虫歯じゃないのに歯が痛いその原因は「非定型歯痛」かも

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虫歯じゃないのに歯が痛いという方、虫歯以外で歯が痛くなる原因はいくつか存在し、親知らずや歯根破折、歯の神経が炎症する等があります。このような歯の痛みを総称して「歯原性歯痛」と呼びます。

今回紹介する「非定型歯痛」とは「非歯原性歯痛」と呼ばれる歯痛の原因が「歯」「歯髄」「歯茎」にはない歯痛の総称で、その中でも原因不明の歯痛と呼ばれる「歯痛」の一つです。

過去に歯医者さんで治療を断られたり、検査や受診をしても「問題ない」と言われた方はこの記事を読んで自分の症状を把握し適切な治療を受けられる歯医者さんに行きましょう。

1.「非定型歯痛」の症状と原因

1-1.非定型歯痛の症状

非定型歯痛の方は以下の症状が当てはまります。
当てはまる方は「非定型歯痛」の可能性があります。

①歯やその周囲に痛みがあり、顔面痛を伴う場合がある
②痛みを感じる部分に虫歯などのはっきりとした原因がない
③痛みは強めで、激しく痛むときもある
④一時的ではなく、痛みが長期にわたってある
⑤冷たい水などで刺激しても、痛くない
⑥歯医者さんで治療しても痛みが治まらない
⑦麻酔が効くときと効かないときがある
⑧歯医者さんで治療すると痛みがひどくなる
⑨治ったと思ってもまた痛くなる

1-2.「非定型歯痛」になる原因

「非定型歯痛」になる原因は「神経因説」と「精神的ストレス」の二つの説があります。

神経因説
こちらは、過去に歯の治療を繰り返し受けてきた事により、歯の神経から脳へ痛みを伝える神経伝達が混乱してしまい、「非定型歯痛」が引き起こされている説
精神的ストレス
精神的ストレスを感じると、血液の中に含まれる「カテコールアミン」と呼ばれる神経ホルモンが増加し歯の周りにある血管が充血し、歯痛が引き起こされる説

2.「非定型歯痛」の治療方法

近年、「非定型歯痛」に対しての治療方法は少しずつではありますが確立されております。また、治療期間は基本的に長期間になる為、人によっては数ヶ月~数年かかる人もいます。

2-1.薬物療法

「三環系抗うつ薬」を用いた治療になります。「非定型歯痛」の患者さんに薬物療法を行った結果
約80%の患者さんに改善効果が現れたというデータが報告されております。この「三環系抗うつ薬」副作用として口の渇きや便秘などの症状が出ます。

また、「三環系抗うつ薬」だけでは効果が見込めなかった場合は、「抗精神病薬」を併用し治療を行っていきます。「抗うつ薬」や「抗精神病薬」に抵抗がある方は「漢方薬」使用した治療方法もあります。

2-2.心療歯科

心療歯科とは、心身医学的歯科治療を主体に治療を行う科目を「心療歯科」と言います。「歯」や「口腔内」の状態から「精神状態」や「ストレス」など様々な角度から診断を行い、患者さん一人ひとりに最適な治療を行ってくれます。

3.非定型歯痛から歯科心身症へ

非定型歯痛に対して理解があり治療を行える歯医者さんは全国的にみても少ない状態です。
もし、自身の症状に対応していない歯医者さんで治療を受けてしまった場合、症状が悪化しストレスがたまり歯医者さんへの不信感が生まれ歯科心身症になってしまう可能性もあります。
自身の症状に対して適切な治療が行える歯医者さんを選ぶようにしましょう。

3-1.歯科心身症とは

歯科心身症の定義が難しく、日本歯科医師会では以下6つの症状が「歯科心身症」と総称されています。歯科心身症に該当する方は自身に症状にあった歯医者さんに相談しましょう。

歯科恐怖症

過去、歯医者さんで治療を受けて精神的外傷を受けて歯医者さんに恐怖心を抱いている方。
治療方法は、「心療歯科」や「歯科恐怖症」に対応している歯医者さんに勇気を出して相談する事です。予約する際には自身が「歯科恐怖症」である事をちゃんと伝えましょう。

口臭恐怖症

「自臭症」とも呼ばれており検査をしても異常がないのに自分は強い口臭があると思い、周りの人間に迷惑をかけていると考えている症状です。

この場合は、心理療法が必要になる為、「心療歯科」に相談する事をおすすめします。口臭の相談は恥ずかしいと考え30年以上も悩んでいた方もいるそうです。恥ずかしい事ではありません、もしこの「口臭」がなければと何度も考えたことがあると思います。

今、ここでその悩みを終わらせるには相談する勇気を振り絞るだけです。「心療歯科」ではそういった患者さんをたくさん治療してきています。

かみ合わせの異常感

実際に噛み合せが悪いわけではないのに噛み合せが異常と感じる状態です。発症の原因としては何かしら「噛み合せが悪いと体調が悪くなる」などの情報を得て噛み合せが異常なのではと思う方が多いようです。

ただ、本当に噛み合せが悪くて噛み合せの治療を受けた結果、改善された患者さんもいます。

しかし、検査した結果、大きな異常がない場合でも「噛み合せ」が悪いと訴える方も多く、その場合は「心理的療法」が必要になってきます。

 舌痛症

舌に異常は見られないと診断されたが、舌がピリピリ痺れたり痛みが生じる方。舌癌だと勘違いしてしまう方も多いようです。

こちらは「口腔外科」などで「舌癌」ではないか診断してもらいましょう。または、かかりつけの歯医者さんに一度相談してみましょう。
相談した結果、症状が改善しない場合は、一度「心療歯科」の受診をおすすめします。

 顎関節症

発症した要因が精神的ストレスの影響が強い場合は「歯科心身症の顎関節症」と呼ばれます。強いストレスを受けた場合、日中や睡眠中に喰いしばりや歯軋りを起こし顎の間接や顎を動かす筋肉に影響を及ぼし顎関節症になります。

こちらは「口腔外科」に相談する事をおすすめします。ストレスの影響が強い場合は「心療歯科」をおすすめします。

顎関節症はストレス以外にも発症要因があります。
詳細はをご覧下さい。

口腔の異常感(口腔内セネストパチー)

対応医院
 口腔内に異常の原因がないにも関わらず痛みや違和感の「幻覚」が起きている状態です。原因として、精神的ストレスと身体の感覚障害が合わさって発症すると考えられています。

しかし、この異常感は「歯周病」の進行が原因の場合もあります。患者さんが訴えている症状が「歯周病」の進行によって起こる症状と似ている為、一度、歯医者さんに歯周病の検査をしていただく事をおすすめします。

もし、診断結果に歯周病の影響が見られない場合は「心療歯科」の受診をおすすめします。
歯周病の症状についてはをご覧下さい。

 

4.まとめ

最後に東京医科歯科大学大学院  歯科心療外来 豊福 明教授が2007年07月09日発表した「歯科心身症の診断と治療」の中に歯科心身症の患者さんの症例紹介がありましたのでご覧下さい。

「病気のときは、もうその事しか考えていなかったし、早くこの歯をどうにかしてもらわないと、どんどん身体までわるくなってしまう、とあせるように嘆いていた」

「全体が病気になっていたから、そういうふうにしか考えられない回路になっていた。現に歯は悪かったし、身体もだるいのは事実だから、頭が回らなかったし、自分ではどうしようもなくなっていた」
症例2:29歳女性
引用:「歯科心身症の診断と治療」

このように同じような症状で苦しんでいる方がたくさんいます。過去、治療を受けてきて満足した結果を得られない方、もしくは原因不明の歯痛で悩んでいる方、今一度、自身の症状に適して治療を行ってくれる歯医者さんで治療をしてみてはいかがでしょうか?きっと暖かく迎え入れてくれます。