく練り歩きをし始めているようだ。開始前にステージに着くと、音だしをしている彼らが見られた。まずはトロンボーンで「ムーン・リバー」を奏でる人物に目がいった。南国の太陽に照らされた金管楽器のキラキラとした輝きは、サンセットの始まりの予感を漂わせた。
隣のポンティアックスの演奏が終わって数分、バンブー・ステージ後方のビーチから彼らの演奏が聞こえてくると、待ちわびた人たちが熱い手拍子で迎える。彼らが近づくと、人だかりに道ができるのだ。ファンキーな曲を終えると、「サンセット最高!今年もこれてよかった」とここに来た誰もが思っている気持ちを代弁しているかのようだった。
そしてこのステージでは恒例なのだろうか、威勢のよい「ヨイサー」の掛け声で始まるお祭り音楽。メンバーの中で特に気になるのが、ハッピのような姿に黄色いサングラスと言う変わった出で立ちのヤッシー。体中の空気を吹き込むかのようにトロンボーンを演奏する姿がとても印象的で目が離せない。祭りの音は「ビート・イット」に変化し、マイケル・ジャクソンに扮した彼が登場する。彼が煽るとコールと笑いが起こり、会場は盛り上がる。ジャクソン・ファイブの「ABC」に変化して行った。
そして新譜『TOUGHNESS AND MADNESS(タフネス・アンド・マッドネス)』から「NOSTALGIA ~DANCEHALL~ (ノスタルジア~ダンスホール~)」、レイ・チャールズ「ハレルヤ・アイ・ラブ・ハー・ソー」(おそらく)のカバーが続き、同じく新譜からの「愛を探して」でこの場はラストになった。演奏時間は短く感じたが、サンセット・ライブの幕開けを飾るファンファーレとなっていた。
ダッド・マム・ゴッド
夕暮れをバックに黒スーツに身を固めた男たちの登場は、トロピカルなビーチを徐々にモノクロに染めていった。ダッド・マム・ゴットは一昨年、東京スカパラダイスオーケストラを脱退した冷牟田竜之が立ち上げた新プロジェクト。アルバムは浅井健一が主催するSEXY STONES RECORDS(セクシーストーンズレコード)からのリリース。メンバーにはロックンロール・ジプシーズの池畑潤二、ザ・ミッシェル・ガン・エレファントのウエノコウジ、エゴラッピンの森雅樹らを迎えており、期待に拍車がかかる。
ライブはアルバム1曲目の「Kicking for Kicks(キッキング・フォー・キックス)」で始まった。疾走するドラムにつられて、体は自然と踊り出してしまう。冷牟田はギターを手にし「LUPIN THE THIRD(ルパン・ザ・サード)」へ。スカパラ時代からのお馴染みの曲で一気に掴みにかかる。2トーンの雰囲気が漂うスカとロックの要素が競いながらも共存しているような、気持ちのよいスピード感がたまらない。楽曲と同じく、心を掴んで離さないのは7人のイカつい風貌。ロック勢にも劣らず、ホーンセクションの3人もまた素晴らしい。「Turn the corner(ターン・ザ・コーナー)」では、鋭い視線を会場に放射しながら銀管のサックスを鳴らす青木ケイタ(ex.トライベッカー)。ムーディなイントロで始まる「JAZZY BREAKS(ジャジー ブレイクス)」では、ソイル・アンド・ピンプ・セッションズのタブゾンビがトランペットを奏でる。セッションのような曲ではそれぞれのむき出しにされた個性がぶつかり合い、男たちの豪華な競演を楽しむことができる。
そんな彼らの演奏が空を揺さぶったのだろうか。ぽつぽつと降り始めた雨が次第に強まっていくのだが、踊りまくるお客のノリは一層にヒートアップしていく。スカパラ時代と変わらず、スカのにおいでバンドと会場を熱いアジテートで引っ張っていく姿は健在だった。サンセットには2001年、2003年とスカパラとして出演しているが、2010年の夏、冷牟田氏の出身地でもあるここ福岡にて、荒々しくも新たなスタートを切っていた。
ハバナ
ノンラー(ベトナムの円錐型の藁帽子)を被り、腰に届きそうなくらいの長い髪と上半身に刻まれた見事なタトゥーの入った人が昼間から会場内を闊歩している姿を何度も目撃し気になっていた。この異彩放ちまくりの人たちが、バンドをやっているという情報を聞き、見ない訳にはいかなかった。彼らはこの日のメインの中でも一番小さなバンブー・ステージでトリを務めた。
アコースティックギターで有機的な音の中に、ディジュリドゥ、シタール、ジャンベといったオリエンタル要素溢れる楽器が入る。座って聞いても、立ち上がって音に身を任せてみても、伝わってくるものに温度差がないことがとても面白い。インドを思わせるサイケデリックな彼らの演奏にどんどん引き込まれるのだが、聞いていくほどに、アジアと言ってもそう遠くはない、今いるこの場所をじっと見つめていたくなるような本当に不思議な感覚。聞くものにスタイルを要求しない。そして、身体や心のいろいろな部分が解放されていく感覚を味わえるハバナの音楽。彼らは福岡を拠点に活動しており、東への進出も期待したいが、まずは現在制作中であるという音源を心待ちにしたいものだ。
The photo of the Dad Mom God is by Toru Suguta, the Habana is by Nozomi “Wacchy” Wachi
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