「この化粧水はどこまで浸透してるんだろう?」
「なんで目の周りだけ特別なケアが必要なの?」
普段、基礎化粧品を使っていてこんなことを思ったことありませんか?
「どこまで」や「なぜ」を理解するために、まずは皮膚の構造を知ることをおすすめします。
スキンケアを考えるならまずはその対象である皮膚のことを知らないとはじまりません。
皮膚の構造を理解して、今しているスキンケアは、どこにどんな効果があるのか意識すると、そのケアの効果もより良くなるかもしれません。
筋トレでは鍛えている部分を意識しながらトレーニングを行うと、意識していない時に比べてより良く鍛えられるそうです。
筋肉に意識が関係しているなら、肌も同じではないでしょうか?
というわけで、このページでは皮膚の構造と各部位の役割について書いてみます。
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皮膚の構造
まずは皮膚の全体像から説明します。
(※このイラストだと表皮と真皮が同じくらいの厚さになってますが、実際には表皮は真皮の1割程度の厚さです。)
皮膚は大きく分けて3つの層からなります。
下から皮下組織、真皮、表皮です。
ただし、表皮と真皮だけを皮膚と呼ぶこともあるようです。
私もずっとそう思っていたのですが、美容皮膚科学辞典には皮膚は表皮、真皮、皮下組織の3層であると記載されています。
別の医師が監修している書籍では皮下組織(脂肪層)を皮膚として扱っていなかったりするので、各学者や医師によって捉え方があるのでしょう。
ここでは「皮膚とは何か?」という学術目的ではありませんので、もう少しライトに捉えていきます。
皮膚の厚さ
表皮と真皮の厚さは0.6ミリから3ミリです。
皮下組織というのは脂肪層とも言われている部分であり、脂肪は人によって厚さが変わりますので除外します。
顔は皮膚が薄い部位で、中でも頻繁に動かす必要のあるまぶたの皮膚の厚さは0.6ミリ程度と人体の皮膚で最も薄い部位になります。
まぶたはとても薄い(=コラーゲンなどが少ない)部位なので、アイクリームなどでの他の部位と違った特別なケアが必要なんですね。
逆に首の後や背中などは厚く、3ミリ程度もあります。
その内、真皮は9割ほど占めます。
つまり厚さが2ミリの皮膚の場合、真皮は1.8ミリ程で、表皮は0.2ミリ程です。
「表皮はラップ1〜2枚分の厚さ」と説明している人がいますが、それ全然違います。
ラップにもいろいろあるので一概に説明できませんが、例えばラップの代表格の旭化成のサランラップの厚さは11マイクロメートルです。
1マイクロメートルは0.001ミリメートルなので、表皮は200マイクロメートルです。
200÷11=18.18…なので、表皮はサランラップ約18枚分の厚さです。
皮下組織:筋肉の上に乗っている脂肪の層
それでは皮膚を構成する3つの部位についてひとつずつ見ていきます。
まずは皮下組織です。
皮下組織は主に脂肪です。
役割は衝撃の吸収と保温です。
人の容姿に関わる部分(人間の見える部分)では、ここほど個人差のある部位は他にはないのではないでしょうか。
必要以上に脂肪や糖を摂取すれば増えて、その逆なら減るので、個人差というだけではなく、同じ人でも増減の激しい部位であります。
脂肪は自立ができませんので、皮下組織は多すぎると重さに耐え切れずたるみます。
逆に少なければ皮下組織の下の筋肉や、上の真皮のハリで支えることができます。
真皮:コラーゲンなどで作られている
真皮は皮膚の主役とも言える部分です。
肌のハリや弾力は主にこの部分で決まります。
深いシワやたるみは主に真皮の劣化が原因です。
真皮には汗腺や毛穴がありますが、ここではスキンケアの基礎知識ということで肌のハリや弾力のもととなる4つを説明いたします。
線維芽細胞
真皮を構成する物質(コラーゲン線維、エラスチン線維、基質)を生み出す細胞です。
後述する表皮の細胞(角化細胞)とは違い、いつも働いているわけではありません。
一定の周期で分裂したりコラーゲンを作ったりするのではなく必要に応じて働きます。
わかりやすいのは怪我をした時ですかね。
怪我をすると線維芽細胞は「早く怪我した部分を埋めなきゃ!」といったようにコラーゲンなどを生成します。この性質を利用した美容医療も多いですね。それらについては別途紹介します。
ちなみに、線維芽細胞にとっては見た目の美しさよりも傷を治すことの方が優先度が高いので、体質によっては傷口がもこもこになることがあります。これをケロイド体質と言います。
コラーゲン繊維
真皮の柱とも言えるパーツです。
膠原線維(こうげんせんい)とも言います。
コラーゲンは水分をたっぷり抱えたニカワ状の物質です。
膠原という日本語の由来は調べてませんが、勝手な予想だと当て字っぽいですよね。
collagenという言葉をコウゲンと聞いて、膠原と名付けたのではないでしょうか。
コラーゲンは加齢とともに硬くなっていきますので、肌のハリや弾力はそれにともなって失われていきます。
ちなみに、コラーゲンは大きな物質なので塗っても皮膚の内部には届きません。
化粧品に含まれているコラーゲンの目的は保湿です。
前述のとおりコラーゲンは水分をたっぷり抱えてくれる物質なので保湿効果は高いです。
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エラスチン線維
弾力繊維と言います。
コラーゲン線維の説明で「肌のハリや弾力の要素」と説明したのに、今度は弾力線維というものが登場しました。
エラスチン線維はコラーゲン線維を束ねる役割です。
エラスチンの弾力性はコラーゲン線維よりも高く、2倍に伸ばしても元に戻るほどです。
コラーゲンとエラスチンは違う物質ですが、普段のスキンケアにおいては分けて考える必要もないので説明は割愛いたします。コラーゲンもエラスチンも肌のハリ・弾力に必要なものであるとお考えください。
基質
グリコサミノグリカンというゼリー状の物質です。
この物質は水分を保持するのが主な役割です。
グリコサミノグリカンの成分のひとつに、有名なヒアルロン酸があります。
表皮:スキンケアで重要な部分
スキンケアで一番重要な部分となるのが一番外側である表皮です。
ひとくちに表皮と言っても、よく見てみると4つの層で構成されています。
表皮の90%は角化細胞(ケラチノサイト)という細胞が占めます。
角化細胞は生まれてから役目を終えるまで、細胞の形と呼び方が変わっていきます。
出世魚みたいですね。
基底層で生まれた角化細胞は一定の期間で垢やフケとなって剥がれ落ちます。
その一定の期間のことをターンオーバーと言います。
ターンオーバーの期間は一般的には28日と言われておりますが年齢によっても変わってきます。
25歳くらいで28日周期から徐々に周期が長くなっていき、40代では40日とも言われています。
25歳はお肌の曲がり角といわれる所以ですね。
もちろん個人差はありますが、年齢とともに細胞の活性はゆっくりになっていくのは間違いありません。
個人的に加齢=悪とはあまり言いたくないのですが、分かりやすく言うと、加齢とともに新陳代謝が悪くなるということです。
さて、表皮のそれぞれの層について、下(真皮に近い部分)の層から説明していきます。
基底層(きていそう)
表皮の製造工場となる部分です。
ここに並んでいる細胞を基底細胞といいます。
基底細胞は角化細胞の最初の状態のことです。
基底細胞は絶えず細胞分裂を繰り返します。
また基底層にはメラニン色素を作り出す色素形成細胞(メラノサイト)もあります。
メラノサイトはシミの原因であるメラニン色素を作り出す、美容にとっては嫌なヤツですが、細胞を紫外線という外敵から細胞(主に線維芽細胞)を守るという大事な役割があります。
メラノサイトは紫外線を浴びていると「俺が細胞を守らなくては!」といった感じでがんばりはじめますので、メラノサイトに紫外線を浴びさせないようにしましょう。
日焼け止めを塗ってシミ予防をするのは、紫外線をメラノサイトに触れさせないためなのです。
また、基底層は波をうったような形状になってます。
これは真皮との密接度を上げるためです。
密接度が高ければ栄養を多く受け取ることができます。
さらに運動時の伸縮にも対応できる形状にもなってます。
こういう構造を見ると、人体って本当に理にかなった構造をしてるものだなと感心します。
有棘層(ゆうきょくそう)
基底層から生まれた角化細胞がもっとも存在している層です。
有棘層は表皮の中で最も厚い層で10層ほどあります。
有棘層の細胞、有棘細胞はその名の通り棘のある細胞です。その棘で細胞同士がみっちり繋がってます。
みっちり繋がっているのですが、その間にはリンパ液が流れていて細胞に栄養を運んでいます。
有棘細胞は分裂して有棘細胞を作りますので栄養が必要なのです。
有棘層には有棘細胞以外にもランゲルハンス細胞という細胞も存在します。
ランゲルハンス細胞は外から進入する外敵の監視役です。
異物を感知したらリンパ球に伝えるという大切な仕事をしています。
顆粒層(かりゅうそう)
基底層と有棘層の細胞は細胞分裂をします。
そうすると先に生まれた細胞は上に押し上げられてきます。
その押し上げられた細胞の層が顆粒層です。
厚い有棘層とは違い、顆粒層は2層ほどのとても薄い層です。
顆粒層の細胞はまだ生きていますが栄養をとる手段がないので、もう死を待っているだけです。
ちょっと悲しいですが、次の世代に活躍してもらうためには仕方がないことです。
角質層(かくしつそう)
死んだ角化細胞の層ではありますが、普段のスキンケアにおいては最も重要な部分です。
どの層もそれぞれに大切な役割があるので、角質層ばかり贔屓にするのもよくないのですが、化粧品は基本的に角質層までしか浸透しないので、やはり、美容・スキンケアにおいては重要な層です。
乾燥肌、感想による小ジワなどは角質層をケアすればよくなります。
皮膚の構造 まとめ
- 皮膚は皮下組織、真皮、表皮の3層
- 皮下組織は主に脂肪で過剰にあるとその重みがたるみの原因になる
- 真皮は線維芽細胞が作り出すコラーゲン線維、エラスチン線維、ヒアルロン酸などの基質で構成されている。コラーゲンなどの変性がシワやたるみの原因になる。
- 表皮は4層になっている。見た目の美しさは一番上の角質層が重要。乾燥による小ジワは角質層をケアするとよくなる。
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更新履歴
- 2016/05/23記事を公開しました。
- 2016/09/19旧ブログから引っ越してきました。